第37話 VR

「じゃじゃーん!!これが試作品の『ゲームVR+』です!」

 ゲームVR+!!何か凄そう……!!

「何でも、仮想世界にあるものがそのままゲームになるそうで………私もやったことなくてまだよく分からないのですが」

 おぉ………?何か本当に凄そうだ。ザ・最新って感じ?

「これを被ると回りの景色が変わるみたいです。では、早速着けてみたい人はいますか?」

「「「はい!」」」

 私と清水と栄夢は一斉に手をあげる。何やら凄そうな機械に私を含めてみんな興味津々らしい。

「じゃあ、じゃんけんにしましょう。私に勝った人から着けてみるという事で」

 じゃんけんか~。まぁ、別に負けてもゲームVR+が出来なくなる訳じゃないし、いっか。

「じゃあいきますよ!じゃんけーんぽん!」

 香はチョキ。

 私はグー。

 清水はチョキ。

 栄夢はパー。

 ということは。

「じゃあ菜千ちゃん!どうぞ!」

「ほんとに!?やったー!!」

「ちぇ~」

 これは、ラッキーだ。一番乗りで最新ゲーム機を体験できるとは。ありがとう、神様。

 それでは、いざ、装着!

「………うぉぉ………すごい!回りの景色が変わってる!!」

 ここは………原っぱ?気持ちの良い風が吹いていそうだ。心なしか清々しい。

『デケデンッ!スライムが現れた!』

「え?」

『スライムは様子を見ている』

「あ、急にバトル始まったの!?」

『※剣を振ってください』

「剣?」

 私は自分の両手を確かめる。

 すると、右手に剣を握っていることに気づいた。

「こ、こう?」

 私は思いっきり右手を振り払う。


 ドムッ!


 うん?今手に何か当たったような。

『デデデデン!スライムを倒しました!』

 何か違和感があったが、どうやら敵は倒したようだ。

「これくらいかな?」

 まだ中の映像は続いてるが、清水と栄夢も待ちきれないだろう。

 そろそろ止め時である。

 私はスポッとヘルメット型のVR機を頭から取る。

「いや~すごか………って栄夢!?」

 ヘルメット型の(以下略)を取ると何故か栄夢が床に倒れて悶絶していた。

「う………う……」

「え!?何があった!?」

 私がゲームを楽しんでいる間に誰かに襲撃されたのか!?

「え、いや………なっちゃんがやったんだよ?」

「は?」

 私?何で?

「菜千ちゃんが急に栄夢ちゃんの鳩尾に腕を振り払ったんです………」

「嘘でしょ?」

 まさかあの時の違和感は、栄夢に薙ぎ払いがヒットした感触だったのか!

「ちょっ!!ごめん栄夢!!大丈夫!?」

 ビクンビクンッと魚のように悶え苦しむ栄夢をしゃがんで抱き抱える。

「………うっ………あっ………き………」

 今、何やら喋ろうとしてたな。

「え?何か言った?」

「………好き…………好き……!!」

 よだれを垂らしてニヤケている栄夢。

「……………」

「も、もっと下さい………!も、もっとぉ……!!………う……」

 バタリと動かなくなる栄夢。

「………栄夢?栄夢ぅっ!?」

 嘘!?死んだ!?まさか!?

 慌てて胸に耳をつける。


 ドクン…ドクン…ドクン…。


 良かった。気絶しただけか…。

 しかし、ゲームVR+…恐ろしいゲームだな…。人を殺しかねないぞ?

 ─────桃井菜千、高1の春。VRがトラウマになった。







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