第7話 かこ

 夏希のやつ、ちゃっかり俺のカバンに制服をいれてやがる……。

 怒涛の一日が終わり、夜の十二時。

 今日はなんだか疲れた。


 明日からは夏休み。

 夜通しゲームでもやろうかなと思っていたが、今日は控えておこう。


 布団の中。

 目をつぶり、寝ようとするも不意に思い出される記憶。


 今更だけど留年した理由。

 出席日数がすくないことによる単位不足。


 なぜそんなにも学校を休んだのか?

 それは小学五年の頃の話だ。



 *



 昔から言いたいことはなんでも言う人だった。

 そのせいか余計なことまで言ってしまい、周りからは反感を買っていた。


 そんなある日。

 学校が終わり帰る時間。

 人気のない、静かな階段を下る。


 すると――。


「ぐすっ……やめてよ……」


 泣く声が、聞こえた。

 階段裏からだ。


 なんだろうと思い、こっそりと見る。

 金髪の女の子がいじめられていた。

 男女が二人ずついる。

 そのうちの男子一人が、その子のをひっぱる。


「きもちわるいなこいつ」

「あははっ、また泣いてるよ」

「なさけなーい」

「うわー」


 ……いじめって、ほんとにあるんだな。

 子どもなりに俺はそう思った。


 そして、非情なことに見捨てようとした。

 俺に、その子を助けることなど不可能だと決めつけて。


 きびすをかえし、帰路へつこうとした。

 次の瞬間。


「あぐっ」


 髪を引っ張っていた男子が、金髪の子を殴った。

 こぶしをにぎり、頬を強く。

 横たわる金髪の子。

 次にその子の腹を、別の男子が蹴った。


「がっ……げほっ、ごほっ」


 うめき声が聞こえる。

 言葉にできない怒りを感じた。

 俺は走り、殴った男子の顔面を、殴る。


「ぐっ」


 次に蹴った男子を、サッカーボールのように蹴った。


「……っ!」


 二人の女子たちは呆然としている。

 逃げたのだろうか。

 涙やアザで、顔をぐしゃぐしゃにした金髪の子へ駆けよる。


「大丈夫か?」

「ぐすっ……うん」

「先生呼んでこい、早く」

「う、うん」


 よかった。助けれて。

 立ち去る背中を見てそう思う。


「お、まえ……ふざけんなよ!」

「え……」


 ふりかえると同時に、殴られた。

 そこから先はどうしようもない。

 なんせ二人がかりだ。


 でも、あの子を助けれたからよかった。



 *



 ……もう昼か。


 また、嫌なことを思いだしてしまった。

 おかげで寝れなかったではないか。

 だがまで、思い出さなかっただけ幸いだろう。


 気分が悪い……。

 窓を見れば、陽の光とともにブロンドの美少女が見える。


 あの助けた金髪の子、今元気かなぁ。

 涙とかで鮮明に見れなかったが、それでも整った顔立ちをしていた。


 そう、目に前にいるこの子のように――。


「おーい?」


 え? 夏希?

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