最終話

「おつかれ桜木くん、留年回避できたね」

「お疲れ様でした」


 先生の言葉で理解する。

 今日でようやく補習が全て終わった。

 これで留年を回避できたのだ。


 すこし気分が高揚する。

 そのまま夏希たちのもとへ――。


 ……。

 いつもどおり部屋の前に来てふと思う。

 そもそも留年をしないためにこの部活に入ったわけで、もう来る理由が無い。


 ……あいさつぐらいしとくか。

 そう思い、扉を開けようと――


 したら、扉が開いた。

 俺の方に。


「ぐえっ」

「え!? コウくん!」


 開けたのは夏希だったようだ。

 壁で背中を打ってしまい痛い。


「ご、ごめんね。大丈夫かい?」

「……」

「なんで笑ってるんだい?」

「いや、俺らがここで出会った時もこんな感じだったなって」


 つい思い出し、笑みがこぼれる。


「そ、そういえばコウくん、留年……」

「あぁ、留年しなくてすみそうだ。なんか今までありがとな」

「う、うん……」


 寂しさをすこし感じながら、そんなことを言う。


「……部活は、どうするんだい?」


 おずおずと聞いてくる夏希。


「あー……」

「も、もしよかったらさ……」


 一度区切り、決意を固めたかのように。


「これからも一緒にやらない?」


 これからも。

 もうここにいる理由はないけど。


「……そうだな」


 これから作っていこう。


「これからも、よろしくな」

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あの子もその子も男の娘 えまま @bob2301012

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