第一次パンツ革命
へろ。
第一次パンツ革命
断頭台の上、聴衆に向かって声を張り上げる王の側近。
「大衆よ、刮目せよ! コイツこそが、世紀の大犯罪人エルマーダ・スパニヨールである! 彼が何をしたか、私はあまり多くを語りたくはない。だが、聞け! あえて言わねばならない! 聞け大衆よ! コイツは、このエルマーダ・スパニヨールなる男は、我が国の王、その一人娘であられるプリンセス・ザ・プリンセスに忠誠を誓う側近であったにも関わらず、盗んだのだ! あろうことかパンツを! そればかりではなく、嗅いでは舐め、嗅いでは舐めを繰り返し、純白のパンツに染みを作り、そして最後には……売ったのだッメルカリで! こんな男を許せるのかッ、いいや許されない! さぁ、処刑の始まりだ!」
聴衆の声
『さっさと殺せ!』
『いくらだ!?メルカリでいくらで売ったんだ!?』
『クソ、俺だって血筋が良けりゃ……殺せ!殺してしまえ!』
吊られたギロチンの下に寝かされ、自分の命がもうあと僅かな男は叫ぶ。
「ちょっと待ってくれ! 確かに俺は、エルマーダ・スパニヨールは、プリンセスのパンツを嗅ぎ……そして舐めた! だがメルカリで売った?そんなもったいないことするはずがない! ちゃんと肌身離さず持っている! 俺は羽目られたんだ!」
「……なにを言ってるんだ、お前はッ。プリンセスのパンツを盗むこと自体がもう処刑するに価する大罪なのだぞッ」
「罪……確かに俺がやったことは、プリンセスに対しての裏切りなのかもしれない……。だがッ、本当に俺に罪があるのか!? 皆も知っている通り、プリンセスはメチャクチャに美人だ! あの醜悪な王と、夜毎パーティーを開きボトックス注射打ち過ぎちまってマイケルジャクソンみたいになっちまった王女から、これどうやったら産まれんの?って疑問に思うくらいに可愛い!
本当に罪があるのは、あの可愛すぎるプリンセスの方だと、側近であった俺は断固抗議する!」
「な、なにを言ってるんだ、お前はッ! 無礼にも程があるッ。兵士よ!さっさと首をはねろッ」
パンツを盗んだ男は不敵な笑みを浮かべ、言った。
「見たく……は、ないか?」と。
「は?」
「あれだけの美貌を兼ね備える高貴なお方のパンツを見たくはないかとッ聞いているんだ!」
聴衆の声
『殺すな!見せろ!』
『頼む、後生だ!一度、一度だけでもいい。姫のパンツを拝ませてくれ!』
『ハァハァハァ。』
「……確かに見たくないと言えば、それは嘘になる……。だがエルマーダ・スパニヨールよ、パンツは今、どこにあるというのだッ。ここにないと言うのなら、私はお前の首を一刻も早くはねなければならないッ」
「そんなに見たいと言うのなら、見せてやろう! だが、この格好ではムリだ!
一度この断頭台から私を解放しろ!」
「バカな男だ、エルマーダ・スパニヨール。お前、逃げるつもりであろう!」
「俺は! こうなることを覚悟し、地位・名誉・そして家族、全てを投げ捨ててまでパンツを盗んだ男だぞ! 一度でいい、頼む! 一度だけでいい、この愚かな男を信じてはくれまいかッ」
「……」
聴衆の声
『解放してやれ!』
『こいつは正真正銘の男だ!』
『ハァハァハァ。』
「ふむ、よくよく考えれば……確かに証拠は必要だな。では、ほんの一時だけだが、エルマーダ・スパニヨールを解放しようではないか!」
断頭台から解放され、立ち上がるエルマーダ・スパニヨール。
「さぁ! プリンセスのパンツ、大衆の目に、しかと晒すが良い!」
エルマーダ・スパニヨールは、おもむろにズボンに手を掛け、一気に足首まで下ろした。
「さぁ皆の衆! 刮目せよ! これがッ王女・プリンセスの高貴なるパンツである!」
腰をグッと出す、エルマーダ・スパニヨール。
聴衆から湧き上がる歓声。
「……エルマーダ・スパニヨールよ、なぜお前はプリンセスのパンツを履いているのだ?」
「決まっている! その方が興奮するからだ! 俺の身分では一生触れることさえ出来なかったであろう高貴なパンツを、あろうことか今ッ俺はッ履いているのだッ。そのことに興奮しない男がこの世にいるであろうか!? いや、いない!」
