第19話 のりのり

 次の日。

 補習を終えて、いつもの部屋へ。


「増えてる……」


 昨日の倍ぐらい、苦情の紙が増えてる。


「ここまでくると逆に感心するよ……」


 うんざりとした様子の夏希。

 バラまかれているのをいちいち集めているのか……?


「これもういたずらの範囲超えてるだろ……」

「というわけで、今日はこれの対策をしたいと思います」

「対策のしようがあるのか?」


 いたずらとか一番厄介だし。

 いじめられていた時、だれがやったかもいまいちつかめなかった。


「張り込みをするんだ」



 *



「現在十六時、誰もいません」

「よしよし、そのまま見張ってるんだ」


 なんでこの二人ノリノリなんだよ。

 海雪なんて牛乳とあんぱん持ってる。

 いつの時代よソレ。


 俺達は今、積みあげられたダンボールの裏にいる。

 三人いても、まだ余裕の広さ。

 顔だけのぞかせ、じっと見張る。


 …………。


「これやる意味あるのか?」

「しー、喋ったらバレますよ」


 だれにバレるんだよ。

 人差し指を口にあて、海雪が言う。

 なんでそんなノリノリなの?

 海雪に対するイメージがすこし変わった。


 最前線を海雪に任せ、すこし離れて夏希の方へ。


「海雪、めっちゃノリノリだけどなんで?」

「たぶんアニメとか見て、影響を受けたんだろう」


 受けすぎでは。

 早めになおしてあげないと……。


「気になったんだけどさ、なんで二人はいっしょに暮らしてるんだ?」


 いっしょに暮らすなど、なにかしらの理由があるはずだ。


「海雪がいっしょに暮らしたいと申し出たからね」

「あんまり答えになってないぞ」

「時がきたら話すさ」


そんな話をしていると。


「なーさま! なーさま!」


 海雪が小声で手をパタパタさせながら夏季を呼ぶ。

 そこへ音を立てないように向かう。


「どうした海雪?」

「あれですあれ」


 海雪の指さす方向、そこには――。

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