第34話 闇の香り
シャアアアァァァァ……。
家に帰って、シャワーを浴びながら今日あった香との事を考える。
………私、結構不味いことしてない?
面倒くさくなったからって「じゃあ、結婚しよう」って頭おかしすぎでしょ!
冷静になったら自分がとんでもないことをしでかしたことに気づく。
いい意味でも悪い意味でも純粋な香の事だ。マジで結婚しようとしてくるに違いない。
「……どうしよう」
香と結婚する気なんて更々ないし、ましてや、嘘を吐いたと香を悲しませたくない。
「待って………これ詰んでない?」
どちらにしろ、良い未来が見えない。
え、どうすればいいんだ。
このまま私、香と結婚するしかないの?
例え、男が苦手でも結婚は男の人としたい人種なんだけど、私。
「諦めちゃだめよ、桃井菜千…!まだ、方法はあるはず………」
離婚に持ってくか………?
いや、それ結婚する事前提になってる。あと、仮にでもそんな結末は避けたい。
自然消滅を狙う………?
………友達無くすのはやだな。
「………う~……ダメだ………何も思い付かない……」
やっぱり、香には悪いけど無かったことに………。
でも「結婚しよう」って言った時の香の顔、戸惑いながらも幸せそうだったもんな~……。
あの顔が絶望に染まるところなんて見たくない。
………そもそもに香が変な勘違いを信じて疑わないから……うん?待てよ?
信じて疑わない……………。
「そうか!」
香がそういう性格なら、新しく勘違いを刷り込めば良いのか!
結婚しなくて良いっていう何かを香に信じ込ませれば………!
「いや、でもそれじゃあ香のためにならない……………でもなぁ……」
背に腹は変えられないとはよく言ったものだし。
他人の未来もだけど、自分の未来も心配しなきゃ。
「………さりげなく……深層心理に刻み込む感じでいくか………」
あくまでも無意識下で認識するように仕込めばあるいは。
「………何はともあれ後は実践かぁ………」
私はそう呟きながらシャワーを止めて、体をタオルで拭く。
着替えを着ながら、ふとスマホに目をやると。
「………げっ。消音にしてたから気づかなかった………」
いつの間にか香から大量のメッセージが届いていた。
────菜千ちゃん。お話しませんか?
────菜千ちゃん?
────あれれ?届いてますか?
────菜千ちゃん………?
────菜千ちゃん………寂しいです…
────何かあったんですか………?
────菜千ちゃん……大丈夫ですか?
────菜千ちゃん……
………これらは、メッセージのほんの一部だ。
清水の時同様、病的にメッセージが届いてきている。
………通知を切っておいてよかった。
これ、シャワー中ずっと鳴ってたとしたら………あぁ……!?考えるだけで鳥肌が………。
「あぁ………えーっと……『ごめんね、シャワー浴びてて気づかなかった』と」
私はスマホをポケットに入れて脱衣所を出る。
ピコン!
……早いな。もう返信きた。
まだ私、脱衣所から一歩しか出てないよ?
───そうでしたか。よかったです。
───てっきり事故にでも遭ったんじゃないかって心配してました。
「………そんなに時間空いてないと思うんだけどな……」
……既読つけちゃったけどとりあえず部屋に戻ってから返信し……。
ピコン!
ん?
ピコン!
んん?
ピコン!ピコン!
んんん?これは、まさか……。
ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコン!!
「……………」
ポチ。
よし、消音っと。
何も聞かなかった。そう、私は何も聞かなかった。
連続通知音なんて聞いてない。
でも、まぁ急いで部屋に向かおう。
ダダダダダダダッ!!ガチャ!
「はぁはぁ………ちくしょ~ちょっと汗かいちゃった」
せっかくシャワーを浴びたのに………髪も乾かしてもないのに汗かいてきた。
「………えぇっと……最後のメッセージは………」
────私も菜千ちゃんのところにいきますね………。
「ちょっとぉ!?何があったっ!?」
私も!?「も」って何!?
香の中で私はどこに逝ってるの!?
これは急いで返信しなくちゃとんでもないことになる!!
『香!ごめん!ちょっと部屋に移動してただけだから!早まるな!』
ピコン!
────そうだったんですか。
────ごめんなさい。私、早とちりしちゃって………。
────危うくピーーーーするところでした……」
………ヤ、ヤンデレだ……!!これ「結婚しよう」が嘘だってバレたら……!!
キャアアアァァァァァ!!
な、何としてもバレないようにしないと……!!
『も、もう……そんなぁ……(笑)』
………この後、私の髪の毛が自然乾燥するくらいに香とRAINをする事となった………。
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