第12話 緊急依頼

 王都へと戻った一行は2手に分かれた。

 シセナとキフィがリサーナを宿に連れて行き、夏樹とエイン、ロユナの3人でギルドへと報告に行った。


「ブラッド・ベア!? そんな浅い場所に出るなんて……」

 報告を受けたラーヤが驚愕している。

「すぐにボードに速報を出しましょう。 ブラッド・ベア以外にも高ランクの魔物がいるかもしれませんし、情報収集を開始します。 貴重な情報ありがとうございました」


 情報提供を行い、ゴブリン討伐の報酬を受け取る。ちなみにブラッド・ベアはエインの持つ魔法鞄マジックバックに入っている。魔法鞄マジックバックは、容量が一軒家分という破格の魔道具。超高級品である。


 ロユナから後日、お礼をしたいとお願いされ、リサーナの快気祝いも兼ねて飲みに行くことを約束して解散した。


 また明日も依頼を受けに行こうと話をしてエインと別れ、王宮の自室へと戻る。


「騒がしくなりそうだな……魔の森浅層に普段ではあり得ないことが起きた。 この前の魔族といい、嫌な予感しかしないな」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「聞いてくれ、緊急依頼の募集を行う! 依頼内容は魔の森浅層に現れたゴブリンの群れの殲滅。 報酬は白金貨1枚、他にも貢献度によっては別途報酬を出す。希望者は1時間後までに受付で依頼を受注した後、ギルドの2階にある会議室に集合してくれ」


 ブラッド・ベアの一件から1週間、ゴブリンやコボルトといった下級魔物の討伐依頼をこなしていた。ボードでエインと夏樹が依頼を物色していると、突然、ギルドの扉を荒々しく開け放ち、男が転がり込んできてゴブリンの群れについて伝えたのだ。


「ゴブリンの群れ? エイン、そんなに大変なことなのか?」


「ゴブリン単体は最低のGランク、群れてもFランクですが、亜種は単体でEランク、群れてDランクになります。 数が多ければ戦うことの出来ない人間にとっては驚異となるでしょう。 商人などが来れなくなり、王都の流通が停止します」


「なるほどな。 なら、冒険者集めてさっさと掃討する流れかね」

「そう簡単に進むと良いですが恐らくそうはなりませんね」


「亜種が群れをなしているのであれば、十中八九、統率する者がいる。 恐らく希少種のゴブリン・キング。 単体でBランク、群れを率いていればAランク相当です」

「おいおい、ゴブリンってそんなにヤバい魔物だったのか」

 エインの説明に驚愕する。単体でBってことはエインと互角ってことか……いや、接近戦ならエインは勝てない可能性が高い。


「約400年前には希少種の亜種、最悪の個体が出現した記録もあります。 名前はゴブリン・エンペラー。 単体でAランク、ゴブリン・キングすらも率いており群れとしての脅威度は最高のSランク相当。 実際に2つの国が滅ぼされました。 当時の勇者パーティと各国連合軍が総力戦を仕掛けて討伐したそうです」


「2つも国が滅びたのか……Sランク相当なんだよな? 当時のSランク冒険者がいれば、倒せるんじゃないの?」

「冒険者と魔物のランクは等しい意味ではありません。 Aランクの冒険者でを組んで倒せるのがAランクの魔物です。 ゴブリン・エンペラーの場合、他の上位種を多数率いてたこともあり、総力戦となったのです」


 いくら強くても、あくまで個人……出来る範囲は限られているってことか。


「とりあえず、俺らも手続きして依頼を受けるか」

「そうですね、詳細はゴブリン・キングが相手でも2人であれば倒せそうですし」


「緊急依頼の受注ですね、かしこまりました。 相手は群れです、恐らく亜種、希少種があると思います。 絶対に無茶はしないでくださいね」


 ラーヤの心配にお礼を言い、エインと夏樹は集合場所であるギルドの2階へと向かった。

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