彼女の名は悪津怒愛(オッドアイ)

第28話 ………気を付けなさいよ

今日はゴールデンウィーク前の最後の登校日。今日が終われば待ちに待ったお休みだ。

そんな事を嬉しがる余裕は私にはなく。ある一つの悩みを抱えていた。

最近、香と清水の様子がおかしい。

最近というか、香にファーストキスを奪われた日からずっとおかしい。

香は私の臭いを嗅ぐときに必要以上に近づいて、終いには軽く唇をつけてくるのだ。私の唇にではないが。

それに、何かとお弁当を私にあ~んしてくる。「か、間接キスですね……うふふ…」何て言う始末だ。

清水に至っては、デジャブを感じるほど素っ気なくなった。前の時と同じだ。明らかに私を避けている。極力話さないようにしているのがわかるし、下校中の例のアレもやらなくなった。

そこで今日私は清水宅にお邪魔しようと思っている。

私だって何かあるのなら知りたいし、このままの状況が続くのは嫌である。

香の方は何だか本人が幸せそうだし、後回しにしても構わないだろう。

その点、清水はいかにも辛そうだ。これはゴールデンウィークに入る前にどうにかしておきたい。

「菜千ちゃん?考え込んでどうしたんですか?」

「え?あぁ、何でもない!」

そうだそうだ。今はゴールデンウィークの予定を立てているのだった。

「それで?どこ行くの?」

清水の事で頭がいっぱいで何も聞いてなかった。

できるだけ人のいないところがいいけどな……!誰かの家とか?あ、ダメ?

「やはり皆こういう事が初めてみたいで、どこに行くか決めかねているんです」

「みんな体動かしたいって言ってるから『ラウンド・テン』とかいいかなとか思ってるんだけど………どう?」

清水は机の上で手を組み、机をじっと見つめながら説明をしてくれる。

いや、違和感の塊でしかない!

せめて、こっち向いて!?

「ラウンド・テンか………」

人多そうだな………男の人とかたくさんいそう………。

いやでも、流石に今回は行かなくては。自分は一度お誘いを断ってる身なのだから。

今こそ克服の時。いざ行かん!

「うん。とりあえず明日はそこでいいんじゃない?」

「じゃあ、決まりですね!動きやすい服装で、集合場所は………」

「駅前。11時半集合。厳守」

「……でいいですか?」

何故か栄夢が急に喋りだしたが、まぁ妥当な時間帯であろう。

「いいよ!」

「私も」

「じゃあ決まりですね!」

………いよいよ明日、試練の時がやってくる。

乗り越えて見せよ!桃井菜千!

「話は終わったかしら?」

「ハム……ね!先輩。どうしました?」

ハム先輩から話しかけてくるなんて珍しい。何かあったのだろうか?

「業務連絡よ。一応部活内RAIN(RAINとはメッセージ通話アプリである)でも送るけどゴールデンウィークの最終日、つまり5月5日のこどもの日は部活あるから。来ても来なくてもいいけど、来るかの連絡はして。分かったかしら?」

「あ、はい」

なんだ、それだけか。

「あと、あなた」

「はい?」

何?私だけに連絡があるの?

「気を付けなさいよ」


ピシャッ!ゴロゴロゴロゴロ…。


え、どういうこと?何!?気を付けなさいよって何!?

ハム先輩!まだ行かないで!

ハム先輩!お願い!

……おい!ハム!!

「じゃあ、今日はこれくらいにして帰りましょうか」

………まぁいいや。

とりあえず今は清水の事だけに集中しよう。


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