第15話 補習

 そんなちょっとした事件が起きた三日後。

 夏休みの学校。

 部活をしている者が多い中、俺は教室にて授業を受けている。


 前の席に、俺以外に一人の女子が補習を受けていた。


 それ以外、たいした事はない。

 はやく終わらないかなー。

 今十五時だから、あと一時間か。


 あ、でも終わったら夏希のところへ行かなければならない。

 あの日、公園で電話番号等を交換した。

 そして昨日の夜、「来い」とスマホにメッセージが送られていたから。端的すぎる。


 なにやるんだろう……。



 *



「来たぞー」


 扉を開け、自分の存在を示す。

 冷房のおかげか、ひんやりとした空気が心地いい。

 夏希は……ソファーに座り、束になった紙に目を通している。あとメロンパンをもぐもぐ。

 俺もその隣……左側に座る。


「……あ、コウくん。おはよう」

「おはよう、なに見てんだ?」

「たいしたものじゃないよ。補習、順調かい?」

「まぁ順調だな」

「そっか」


 ……部屋がシンとする。

 なぜかはわからないがあの日以来、夏希がよそよそしい。


 無言に耐えかね、なにかしら話題を探す。


「そういえば夏希は補習、ないんだな」


 なんだこの話題。

 ほら夏希訝いぶかしんでる。


「あるわけないだろう? ボクは勉強できるほうさ。運動もね」

「へぇ……」


 夏希、勉強も運動も出来るのか。

 文武両道ってやつなのかな。

 ……。

 またシンとする部屋。


「そういえば、ここの学校に女子っていたんだな」

「……女子?」

「補習の時さ、女子がいたんだよ」


 制服はあるのに、女子を見たことなかったからちょっと驚いた。

 しかし夏希はなんのこと? とでもいわん表情だ。

 そしてとんでもない発言をする。


「……この高校に、女子はいないはずだよ?」


「……え? でも俺見たぞ」

「そんなはずはない。パパがずっと嘆いて悩んでいる事だ」

「どういうこと?」

「この高校はね――」


 この高校……紅葉べには高校は創立してから五十年。

 十年前に共学になったとのこと。

 しかしそれまでは男子校だったらしい。


 しかも不良校と言われるぐらいに。

 そのため、この高校の評価はまぁまぁ悪いらしい。

 今はそこまで悪くはないが、昔の評価はなかなかぬぐえないとのこと。


「そうだったのか……え、じゃあ俺が見た女子はなに? 幽霊?」

「たぶんその子は……」


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