11 最後の復讐へ2

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」


 ユーノの苦鳴が響く。

 奴の両足が、さっきのファラ同様に真っ黒になっていた。


 まずは逃げられなくする。


「次は──その右腕だ」


 奴が新たに手に入れた、腕。


 おそらく、生身の肉体ではなく【光】の力の結晶のようなものだろう。

 そこさえ破壊すれば、もはやユーノが俺を倒せる可能性は消える。


 俺は【固定ダメージ】を奴の右腕に集中させた。


 破壊する。

 破壊する……!

 破壊する──!


 強い意思を送りこむ。


『させるか』


 ユーノの前に人影が現れた。


 ずんぐりと太った男だ。

 俺が注ぎこんだ意思は、彼の全身からあふれた輝きによって弾き散らされる。


 こいつ……!?


「ヴァーユ……だったか」


 俺の【闇】に宿る『端末』ラクシャサと同じく、ユーノの【光】の端末だ。


「主人を守ろうというわけか」

『私たち端末は【光】や【闇】の宿主の精神力があって、初めて具現化できる』


 と、ヴァーユ。


『だからユーノに消えてもらうわけにはいかん。せっかくここまではっきりとした形で存在できるのだ。これを逃せば、また不安定な存在のまま『白の位相』を漂い続けることになる……何百年か何千年、あるいは永遠に──』

「要は幽霊みたいな存在になる……いや、戻るということか。お前はそれを恐れている」

『当然だ。具現化状態を失うことは、私にとって死に匹敵する恐怖!』


 吠えるヴァーユ。


「死に匹敵する恐怖? なら──実際に死んでみるか?」


 俺はゆっくりと彼に近づいた。

 黒い鱗粉がヴァーユにまとわりつく。


『無駄だ、我ら端末は不死にして不滅の存在。いかに【固定ダメージ】といえど、私を破壊することは──ぐうぅっ、おおおおおっ!?』


 勝ち誇りかけたヴァーユは、次の瞬間、苦鳴を上げていた。


「以前の俺のスキルは『対象に9999ダメージを与える』──それだけだった」


 俺はのたうちまわるヴァーユを見下ろす。


「だが【闇】のすべてを解放した今は違う。【固定ダメージ】は以前とは比べ物にならないほど深化し、そして進化した。これこそが──真の【固定ダメージ】だ」


 ダメージ量は自由自在。

 効果範囲は変形可能。


 そして──どんな対象だろうと確実に破滅するだけのダメージ量を送りこむ。


『これほどまでの、【闇】を……人間が、これほど強大な……力を……」


 ヴァーユの声が次第に弱々しくなっていく。


【光】の端末──。

 俗っぽい言い方をするなら、こいつは『天使』に似た概念なのかもしれないな。


 だが、関係ない。


 神だろうと天使だろうと、立ちふさがる者は蹴散らす。


 あらゆる敵を排除して、必ず復讐を果たす。


『馬鹿な……消されてしまう……跡形もなく……こ、この私が何もできずにぃぃぃぃっ……!?』

「消えろ」


 俺は冷ややかに告げた。


 黒い鱗粉が奴を囲み──。


『ぐうううっ……無念……』


 苦鳴とともにヴァーユは完全に消滅した。


「そ、そんな……ヴァーユ……!?」


 ユーノがうめく。


 俺はさらに意思を強める。

 今度はユーノの右腕が砕け散った。


「くううっ……!?」

「これでお前が頼れる者はいなくなったな。頼みにしていた新しい右腕も消えた」


 俺はニヤリと笑ってユーノに向き直った。


「さあ、復讐を続けよう──」


 まだまだお前には痛い目にあってもらうぞ、ユーノ。

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