第24話 過去の続き

「外国の方?」

「そうですね。外国の方です。どこの国かは忘れました」


 忘れんなよ。

 しかし夏希の父さんはたいして気にしていないようだ。


「とりあえず、中に入るといい。夏季を早く――!」


 すっかり忘れてた。

 夏希は大丈ぶ……か……。


 海雪におんぶされた夏希はすやすやと寝ていた。



 *



 場所は移り二階。

 そして、ここは夏希の部屋とのこと。

 簡素な部屋で、ベッドや机などがある。


 そしてなぜかベッドに座らされた俺。

 俺の太ももあたりで夏希が寝ている。


 いわゆる膝枕というやつだろうか。

 ふつう、逆じゃね? 逆でもないわ。


「それで、夏希はなんでこんな風に?」

「男の娘の日ですね」

「……なにそれ」


 純粋な疑問。

 初めて聞いたわ。


「え……知らないのですか?」


 常識だろ? みたいな感じで聞かれても。

 え、なにこれほんとに常識なの?


「男の娘みんなにある日ですよ」

「え、じゃあ夏希、今日がその……男の娘の日なの?」

「はい。そしてなーさまは今みたいになります」


 すごいなにもわからない。

 今の夏希、なんというかとても子どもっぽいことだけはわかる。


 甘えてきたり、いつもとはまったく違う。


「なーさまは努力家です」


 唐突に、海雪が言う。


「昔からなんにでも努力してきました」

「努力……?」

「なーさま、昔……小学生の頃は泣き虫だったのです」


 今の夏希からはとても想像できない。


「そんな泣き虫な自分を隠すためでしょうか。とーさまの真似をするようになりました」


 口調などが似ているのはそのせいなのかな。


「しかし、違う仮面を被るというのは疲れます。なのでたまに、こうして息抜きをしているのです」

「へー……これ息抜きなの?」


 自分を律している時と、ゆるく過ごす時があるのだろうか。


「息抜きです。自分の好きなことをやっていますね。なーさまの場合、食べたり、寝たりが主です。あと……」


 なんかよく食べるなーと思ってたけどあれ息抜きだったのか。

 そう思っていると。


「ん……ぅ……」

「あ、起きた」


 夏希が目を開け周囲を確認。

 そして俺と目が合う。


「お、おはよう?」


 ちょっと混乱し、へんな返事をしてしまう。

 夏希はまだ眠たそう。


「……おふろ」

「?」


 今なんと?


「コウくんと、いっしょにおふろ入る!」


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