9 女剣士の終焉
【固定ダメージ】の
さらに両足にも黒い鱗粉がまとわりつき、同じように変色させる。
「あ……あああああ……!?」
ファラはその場に崩れ落ちた。
「な、なんだ、これ……っ!? 腕が、足が、動かない……なんだよ、これはぁぁぁぁぁぁっ!」
立ち上がれない。
当然だ。
俺の【固定ダメージ】によって四肢を破壊したのだから。
「ただし──殺さない」
つぶやく俺。
今のはより深化した【闇】の力──【固定ダメージ】のバリエーションだった。
『四肢が二度と使い物にならないレベル』に限定したダメージを設定し、ファラに与えたのだ。
かつてはすべての対象に等しく『9999ダメージ』を与えることしかできなかった俺も、今では自在にダメージ効果を操れるようになっていた。
「ファラ、お前の両腕も両脚も──もう二度と動かない。剣士としてのお前は、今死んだ」
「ぐっ……ぐおおおおおおおおおあああああああああああああああああああ、くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
ファラが怒号を上げた。
「このあたしが、剣を振ることさえできないだと……ふ、ふざけるな、くそがぁぁぁぁぁぁぁっ! 治せ! 早く治せよ、クロム!」
「治すと思うか? 許すと、思うか?」
「っ……!」
ファラの表情がこわばる。
顔色が蒼白になっていく。
「ね、ねえ、あたしが悪かったよ……そ、その、なんでもするから……そ、そうだ、あたしの体を好きにしていいよ? だから、ね? お願い、治して……」
言いながら、ファラの瞳に涙が浮かぶ。
かわいそうだとは、感じない。
こいつの涙は、己への憐憫。
自分が今までしてきたことへの後悔なんて、微塵もないからだ。
「終わりだ、ファラ」
剣士として強敵と戦うことは、ファラにとって最大の愉悦であり、生きる目的といってもよかったはずだ。
そのために古流剣術を修め、磨き続けてきた。
圧倒的な強さを得た満足感。
その強さを持って数々の猛者と渡り合った充足感。
そしてまだ見ぬ強敵との戦いへの期待感。
それらが今、一瞬で失われた。
彼女の生きてきた証と、生きていく目的が。
『剣士としての生』が。
「当然の、報いだ──シア」
俺はファラを一瞥した後、シアに向き直る。
「はい、クロム様」
彼女は倒れたファラの側に駆け寄り、剣を首筋に押し当てた。
「殺すなよ」
「抑えておくだけにとどめます」
俺の言葉にうなずくシア。
その隣にはユリンが立ち、不測の事態に備える。
ファラの無力化には成功した。
俺は【固定ダメージ】の効果範囲を『前方一点集中』から元の『全方位』へと戻す。
「ファラにシアたちを殺させ、俺を動揺させる──お前の目論見は崩れたぞ、ユーノ」
「くっ……」
「勇者様らしからぬ戦術も通じなかったな、さあ、次はお前だ」
俺は笑いながら奴に近づいた。
笑みの形にした口が歪み、震えるのを抑えられない。
ついにここまで来た。
残るはお前一人だ、ユーノ──。
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