第8話 王都レイア
「遅いです! 今、何時だと思ってるんですか!? 10時です、10時! 1時間遅れですよ!」
デートの日、案の定、時間が分からず遅刻した夏樹は広場の噴水前で怒られていた。
「すいません、時計が見えなくて遅れました。 朝起きてからレルさんに確認したら、すでに時間を過ぎていました。 申し訳ありません」
理由を説明しつつ、謝罪する。
「ふぅ……視えないなら仕方ないですね。 許してあげます、遅刻した罰を与えますからね、覚悟しておいてください」
それは、許してないんじゃ……。いや、言い訳をしたら何を言われるか分からないし黙っておこう。
「気を取り直して、今日は王都デートです。 エスコートは私がしますから楽しんでくださいね!」
そう言って、夏樹の手を取り歩き出す。
「どこか行きたいところは……と言われても思いつかないと思うので、観光名所や有名な店などを紹介させていただきますね。 後、これからは私の事はエインと呼んでください、敬語もいりませんからね」
「いや……王女様を呼び捨てはさすがに」
「私の事はエインと読んでくださいね」
「いや…あの」
「エイン」
「分かった、分かったよ、エイン……」
王都レイアは外周がもっとも位置的に低く、中央に近づくに従い、高くなる形で高低差がついている。いわゆる、円錐状になっており、段差のある土地に石造りの建物が所狭しと並んでいるとのこと。また、王都を上空から見下ろすと一目瞭然なのだが、驚くことに王都そのものが魔法陣になっている。国民から自然回復出来るほどの微量な魔力を吸収することで、王都を覆う結界を保持しているのだ。
王都レイアの仕組みを聞きながら、雑貨屋、武具店、飲食店など色々2人で周った。
「ここが冒険者ギルドです。 冒険者がいるおかげで魔物討伐などが進み、世界の安全を守るのに貢献しているのです」
「そうなのか、冒険者って荒くれ者のイメージがあったんだが……」
「そうですね、確かに全員が善人ということはありませんね。 残念ですが夏樹様のイメージ通りの方もいらっしゃいますね」
2人で冒険者ギルドへと入ると、全員の視線が集中する。
特にエインに向けられる視線が多い気がする。
「げははははは! おいおい、ここはガキの来るところじゃねぇぞ! おいそこの女、ヒョロい男なんて捨てて俺達のところに来い、壊れるまで遊んでやるよ」
下卑た笑い声が響く。
男がエインに近づき、手を取ろうとしたが、軽く躱して夏樹の後ろに隠れる。
「おいおい、逃げんなよ。 つれねぇな、おい、お前退けよ」
バシッ!
夏樹は思わず、伸ばされた手を弾いてしまった。
「痛ぇ、てめぇ、何しやがる!!」
男が夏樹に殴りかかるが、右手で手首を掴んで回すように捻り上げ、ガラ空きになった胴体に左手で掌底を放つ。
「ぐはっっ!」
地面と並行に吹き飛び、ギルドのドア突き破って街道まで飛んでいった。
ギルド内が静まり返る。
「やば、反射的に手を出したせいで加減が緩んだ」
「ふふふ……やり過ぎですよ、夏樹様。 まぁ、スッキリしましたが」
笑いながら開き直るとか、良い性格してるな、王女様。
「さて、気を取り直して、冒険者登録をしましょうか」
「ん……? 登録するの? 見に来ただけじゃなかったのか」
エイン曰く、冒険者に登録することで貰えるギルドカードが身分証明になる。また、今後、旅をする上で必要な金銭を依頼達成で稼げるため、登録した方が良いとのこと。
「なるほどな……じゃあ、さっさと登録するか。 あの、登録したいんですけど……。 あれ? おーい」
先程の騒動が原因で、話しかけた受付嬢が驚いた表情のまま、固まっていた。
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