3 明かされる真実1
『今から語ることは、私、イリーナ・ヴァリムの名に懸けてすべてが真実であることを誓います──』
式典会場に突然そんな声が響き渡った。
俺がユリンに配置させておいたオーブから音声出力が始まったのだ。
オーブは誰にも見つからないよう、ユリンが術をかけている。
離れた場所から俺の意思一つでいつでも音声を再生できるよう、合わせて術をかけてもらった。
「さあ、始めるぞ。ユーノ」
俺は仮面の下でほくそ笑む。
友、恋人、仲間……すべての信頼を裏切られ、踏みにじられたあの日の──。
清算の始まりだ。
『二年前、私たち「勇者パーティ」は魔族の幹部フランジュラスに挑もうとしていました』
オーブからイリーナの声が流れる。
『当時、勇者ユーノは今ほどの力を得ておらず、苦戦は必至。そのとき賢者ヴァレリーから提言されたのが「闇の鎖」という先史文明の禁忌儀式でした』
『その儀式を行えば、ユーノは莫大な【光】の力を得られる──ですが、儀式のためにはパーティ内の誰かを生け贄に捧げる必要がありました』
『生贄になった者から極限の絶望と憎悪──【闇】を引き出し、それによって生じた同量の【光】を勇者ユーノに与える……それが儀式の全容です。生け贄には、パーティの魔法使いであるクロム・ウォーカーが選ばれました』
『クロムは当時、私の恋人でした。また勇者ユーノの親友でもありました。それを利用し、私は彼を捨ててユーノと恋人関係になりました。恋人と親友に同時に裏切られたクロムは怒りと憎しみをたぎらせました。そして──』
『そんなクロムを私たち六人で囲み、生け贄に捧げました。恋人と親友に、さらには仲間にまで裏切られたクロムの絶望が【闇】を呼び──その【闇】は同時に強い【光】をも生み出しました』
『結果、【光】はユーノに宿り、彼はそれまでとは比較にならないほど強大な力を得たのです。その後の活躍は、みなさまもご存じのとおり。ユーノと私たち勇者パーティは魔王フランジュラスを討ち、この世界に平和をもたらしました』
『一方のクロムは、死んでいませんでした。憎悪と絶望を胸に【闇】を育み、力を磨き──やがて私の前に現れました』
『彼は私の──そして私たち勇者パーティの罪を糾弾しました。私は当時のことを心から悔い、全世界に向けてこの懺悔を発信することにしました』
『私たちは──勇者パーティは全員が罪人です。私こと僧侶イリーナ、戦士ライオット、賢者ヴァレリー、騎士マルゴ、剣士ファラ、そして勇者ユーノ……以上六名は、決して許されない罪を犯したのです』
「ば、馬鹿な、これは間違いなくイリーナの声──」
ユーノがうろたえているのが分かる。
「ど、どうして……!?」
ファラも顔面蒼白だった。
一方のファルニアは呆然とした顔。
「どういうことなのですか、勇者様……!? なぜあなたの仲間であったイリーナ様がこんなことを。この話は真実なのですか……!? 私はあなたを信じて、妻になることを承諾したのに……騙していたのですか、私を……!」
「えっと、その、きっと、あれだ……誰かに脅されてデタラメを言っているとか……み、みんな、信じるんじゃないぞ!」
混乱しながらも、叫ぶユーノ。
その寸前、
「勇者様の力は卑劣な手段で得たものだったのか!」
「信じていたのに!」
「卑怯者!」
群衆のあちこちから声が上がった。
これもユリンの術による仕込みだ。
俺の【闇】が強化されたことで、彼女の【魔人】としての力も飛躍的に高まった。
こういった工作はお手のものだ。
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