さらに湧き上がる歓声。
「……なるほど。お前の主張は、ちゃんとこの耳で聞いた。それに王女・プリンセスがどんな柄のパンツを履いているのかも、ちゃんとこの目に焼き付けた! よし、お前にもう用はない! 処刑の再開だッ!」
兵士が彼の腕を掴み断頭台に寝かせようとしたとき、再度、エルマーダ・スパニヨールは不適な笑みを浮かべ、王の側近に言った。
「嗅ぎたく……はないのか?」
「な、なにを言っておるのだ……エルマーダ・スパニヨールよ……。」
「プリンセスのパンツを嗅ぎたくはないのかときいているのだ!」
「グッ……。嗅ぎ――、はっ!フッフッフ! そうは騙されぬぞッエルマーダ・スパニヨールよ! お前は自分の顔面全体をフルに使い嗅ぎ!そして舐め!そして本来絶対あってはならない事だが、今履いている! そのパンツにッ王女の匂いなど残ってはおるまい!」
王の側近の指摘を、高らかに笑い流す、エルマーダ・スパニヨール。
「な、なにがおかしいと言うのだッ」
「バカな奴だ、お前は。確かに俺は王女・プリンセスのパンツを嗅ぎ、舐め、ついでに頬張りもした! そして今ッそのパンツを履いている! 正直に言ってしまえば、ほぼほぼ俺の臭いしかしないだろう!」
「ほら見たことか!」
「だが、残り香は……ある。まだ!ある!と、王の側近であられるお前は、信じられぬというか!?」
「ぬぁぁぁぁ。しかし……しかしだッ。私は、私に分かるのだろうか……。プリンセスの下の体臭と、コイツの下の体臭の違いが……。クッどうしたことだろう。私はプリンセスを小さい頃から見てきた! しかし、それでも分かる自信がない!」
「お前になら分かる。いや!男なら誰しも分かる!」
「な、なぜだエルマーダ・スパニヨール! なぜお前はそう断言出来るのだ!?」
「簡単な事だ! お前のその男根がそそり立てば、残り香があった証明ではないか!本能だ!本能を信じるのだ!」
「ファーハッハッハ! 完敗だよ、エルマーダ・スパニヨール! お前の言うとおりだ! よし!私はッお前が履いているそのプリンセスのパンツを嗅ぐ!」
湧き上がる歓声。
そしてエルマーダ・スパニヨールが履くプリンセスのパンツ・・・・・・股間に顔を近づけ嗅いだ王の側近のあそこは――。
「く、臭いッ。なぜだ、なぜこんなにも発酵臭がするのだッ。しかし……私の愚息は……。大衆よ!ここに宣言しよう! このパンツにはッまだプリンセスの下の残り香がある!と!」
そして歓声は鳴り止むことなく、響き続ける。
そんな状況に満足げに頷く、王の側近。
しかし、あの男は動いていた。
「な、なにをしているのだッエルマーダ・スパニヨールよ! なぜ、パンツを脱いでいる!?」
「ふッ。こうするためさ!」
エルマーダ・スパニヨールはクシャクシャに丸めたプリンセスのパンツを聴衆の元へ、高らかに投げた。
パンツはふわりふわりと落下してゆく。
大衆は皆、精一杯に手を伸ばし我先にプリンセスの残り香を味わおうとし、そして遂には暴動が起こってしまった。
「や、やめろッ。やめるのだ! 誰か!誰かこの暴動を止めろ!」
パニック状態となった大衆を兵隊達の力ではとめられない……いや、違う。大衆に混じって兵隊達もパンツの取り合いに参加していた。
「ハーッハッハッハ! 残念だったな! しかしお前があそこでその愚息を立たせ残り香がある!と宣言しなければ、こうはならなかったであろう。あそこまで俺が味わい尽くしたパンツに残り香がある筈がないのに、お前は興奮し、あろうことか冷静さを欠いた! これはお前の失態だ! そして俺は逃げる! また王女・プリンセスのパンツを味わいたいからな! また会おう!諸君!」
そう王の側近と血走る目をした大衆に言い残し、エルマーダ・スパニヨールはどこかへと消えていった。
第一次パンツ革命 へろ。 @herookaherosuke
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