第9話 冒険者ギルド

 「申し訳ありませんでした!」


 受付嬢の謝罪をきっかけに騒動で固まっていたギルド内が再起動した。


 「いや、大丈夫だよ。 それより、登録いいかな?」


 「もちろん、大丈夫です! こちらの登録内容を記載していただけますか?」


 視えず、字が書けないため、エインに代筆を頼む。

 以前、名字は貴族のみだと、エインから聞いていたため、名前はナツキになっている。


 受付嬢のラーヤさんから冒険者ギルドについて説明を受ける。


 冒険者ギルドに登録した冒険者はランク制となっている。

 ランクはG~Sまで存在し、ワーテル中の冒険者でも、最高ランクであるSは5人しか存在していないらしい。ちなみに王都レイアが所属しているクラウド王国にもSランクが1人いる。


 依頼はボードに貼られている依頼用紙を受付に持っていくことで依頼が受領される。また、規定日数以内に依頼を達成出来ない場合は、報酬の3割を違約金として冒険者ギルドに支払わなければいけない。


 依頼は自分のランクより1段階上まで受けることが可能。

 複数人でパーティを組んでいる場合はメンバーの平均ランクがパーティランクとなる。また、パーティを組んでいる場合はパーティランクより2段階上の依頼を受けることが可能。


 依頼やその他の関係で冒険者同士が何らかの揉め事を起こしたとしても、冒険者ギルドは関知しない。


 「結構、厳密に決まってるんだな」


 「冒険者さんの命がかかっていますから、手抜きは出来ませんよ。 ……はい、こちらがナツキさんのギルドカードになります。 Gランクからのスタートですね、これからよろしくお願いします!」


 ラーヤさんの説明に感心していると、ギルドカードが作成され、受け取った。


 「あのー、ナツキさんって一体何者なんですか? さっき殴り飛ばした冒険者さんはDランクのギンガさんですよ?」


 小物臭が凄かったあいつが銀河?なんか壮大な名前だな。

 あれがDランクか、勇者スペックって凄いんだな。


 「彼は冒険者になる前に傭兵業をやってたんですよ。 だから、冒険者としては新人ですけど実力は確かですよ」とエインからフォローが入る。


 「なるほど、それなら納得……えっ!? エイン様!? 何故、新人の彼とここに?」


 どうやら、エインはフードを深く被っていたようで正体がバレていなかったようだ。フードを少し持ち上げることでラーヤさんに顔を見せたらしい。しかし、それにしてはラーヤさんの驚きが少ないな。


 「私も冒険者登録してますよ? ランクはBです」


 夏樹の耳元でエインがそう囁く。登録しているのも驚いたがランクの高さに衝撃を受ける。いや、あのステータスだ、それぐらいのランクでもおかしくないのか?


 「確かに新人ですが……実力は先程の騒動で十分お分かりでしょう? それと、冒険者の時は様付けはダメだと言ったでしょう」


 「申し訳ありません、エインさん。 それにしても何故、今日はフードを被って隠れるようにしているんですか?」


 「ふふふ……ラーヤを揶揄からかうためですよ?」


 なるほど、エインはお忍びで冒険者活動をしているわけじゃないのか。


 「怒りますよ……? エインさん……」


 ゾワッ

 寒気がした。うん、心にメモをしておこう。ラーヤさんは怒ると怖い……っと。

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