旧図書室に悪魔は笑う

第15話 今、選択の時

 4月も半ば。

 この時期になれば私達には決めなければいけない事案がある。

 これをどう決めるかによって私達の進む先が決定されていく。かもしれない。

 我々が決めなければならないもの。

 そう!

 それは!

「みんなは何部に入るか決めた?」

 部活である。

 この学校には帰宅部なるものがない。何かしらの部活には入らなければいけないのだ。

 時間帯は放課後。

 教室でそれぞれの机を合わせて、私達の「部活何にするの?会議」が遂に始まった。

「まだ決めてないです」

「私もまだかな」

「左(清水)に同じ」

 やっぱりまだか………もちろん私もだ。

「あ~どーしよ。期限まで後…4日だよ?全然見学とか行ってない………」

 まぁ、疲れるやつ以外だったら何でもいいっていうのは正直、ある。

「菜千ちゃんは中学校では何の部活に入ってたんですか?」

 ふと疑問に思ったのか、香が私に訊ねてきた。

「私?私はバスケ部」

 中学時代。私は男子と関わらなくていい部活を求め、女子バスケットボール部に入部した。理由としては男子バスケットボール部がなかったから。それだけ。

「へぇー…なんか、ですね。バスケのユニフォームとか、やってる姿とか似合いそうです。高校ではやらないんですか?」

「いやー、別に特別思い入れがあった訳じゃないし?疲れるのやだから、やらないかなー………香は?というかみんなは何部だったの?」

 香に限らず何かみんなの中学時代の部活が気になってきた。

「私はソフトテニスでした」

 香はソフトテニスか。言われてみると、ぽいぽい。

「私はバレーボール部だったよ」

 清水はバレーボール………ぽいな。

「私、陸上」

 栄夢は陸上………陸上!?

「嘘!?栄夢って陸上部だったの!?し、種目は!?」

 意外すぎる………!!てっきり文化系の部活だと思ってた。だって、見た目が運動したくなさそうだもん。

 前髪バカ長いし。目隠れてるし。

「800メートル走」

「800メートル走!?1番きついっていうやつじゃん!!………あ、なるほど」

 自分で言ってて彼女がなぜ陸上部で800メートル走を走っていたのか理解した。

 きついからか。

「でも、えーちゃんすごいんだよ!県大会入賞まで行ったんだから!こんなに小さいのに!」

「嘘でしょ!?割りと才能あったパターン!?」

 清水と栄夢は家が隣同士のため、中学校も一緒だったらしい。

 そんな清水が言うのだ。本当の事なのだろう。

「違う。ただひたすらに走ってただけ。コーチにしごかれるの楽しかったから」

 ………そういうことね。栄夢はやっぱりドMの精神を基準に動いてるのね。

「えーちゃん色んな高校から推薦来てたのに、全部蹴ってこの高校来たんだよ?かっこいいよね~!」

「フフン……!」

 いや、確かにすごいけど……何か素直に認めたくない自分がいる。

「………そういえば、みんなは何でその部活選んだの?」

 やはり、他の二人も栄夢と同じように変態的な決定打があったのか?

「わ、私は…その………ゴムボールのにおいがクセになって………」

 香は照れながら答える。

「うん、よかった。安心したよ」

 やはり選ぶ基準がおかしい。私の言えたことではないが。

「私は元々背が高かったから、活かせるスポーツとかないかな~って思ってバレーボールにしたよ」

「へぇ~」

 あれ?清水は案外普通だ。大分ヤバいフェチを持っているのに……!!

 しかし、そんな疑問もすぐに解けた。

 清水はその頃を思い出すかのようにしながら、赤い顔で言った。

「でも、続けてたのはみんなが動く度に迸る汗を見るのが至福だったからかな……?

 ジャンプとかすると床に落ちたりして…そこにダイブしてレシーブをした時にはもう……すごかったよね!!」

 清水は目を見開いて鼻でフンス!と音を出しながら興奮している。

「あ、うん。そっか………」

 ………やっぱり清水が1番ヤバい気がする。見た目的に1番ヤバそうなのは栄夢なんだけど。

 人は見かけにはよらないということだ。この学校に来て痛感している。

 ってそんな事はどうでもよくて。

「みんなは部活続けないの?」

 栄夢なんか、県大会入賞レベルなら割りと続けるべきなんじゃ………?

「私も菜千ちゃんと同じで特別な思い入れはないですし、なにより、今は菜千ちゃんを嗅いでる方が良いので続けることはしないですね」

 うん安定。

「私も、今はみんなと同じ部活に入りたいかな。バレーボールもいいけど」

 清水は普通の時とヤバい時の差が激しいんだよね………普通の時は本当に普通なのに。

「私は自分を悦ばせてくれるのなら何でもいい」

 こっちも平常運転だ。

 ………今さらだけど私の「普通」の感覚が段々鈍ってきてない?気のせい?

「じゃあ、どうせだしみんな同じ部活にしようよ」

 私の提案に3人とも頷く。

 おおお?青春ぽいんじゃない?みんなで同じ部活に入るとか、女子高生っぽい!

 みんなも異義ないみたいだし、残る問題は何部に入るかだ。

「みんな気になる部活とかある?」

 みんな腕を組んで考え込み始める。

「………あ!そういえば、『超自然現象解明研究部』っていう面白そうな部活の貼り紙を見ました!確か旧校舎の3階に部室があるって。気になってたので覚えてます!」

 ………なぜだろう。ヤバい臭いがプンプンする。

「おもしろそう!行ってみよ!えーちゃんも行くでしょ?」

「しーちゃんが行くなら行く!」

 清水も栄夢も興味津々じゃん………

「じゃあ、早速行きましょう!善は急げ、です!」

 あれ?みんな?私の意見忘れてない?

 ちょっと?

 待って!まだ机を戻さないで!?

 えーーっ?

 い、行くの?

 結局、私に意見は聞かれぬまま、私達は「超自然現象解明研究部」のある旧校舎へ向かった。

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