第24話 意味
この調子で大丈夫だろうか。
栄夢は手をだらんとさせて、足取りも覚束ない。
まるで酔っぱらいだ。
放課後にも関わらず部活動勧誘期間というのもあって、校舎の中には中々の生徒が残っている。
そんな中でふらつきながら廊下を歩く栄夢には視線が集まりに集まっている。
「声かけるべきだよな……」
栄夢は見るからに疲弊している。今まで隠していた両目を晒しているのだ。無理もないだろう。
でも、正直言えば「誰がそんなとこ見るか!」とツッコミたい。よくそこまでも気にすることができるものだ。
「………あべしっ…」
そんな事を考えているとふと前方から変な声がしてきた。
「え!?」
栄夢がぱったりと倒れていたのだ。
もちろん今歩いていた廊下はザワザワ状態。
これは非常にまずい。厄介なことになる前に手を打たねば。
「ちょっ!栄夢!!」
私は素早く栄夢の体を起こす。
「何があったの?大丈………」
「………あひ!そ、そんなに見ないで……!!お、おかしくなっひゃうぅぅ!でへへへへ……も、もっと見て………」
あ、これ大丈夫な奴だ。自分のコンプレックス的場所をさらけ出して興奮してるっぽいな。
変態をなめていた。まさか10年間隠してきたトラウマを、いとも簡単に吸収してしまうなんて。
もしかしてさほど気にしてなかったのか?
「………と、とりあえず持って帰らなきゃ」
よだれを垂らして気持ち悪いくらいににやける栄夢をどうにか背負う。
「やっぱりロリは軽いなー」
これ以上の事件にしないためにも私は足早にその場を去った。
「………み、見ないで~…は、恥ずかしいから~…………やっぱり見て…!」
これは寝言なのだろうか。随分とさっきの状況を引きずった夢を見てるな。
私の肩に涎が垂れないことだけを祈るばかりだ。
………旧図書室前に戻ってきたけど。
さすがに栄夢を背負って中に入るのはまずいか。
あのデb……ハムがうるさそうだ。
「………とりあえずここに放置して、起きたら接触しよう」
私はそっと栄夢を下ろして廊下の角で栄夢の目覚めを待つ。
………5分後。
「ぐへへへへ………んあ?」
汚い笑い声と共に栄夢は起き上がる。どうやら夢から覚めたようだ。
「あれ……?私いつの間に……もう学校1周回ったんだっけ?」
「あれ!栄夢お帰り!どうだった?」
栄夢が目覚めたのを見て私は近づいて話しかける。
設定としては「トイレの帰りにたまたま栄夢とばったり会った」という感じだ。
「………とりあえずみんなの目を気にせずに歩けたっぽい。さすが私」
バリバリ気にしとったがな。気にしすぎて倒れとったがな。
「そっか。じゃ、ハム……羽舞音先輩にご報告しに行こっか」
まぁ、私としては余計に監視する必要がなくなって万々歳だが。
私と栄夢はそのまま旧図書室へと入った。
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