第20話 一週間
この階に至る階段の所から。
かすかに聞こえ、近づいてくる足音。
それがぴたっと止まる。
陽があまり差し込まない場所のせいか、いまいち顔が見えない。
足音が遠ざかっていく。
階段を降りてるようだ。
「追いかけるよ、コウくん、ゆきちゃん」
「はい」
「お、おう」
夏希はその人物がいたずらの犯人と見込んだらしい。
走り、追いかける。
どこ行った……?
階段を下っていると話し声が聞こえてくる。
三階の廊下から。教室の前に五人ほど。
あ、拓海くんがいる。
三階の踊り場に出た俺ら。
こちらに気づいた拓海くん。
てててっと駆け寄ってくる。
「夏希さんたちじゃないですか。なにやってるんですか?」
「ちょっとね……キミたちは?」
「今日の部活が終わったので、これからミーティングです!」
俺らにも気づいた拓海くん。
「海雪さん、桜木さん、この前はありがとうございました!」
「……うまくいったのですね。よかったです」
「え、なに。二人知り合いなの?」
初対面かと思ってた。
海雪、拓海くんは大丈夫なんだ。
いやでも他のサッカー部員には嫌悪の目をよこしてる。
「告白する前の一週間、あっただろう?」
「あったな」
頑張ってたみたいだけど俺は知らない。
「その時、ゆきちゃんが手伝ってくれたんだ」
「そうだったのか……あれ、じゃあなんで当日はいなかったんだ?」
そこまで頑張ったのに、当日いないのは虚しいような。
「補習に行ってました」
淡々と言う海雪。
「ゆきちゃん、できるだけ生徒のいない日程を組んで、補習を受けているんだ……」
呆れた感じの夏希。
海雪、そんなに嫌いなのか男が。
「でもでも、手伝ってくれただけでも嬉しかったです! ではまた!」
そう言い、ミーティングとやらに戻る拓海くん。
「あっと、夏希さん」
戻ろうとし、振り返り尋ねる拓海くん。
「どうしたんだい?」
「木口先生、どこかで見ました?」
「木口先生? 探してるのかい?」
「はい。先生は、サッカー部の顧問なので。なのに、まだ来てなくて。ミーティングも先生がいないと始まらないですし」
「……すまないが、ボクらも知らない」
「気にしないでください。では、また」
再び部員の輪に戻る拓海くん。
「木口先生、なんでいないかわかるかい?」
「面倒臭いとか思ってるんじゃね」
「なぜそう思う?」
「休んだ時、プリント届けてもらう度に、『めんどいからちゃんと学校来い』って毎回言ってた」
「木口先生のイメージが変わったよ、ボク……」
すこし落胆する夏希。
どんなイメージ持ってたんだ一体。
そう思っていると、くいくいと海雪が夏希の服の裾を引っ張る。
「どうしたんだい? ゆきちゃん」
「いたずらの犯人、どうするのですか?」
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