5 【闇】の復讐者VS【光】の勇者1

「僕を討つだって? 逆だろう。僕こそが君を討つ。正義の名の下に」


 ユーノが右手で聖剣を掲げた。

 アークヴァイスから光があふれる。


 同時に、奴の右腕に装着された鎧もまた光り輝いた。

 以前の邂逅で、俺は奴の右腕を消し飛ばした。


 あれは義手だろうか。

 それとも──。


「宿主様、どうやらユーノは【光】の力を完全解放しているようです」


 俺の影の中からラクシャサが現れた。


「つまりは、俺と同じように──か?」

「はい、今の彼は【光】を100%使いこなせるはず。いかに宿主様とはいえ、気を引き締めてくださいね」

「気を緩めることはない。相手の強さがどうであれ──」


 俺は奴を見据えた。


 相手は勇者ユーノ。

 かつての親友であり、世界でもっとも信頼していた男。


 そして、かつて世界でもっとも愛していた女性を奪った男。


 もっとも……その女も実際には打算で俺からユーノに移っただけのようだが。


 すべては、もはや過去のことだ。

 ただ、憎しみは消えない。


 だから清算するんだ。


 今日、ここで。


 俺はユーノとの決着をつけ、前に踏み出す──。


「踏み出してみせる!」


 俺の意思の高まりを受け、全身から黒い鱗粉が大量に噴出した。


「我が敵を討て、聖なる兵士よ!」


 ユーノの聖剣と右腕から一際まばゆい光があふれた。


 その光は空中で分裂し、それぞれがいびつな人の形となって具現化する。

 騎士鎧を身に着け、剣や槍を手にした光り輝く兵士──。


「あれは……『御使いスピリット』か?」


 俺は眉を寄せた。


 かつてヴァレリーの弟子であるマイカと戦ったときに、奴が死んだ村人を自分の兵士として利用していた。

 その『御使い』に雰囲気が似ている。


 ただし、マイカと違ってユーノの『御使い』は何もない場所から突然湧いて出てきたようだが……。


「これは強化型の『御使い』さ」


 ユーノが勝ち誇った。


「従来の『御使い』とは違い、これは死体のような依り代を必要としない。僕の意思に応じて現れ、敵を討つ──」


 すでにその数は優に百を超えていた。

 ずらりと隊列を組み、光の兵士たちが武器を構える。


「さあ、行け」


 ユーノが告げる。


 光の兵士たちは無言で突進した。

 そのうちの数人が先行し、いち早く俺との距離を詰める。


 そして、俺の10メートル内に入った瞬間に爆散した。


「……なるほど、君のスキルは健在か。しかも相手が何体いてもまとめて消し飛ばすみたいだね」


 つぶやくユーノ。


「射程距離は10メートルほど。それ以上は近づかないほうがよさそうだ」

「お前が近づかないから、俺から行くぞ」

「そうはさせない──兵士たちよ、足止めを」


 ユーノが命令する。


 次から次へと新たな『御使い』が生まれ、俺に向かってきた。

 射程内に入ったとたん、そいつらは片っ端から消えていく。


 もっとも、ユーノもこれを使って俺を倒そうとは考えていないんだろう。

 あくまでも『御使い』を生み出したのは、まず俺のスキルの有効範囲を調べ、さらに足止めするため。


 そうやって時間を稼いでいる間に対策を立てるなり、別の攻撃手段を講じるなりしてくるはずだ。


「だが、そんな時間は与えない」


 俺はユーノに向かって歩みを進める。


 すでに『御使い』は全滅していた。

 それ以上、新たな『御使い』が襲ってこないところを見ると、一度に生み出せる数には限度があるのか、あるいは何か思惑があるのか──。


 まあ、どうでもいい。


 俺の【固定ダメージ】は射程内に入ったものをすべて消し飛ばす。


 どんな小細工も作戦もすべて力技でねじ伏せる──。

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