第9話 ラブレターではない
翌日の朝。
私は下駄箱の前で昨日の事を思い返していた。
………昨日は色々あった。というか、人生初の出来事だった。
何だろうな。あの舌の感触がまだ残っている。ねとっ、としたかと思えば、少し吸い付くようにしてから消えていった。
生憎、私には同性に舐められて興奮するような性癖がないために正直言えば、驚いた。否、気持ちが悪かったかもしれない。
いくらキレイな人でも、舐めるのはちょっとな……せめて、せめてよ?キスだったらまだ受け入れてたかもしれない。
「はぁ………」
私はこれから下駄箱の前で何回ため息を吐くのだろうか。幸せが大分逃げていっているぞ………?
私は俯いたままに下駄箱を靴に入れた。
カサッ……
「ん………?」
……何だろうか。内履きを取り出そうとしたら、何やら変な音が。紙の擦れるような。
顔を上げて、内履きをみる。
すると、何やら靴の裏に何か敷かれていた。ノートの切れ端だろうか。片方に破られた痕がある。
「……何これ」
もちろん自分で仕込んだ覚えはない。
何なら、ノートを破いた覚えもない。
私は内履きを取り出して履いた後、その紙を確認する。
───旧校舎2階のトイレにて待つ。入って二つ目のドアを10回ノックせよ───
…………敢えて言おう。
「何これ」
え?旧校舎って、あの旧校舎?理科室とか音楽室とかある、あの旧校舎?
まだ、私一回しか行ったことないんだけど、まって?そこに行くの?
授業以外で誰も寄り付かないって聞いたよ?わざわざそこに呼び出すの?
………行きたくねぇ~っ!!
いやもう、何かあるじゃん。考えたくないけど、幽霊やん。
花子さんですか?………私が聞いたことある呼び出し方とは違う気がするけど。
わざわざ遊びに呼び出してくるパターンですか?行かないと呪い殺すみたいなやつですか?
そんでもって?行っても「もっと遊ぼうよ」的な感じでずっと出られないみたいな?
………怖いて……!!
「え……これ、行くの?え?…え?行くの?私行かなきゃいけないの………?」
本当に行きたくない。まじで行きたくない。
………というか何で私なのよ。他にもっと好きそうな人いるでしょ?
私、そういう系は出来るだけ信じないようにするタイプの人種だよ?いざ、本当に出会ったら泣いて命を乞うよ?
悪戯だとは思うけど…だとしても誰?
幽霊じゃなくても逆に怖いよ………!?
「……行きたくないな…」
私は誘われたら断れない人間だ。というかこれに関しては後が怖いので行くしかない。
行っても怖いけどね。
とりあえず、謎の手紙をカバンにしまい、私は教室へ向かった。
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