Sixth:

「真緒帰ったし上脱いでいいわよ」


 蒸し暑くなってきたこの頃、さすがに長袖のジャージは暑苦しい。


「ここ、すごい痕残っちゃってるわね」


 左上のこれ、いつだっけ。一週間前とかだったかな。


「痛い?」

「ううん」


 今この痣だらけの身体を真緒に見られるのはまずい。


 私の手形がついているところに手を重ねる。


「おねえちゃんの」

「そう、私の」


 甘えるようにして翔が抱きついてくる。柔らかい匂い。一緒にいるのに翔はいい香りがする。


「さいきん、おねえちゃん、まおちゃんばっか」

「ごめんね。もう少しだから」


 先程よりも優しく、愛情を込めて頭を撫でる。


「ねぇ、翔」

「?」


 あまり聞きたくはない。でも知らなければ不安で押し潰れそうだ。


「真緒のことどう思ってる?」


 一つの瞳と二つの瞳が合う。


「うーん……。おねえちゃんとなかよくしてるからきらい」

「私に合わせて言ってない? 本当のこと言っても怒らないよ」


 多分怒るけど。


「おねえちゃんとられるのやだ」

「そっか。私は翔だけだよ」


 妹の言葉から直接同僚を否定する言葉が出てきたことに安堵する。


 早く、早くまた二人で。二人きりで――




 おねえちゃんはおとうさん、おかあさんのどちらからもあいされていて、きたいされていた。


 ななつとしうえのおねえちゃんはかっこよくてあこがれのそんざいだった。おねえちゃんのことがだいすきだったけど、おねえちゃんはわたしのことをなんともおもってなかったとおもう。


 あのひ、びょーいんでめがさめたとき、となりにはおねえちゃんがいてくれた。


 だきしめてくれたてはふるえていて、たぶんいきのこってたのがなんでわたしだったんだろうとかんがえていたんだ。でもおねえちゃんはやさしいから、どこのいえにいってもわたしをみすてなかった。


 おねえちゃんがはじめてわたしにてをあげたのはいつだったっけ。いつもやさしいおねえちゃんがだまってなぐったりけったりする。


 いたいのはへーきだ。おねえちゃんがつけたあともいとしいくらい。


「ごめんねごめん」


 せいふくのすそでめをこするおねえちゃん。


「おねえちゃん。なかないで」


 いたい。うでがいたい。おなかがいたい。おきあがらないと。おねえちゃんがないてる。


「おねえちゃん」


 しがみつくようにしてたちあがって、しょっぱいなみだをなめる。


「わたしはだいじょうぶだよ」


 おねえちゃんのくちにきすもした。あいしてるひとにするんだとくらすのこたちがはなしてたから。


「ねえ、おねえちゃん。おねえちゃんはわたしのことすき?」

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