15 復讐前夜2

「その先は言わせません、クロム様」


 キスを終えたシアが、真っ赤に頬を染めて俺を見つめる。


「あたしはあなたについていきます。どこまでも。たとえ、あなたになんと言われようと」

「シア、さっき言ったとおりだ、これから先は──」


 言いかけて、今度はユリンにキスで言葉を封じられた。


「私もシアさんと同じです。一緒についていきます。お連れください」

「ユリン……」

「あたしたちの想いは同じです」


 シアがユリンと顔を見合わせ、そしてもう一度俺を見つめた。


「【従属者】として恩義あるあなたを、女として愛するあなたを──守ります」

「守りたいんです。愛おしいクロム様を」


 二人が口々に告げる。


 今後の行動の意思と、俺への想いを。

 薄々と感じてはいたが、直接気持ちを告白されたのは初めてだった。


 いや、本当は……最初から分かっていて、目をそらしていたんだろうか、俺は。


 彼女の気持ちに向き合う余力がなくて。

 復讐以外のことに心を向ける余力がなくて……。


「俺は、二年前に最愛の恋人や最高の友人、仲間たちに裏切られた」


 俺はため息をついた。


「それ以来、他人への好意なんてものは心の中から消えてしまった。復讐心以外の感情をなくしてしまった。そう、思っていたんだ」


 だけど今──胸の奥が熱い。


 甘く渦巻いている。


「今はまだ、二人に対してどう思っているのかを考える余裕はない。だから、この戦いが終わったら……」

「そうですね。すべてが終わった後に」


 シアがにっこりとうなずく。


「あたしたちが、いつかクロム様の笑顔を取り戻して見せます」

「ですね」


 ユリンが微笑んでいる。


 二人の笑顔が俺の心を癒す。

 同時に、戦う意思が湧いてくる。


 さあ、出発するとしよう──。


 俺は決意を新たにした。


 すべての復讐を終え、俺は自分の人生の新たな一歩を踏み出す。


 復讐は無意味な行為じゃない。

 俺が前に進むために、絶対に必要な儀式だ。


 だから──。

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