第2章
第18話 別れと出発
ガハルドのパーティに依頼を出してから2ヶ月が経った。
「2ヶ月間ありがとう、カハルド達に依頼して良かったよ」
訓練の依頼を出してから、夏樹はガハルドに。エインはユリンに鍛えられた。個人訓練の他に、一緒に依頼を受ける事で経験を積んだ。ゴブリンの緊急依頼での成果とこの2ヶ月の貢献度を踏まえて夏樹はBランクに、エインはAランクに上がっていた。
「おう、お疲れさん。 こっからはお前の広げ方次第だな。 それにしても、もう行くのか」
2ヶ月の訓練を終えた夏樹とエインは、より多くの経験を求めて王都を出ることに決めていた。
「あぁ、王都にも色んな依頼がやってくるし、ガハルド達のように頼れる仲間もいる……けど、もっと強くなるために色々と見てみたいんだ」
「そうか、頑張れよ。 目的地はどこにするつもりなんだ?」
「隣のミニエイル王国を目指すつもり」
「ミニエイル? いいな、あそこは賑やかな国だ。 亜人も多いからな、色々な経験が積めるだろうよ」
亜人……動物の特徴を持った獣人やファンタジーの定番、エルフなどを指す言葉だ。王都には少ないらしく、夏樹はまだ会った事がなかった。
「じゃあ、そろそろ行くよ。 色々ありがとうな、また一緒に飲みにでも行こう!」
「おう! 訓練も怠るんじゃねぇぞ。 成長してなかったらぶっ飛ばすからな!」
夏樹とエインは王都レイアを後にする。
新天地ミニエイル王国を目指して進む。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーーガタガタッ
乗合馬車に乗り、街道を進んでいた。
「久しぶりに馬車に乗りましたが、良いですね、こういう旅も」
「そうだなぁ、王都での依頼は、ほとんどが魔の森に関する事だし、馬車を使うほどの距離移動しなかったしな」
「……! 魔物が来たな」
夏樹が気配を感知してこら数秒後に
「レッサーウルフの群れが来た! 冒険者さん頼んだぞ!」
乗合馬車の御者から護衛依頼を受けている冒険者に指示が飛ぶ。
依頼を受けている冒険者パーティはCランク、レッサーウルフは単体でFランク、群れでDランク。苦戦する相手ではないだろう。
数分後、連携の練度が高く、危なげなく討伐を終えていた。
「なかなかやるな、あのパーティ」
「そうですねぇ、リーダーさんが頭の切れる方のようですよ? 指示出しも早かったですし、仲間が危なくなったら魔法で補助してましたし」
「万能タイプか……真似出来ない芸当だな」
「ふふふ……夏樹さんの出来ないことは私が出来ますから、お任せください」
分かってる……とエインの頭を撫でる。
ーーーグルアァァアア!!
「嘘だろ……ワ、ワイバーンだぁぁ!! 冒険者さん助けてください!」
御者の悲鳴のような叫び声が響く。それに釣られるように馬車内の客がパニックに陥る。
「……なんだろうね、こうもトラブルに巻き込まれるかね」
「あはは……ツイてませんねぇ」
ワイバーンは単体Bランクの魔物だ。護衛のパーティが戦っているが防戦一方。敗北も時間の問題だった。
溜息をつきながら、夏樹が立ち上がるとエインが手で制した。
「私の訓練成果を見せてあげましょう」
視えねぇけどな……と口には出さず、探索サーチの魔法を使用して情報を拾う。
ワイバーンが大きく口を開け、巨大な炎の玉を護衛冒険者に向けて放つ。
「ーーー
エインが詠むと同時に空気が振動し炎の玉を打ち消した。
「ーーー
直線状に疾る雷がワイバーンの翼を打ち抜き機動力を奪う。それを追うようにして迫る巨大な炎を避けきれず、火達磨になり墜落した。
「風属性も使えるのか、ずっと火属性使ってたよな?」
「そうですね、火属性が一番得意です。 ユリンさんが風属性が得意だったので教えてもらいました」
夏樹とエインは馬車を降りて冒険者パーティの応急処置を行う。
「助けていただいてありがとうございます。 僕はキカルダ、Cランクです。 パーティメンバーは魔法使いのミルサがCランク、弓使いのサークがDランク、タンクのガザがDランクです。 以後お見知り置きを」
「私は夏樹、Bランク、こっちはエイン、Aランクです。 それにしても、随分と丁寧な挨拶ですね、もしかして貴族様ですか?」
「BランクとAランク……ワイバーンが瞬殺なのも納得ですね。 その通りです、ミニエイル王国キカルダ・シニール男爵と申します」
「男爵様ですか……なんか良くも悪くも貴族らしくないですね」
夏樹は笑いながらキカルダさんに向けて言う。
「貴族に向けて、そんな態度とれるのは普通じゃないですよ、夏樹さん」
呆れながらエインに諭される。
「あははは、大丈夫ですよ、今は冒険者ですから。 それを言うなら、そちらの御令嬢も高貴な血筋とお見受けしますが?」
「そうですね、申し遅れました。 クラウド王国王女、エイン・アスタリアと申します。 以後お見知り置きを」
「……!? 王女殿下でしたか、御無礼を失礼致しました!」
エインが身分を明かすと同時にキカルダさん達が一斉に跪く。
「シニール男爵の仰っていたように、今は冒険者です。 身分など気にしなくて良いですよ。 夏樹さんのような例外もいるのですから安心してください」
「なんか最近、俺をダシにすること多くない?」
2人の気さくなやり取りを見て、キカルダさん達の緊張感が和らいだ。
御者や他の客に夏樹とエインが高ランク冒険者である事を伝え、落ち着いてから再度ミニエイル王国へと出発した。
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