第22話 七魔将
「……負傷者の救助に行くぞ! 急げ!」
アーロンの指示を受け、全員が火に包まれた町へと走り出す。
町の中は阿鼻叫喚の地獄だった。
本来、いるはずのないゴブリンやコバルトといった下級の魔物が当たり前のように町の中を闊歩している。
「いやぁ、助けて!」
転んでしまった少女にゴブリンの凶手が迫る。
夏樹が後ろから首を切り飛ばす。
「大丈夫か!? 動けるなら町の外まで走れ!」
襲われている人々を助けながら避難を促し続ける。
ーーードゴオォォンッ!
爆音が響く。
「魔族だ! 魔族が現れた! 今、アーロンさんが交戦してる、手が空いてるやつは援護に!」
冒険者が走ってきて周囲の者に呼びかける。
「また魔族ですか……卑劣な手を」
エインが怒りを滲ませる。
「……がはっ!」
魔族の一撃にアーロンが家の壁に叩きつけられる。
「ひゃははははっ! 大変そうだなぁ? そりゃそうだよなぁ? 出てくるはずのないアースドラゴンが出てきたんだもんなぁ? 倒すしかないよなぁ……ひひっ」
「お前……まさか……アースドラゴンが出てきたのはお前の仕業なのか!?」
「ひひ、正解っ! アースドラゴンを嗾けたのは俺だ。 あれだけの魔物となれば、それ相応の実力者が向かわなきゃいけなくなる。 そしたら、町は手薄だよなぁ?」
魔族が嘲笑を挙げながら、動けないアーロンに近づく。
「ーーー
魔族はエインの放った巨大な炎に同じ魔法をぶつけて相殺する。
「お前が元凶か!」
背後から夏樹が斬りつけようとするが、紙一重で避けられる。
「お前は……ひひ、王都を襲撃した奴にボロボロにされてた弱小勇者か! 俺に勝てると思ってるのかぁ!!」
飛びかかってくる魔族の手突を
「……
左拳で弾き、剣で袈裟斬りにする。
「……ぐはっ! くそ、ーーー
攻撃直後の無防備な夏樹を爆発が襲う。
「なっ……そんなバカな!?」
煙を振り払い、夏樹は切迫し、左拳を顔面に叩き込む。
住宅の壁を壊しながら吹き飛ぶ。
「……あがっ! くそ! くそ! くそぉ……まだだ! 地獄を見せてやる!! ゴミどもを一掃してやる!!」
ふらつきながらも立ち上がり、魔力を高め始める。
「……もう良いよぉ、お疲れ様ぁ」
「……あ? なんで……スロース様……」
突然現れたスロースと呼ばれた者が、ボロボロの魔族にとどめを刺した。
「……やぁ、勇者君。 私は七魔将『怠惰』のスロース。 よろしくぅ」
「エイン……あいつヤバいぞ……。 さっきの魔族より遥かに…….」
気怠げな挨拶とは裏腹に周囲一帯を飲み込むほどの威圧感プレッシャーを放っている。
「勇者君がいるって聞いてぇ、来ちゃいましたぁ。 ーーー
夏樹の全身から力が抜けて膝から崩れ落ちる。
「なんだよ、これ……」
身動きの取れない夏樹にスロースが近づいてくる。
「夏樹さんに近づくなぁ!! ーーー
猛烈に嫌な予感がしたエインは凄まじい速度で熱線が放つが、スロースは空いた手を熱線に向けると障壁のような物を展開し防いでしまう。
「間に合わないねぇ……さぁ、待たせたね、勇者君」
スロースの手に魔力が収束する。
エインの脳裏に夏樹との誓いが過ぎる。
「いや、ダメ……夏樹さんは……夏樹さんは私が守る!!」
エインの魔力が急激に高まり、切り札を行使する。
「ーーー
エインに巻きつくように現れた巨大な炎の聖蛇がスロースに向けて灼熱の炎を吐くが、即座に飛び退くことで難を逃れる。
「あらら……んー、結構ヤバいのが出てきたねぇ……少し真面目にやろうか。 ーーー
空間がひび割れ、禍々しい槍が顕現する。
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