4 明かされる真実2

「勇者様、ひどい……!」


 ファルニアが涙を浮かべてユーノをにらんでいた。

 全身が震えている。


「ファルニア……?」


 ユーノは呆然とした顔だ。


「私はあなたを糾弾します。まずは全世界に、あなたの罪を問います!」


 ファルニアが宣言した。


「ま、待て、ファルニア、何を言って──」

「お黙りなさい!」


 激高する姫勇者。

 おとなしそうな性格だけに、一度火がつくと激しいのだろう。


「ずっと私を騙していたのですね! ひどいです……私の純潔を奪って……花嫁にして……それが全部……こんな……!」


 涙ながらに、ファルニアは走り去っていく。


「ユーノ、お前の正体を全世界に明かすときがきたな」


 それと入れ替わりに、俺は進みだした。

 左右にシアとユリンを従えて。


「君は……!?」


 ユーノの表情がはっきりとこわばった。


「あなたは……!?」


 奴の隣でファラがハッと息を飲む。


「まさか──」

「クロム……くん……!」


 ユーノがうめいた。


「残る相手はお前たち二人だけだ」


 さあ、復讐を始めよう。


 最後の、復讐を──。




「クロム? へえ、生きてたんだ」


 ファラが面白がるように言った。


 癇に障る態度だが、まあいい。

 すぐにお前の表情を恐怖と絶望で塗りつぶしてやる──。


「随分と面変わりしたじゃない。最初は分からなかったよ」

「ああ、色々と経験させてもらったからな」


 勝気に笑うファラを、俺はまっすぐに見据えた。


「前のあんたは面白みがなかったけど、今はちょっといいかも」


 彼女は俺の憎悪を平然と受け止め、語る。

 その瞳が爛々と輝いていた。


 昔から彼女は己の欲望に奔放なところがあったな。

 今も、状況をわきまえず俺に対して欲情しているんだろうか。


「おいおい、君は僕の妻になる女だろう」


 ユーノがファラをとがめた。


「他の男に色目を使うな」

「あら、嫉妬? 嬉しいな」

「僕以外の男に色目を使うな、と言ったんだ。これは命令だ」


 ユーノが眼力を強める。

 ファラが、びくっ、と震える。


「あまり調子に乗るなよ」

「……し、失礼しました、ユーノ様」


 慌てたように頭を下げるファラ。


 それを見て、俺は違和感を覚える。

 ファラの態度の変わりように。

 まるでユーノに隷属しているかのようだ。


「鎮まってくれ、みんな!」


 ユーノが声を張り上げた。

 困惑と悲嘆、怒号が行きかっていた群衆はいっせいに口を閉ざす。


「すべてはこの男──【闇】の化身であるクロム・ウォーカーが仕組んだこと! 僕がそんな卑劣で邪悪なことをするはずがないだろう!」

「イリーナ本人がああいうふうに語っているのに、か?」


 俺はせせら笑った。


「うるさい! 君の卑怯な罠は、この剣で切り裂いてみせる!」

「要は、論ではかなわないから力ずくで黙らせるということか? それがお前の言う正義か?」

「うるさいと言っている!」


 ほとんど駄々っ子だった。


 俺はさすがに辟易して、『世界一の勇者』様を見やる。


「僕は勇者だ! 今から【闇】の化身を討つ! そうすれば信じてくれるだろう、みんな!」


 おおおおおおっ、と湧き上がる観衆。


「なんの理屈も通っていないな。オーブで過去の悪行を流されてなお、正義の勇者気取りか」


 反吐が出る。


「ならば、勇者としてのお前を──その虚名ごと、俺が討つ」

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