金閣寺


 黄金の壁に黄昏れの色が反射する。

実に、豪華絢爛であるが、どこか侘しさを感ずるけしきであった。

足利義満が、造らせた理想の世界だそうです。全部、ご主人から聞きました。

「極楽浄土って、派手だなあ…。」なんて、バカっぽく驚いていたな。

正式なお寺の名前は、なんだったかな?鹿なんとかと、言って居た気がする。

あ、そうだ鹿苑寺だった。正式名所からとられたらしい、もっと長いけど、

なんだっけな? いけない。そんな、ことを考えている場合ではないんだった。


「私、ここ嫌い。」


ぶっきらぼうに、クリスティは、言い放つ。


「なんで、けっこう銀閣寺は、気に入っているような雰囲気だったのに。」


「だってね、あんなにもキンキラキンなんですもの、目がしょぼしょぼしてしまうわ。」


猫に小判、ということわざが或る。猫には価値が分からない。無意味。という事であるが、案外、そうなのかもしれない。


「それより、もう、そろそろ見つけないと…。」


そう思っていると、ご主人のいつも持っているハンカチが、落ちていた。

それには、なんと、血がべったりとついていたのだ。

僕の心は、折れた。もしかしたら、もう、ご主人は? 

…いや、それはない。そう、思いたい。


「大丈夫よ、見つかるはずよ」


静かに吹く風の音、紅葉の紅さも相まって視界があか、紅…。

「ちょっと、ぼーっとしないで! しっかり…。」


「僕はね、売れ残り猫なんだ。」


葦原島の見える場所で、その島をぼんやり見つめていた。

僕は、回想をしている。


「ショウウインドの中で、ゴンゴンと叩かれたりしてきた。愛想がないくせに、こんなに高いのか、…じゃあいらない。そう、言われてきた。」


「そうなのね…。」


クリスティは、黙って隣に座ってくれた。

淑女の優しさは、気弱な雄猫にとっては、救いで或る。


「僕を見る、主人の目は、少年のようだったが、慈愛があった。」


「きっとみつかるわよ、…心配しないで。」


漠然として、頭はまっさらだった。


「そういうときは、深呼吸してみて。」


「…わかった。」


タメイキを吐くように吹きだして。続いて、胸いっぱいに秋風を吸い込む。

記憶の宮殿には、昨日の主人。人形を使って、イタズラをしている。


「京都タワー。」


「え、京都タワー?」


僕は、勢いよく立ち上がり、クリスティの顔を見つめる。


「京都タワーが、どうしたの!」


「いるかもしれない、確信は…ない!昨日、僕に話していたんだ。」


「じゃあ、京都タワーに行こうじゃないの! 絶対に、みつけるわよ。」


「あ、有り難い。…ありがたや。」


「そいういのは、見つかってからね!」


僕らは、京都駅前までのバスに、また乗り込んで移動することにした。


「無賃乗車ね…!」


「猫…ですもの。だろう?」


僕は、無邪気に笑うクリスティに、苦笑いするしかできなかった。

(彼女の優しさは偉大なのです。彼女は、いつも明るく接してくれることで、僕を励ましてくれることが、あります。それに救われてきたのは内緒です…。)

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