第13話 Aランク冒険者

 ギルド2階の会議室では20人程の冒険者達が既に部屋の中へと集まっていた。

 恐らくパーティを組んでいる者達なのだろう。3~5人程のグループで集まっており、今回の依頼をどう進めるべきかを話し合っていた。


「おい、あれって確か……」

「ああ、ギンガをぶっ飛ばしたとか言う奴だろ?」

「まぁ、ギンガは戦闘力だけで言えばCランク相当だろ?まぁ、その分脳筋だが」


「ふふふ……夏樹さんの噂が広がってますね」

「そうみたいだな、まぁ、変に突っかかってくる奴がいなきゃいいけど」


 会議室の中へと新たに3人の冒険者達が入ってくる。

 その冒険者を見た者達が騒めく。

 その様子に興味を引かれた夏樹は、他の者達と同様に新たに入って来た冒険者3人へと意識を向ける。


 まず、先頭にいるガタイの良い冒険者。他の冒険者達とは一線を凌駕する気配を感じる。背負っているのは大剣?だろうか。

 その後ろを歩いているのが細身の冒険者。手に杖?のような物を持っている所から推測するに魔法使いだろうか。エインに近い雰囲気を感じる。

 そのさらに後ろを歩いているのは、細身の腰に剣を下げた冒険者。


「おいおい、Aランクパーティが参加かよ。 豪華だな、今回の緊急依頼は」


 他の冒険者が発したAランクという言葉に夏樹が反応する。


「凄いですね、Aランクパーティの参加は久しぶりに見ました。 ガタイの良い男性がガハルド、魔法使いの女性がユリン、細身の男性がリーダスですね」


 エインが夏樹に説明していると、ガハルドが近づいてくる。


「よぉ、一応、俺達は長いこと王都で冒険者をやっているんだが、お前の顔を見た覚えが無い。最近この街に来たのか?」

「そうですね。 ギルドに登録してからまだ1週間です」

「1週間? それにしちゃあ、随分と強そうだな。 なぁ、俺と少し手合わせ……がっ、痛ぇ!」

「いきなり手合わせとか、頭おかしいんじゃない? まず、自己紹介をしなさいよ」


 ガハルドが手合わせを申し込もうとしていたが、仲間のユリンが杖で頭を殴って止めたようだ。


「うぅ……確かにそうだな。 俺はガハルド、Aランク冒険者だ。 こっちがユリン、同じAランク。 後ろの細いのがリーダス、Bランクだ。 よろしくな」

「私はナツキ、Gランクです。 こちらがエイン、Bランクです。 よろしくお願いします」


 お互いに自己紹介を行う。


「ん? あぁ、エインか、久しぶりだな。 あれだけ色んなパーティの誘いを蹴ってたお前が誰かと組むなんてな。 まぁ、ナツキは規格外のように感じるが」

「そうですね、基本勧誘してきた方々は格下ですし。 夏樹さんは格上、強い人とパーティを組む方がメリットが大きいですしね」


「ガハルドさんとエインは知り合いなんですか」

「おいおい、ガハルドさんはやめろ、さん付けなんてしなくていいっての、敬語もやめろ。 強いやつにそんな話し方されると落ち着かねぇよ」

「あ、あぁ、分かったよガハルド」


「私とガハルドは一時期、同じパーティでしたから」


 ガハルドに敬語をやめさせられた後、エインが理由を話す。エインは全体的にステータスが高いが、後衛職であることには変わりなく、ソロで依頼を受けるのは危険だった。そのため、近接職であるガハルドと組んでいたのだという。しかし、エインが王宮での仕事(公にしていないが勇者召喚のため)に行く頻度が増えたことにより、臨時パーティは解散となったのだという。


「全員揃ってるかぁ! 今から攻略会議を始めるぞ!」

 先程、緊急依頼を伝えに来た男が呼び掛け、会議室内の緩んでいた空気が一気に引き締められた。

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