第22話 まさかの

 夏希が投げたダンボール箱は――


 見事、犯人に命中した。


 多少なりとも重かった。

 犯人へそれが勢いよく背中にぶつかり、盛大に転ぶ。


 走って向かい、今度は俺が拘束する。

 上に乗っかるだけだけど。


 そしてマスクをとる。

 いったい、だれが――。


 え。


「木口、先生……?」



 *



 犯人はまさかの木口先生だった。

 俺らがいつも帰る度に、カバンに紙を入れて、バラまいていたらしい。


「なんでこんなことしたんですか?」

「おまえらが悪いんだ……」


 俯きながらぶつぶつ言う先生。

 海雪がひどく怯えるので、先生をロープで縛っといた。こんな経験いままでにない。

 海雪は今でも夏希の後ろに隠れている。


「俺ら、なにかしましたか?」


 正直、ぜんぜん記憶にない。

 しかも、めんどくさがり屋な木口先生が、こんな手間のかかることをやるなんて……。


 よっぽどの理由が……。


「おまえらがあの二人にけしかけやがっただろ!」


 理由が……?

 なにその理由。


「二人?」

「サッカー部の拓海と大河のことだ」


 あの二人ね。

 今も仲良くやってるだろう。


「それがどうしたんですか?」

「あの二人、なんで付き合ってんだよ!」


 えー……。


「怒るほどですか?」

「当たり前だろ!? あの付き合う前のういういしい感じがよかったのによぉ! しかも、女装までしやがって!」


 なんかもう先生として終わってるなこの人。

 だいたいまとめるとこんな感じ。


 先生はあの二人の微妙な距離感を楽しんでいたらしい。

 しかしそれが俺らの後押しで変化。

 原因は俺らだと決め。

 苦情を送りまくる。いたずら電話は生徒名簿を見て電話したり。

 そして廃部に追い込もうとしたらしい。


 なんという逆恨み。


「え、この部活そこまでピンチだったの?」

「ま、まぁ、部員も少ないし、顧問もいないし、大した事やってないし……」


 夏希が目を逸らしながら答える。

 なるほど。だから早めに解決しようとしてたのか。


「そして一つ言わしてもらおう」

「なんだよ西村」

「誰がどんな恰好をしたってあなたには関係ない! から、それに文句を言うのは許さない」


 先生に一喝。

 今までで見たことの無い怒りの表情。

 夏希なりに、信念があるのだろう。


「……陽も沈んできたし、帰ろうか」

「ロープは?」

「ほどいておいて」


 端的に言う夏希。

 ロープをほどく。


「もうしないでくださいよ」

「はいはい」


 もうこの先生やだ……。

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