第6話 決意

 あの後、すぐにエイン王女に謝罪した。

 感情に抑制が効かなかった、心配してくれていた彼女に当たるべきことではなかった。


 「いえ、私にも配慮が足りませんでした」


 夏樹な重傷だったが、この世界の魔法の万能さに加え、勇者補正なのか凄まじい勢いで回復した。夏樹が目を覚ましてから3日後に再度、エイン王女から復興状況を聞き、手伝いを申し出た。


 王女付きの万能メイド、レルさんは無事だった。魔族の攻撃で肋骨が数本折れていたが、奇跡的に肺などの臓器は傷ついておらず回復は早かった。


 レルさんに付いて復興作業を行う。と言っても、夏樹の目は依然見えないままだ。魔族との戦いでは確かに視えていた、魔族はと言っていた。見えないだけで目を開くことは出来るため、エイン王女に確認してもらったが焦点の合わない黒目があるだけだった。


 エイン王女曰く、何かのスキルじゃないかとのこと。勇者は特殊なスキルを発現することが多いという。ただ、常時発動ではないため、何かしらの代償がある可能性がある。魔力を消費したら発動、体力を削って発動等。実際にそういうスキルのも存在するようだ。


 目が見えないとはいえ、気配や物音で大体の位置関係は把握出来ることや魔族を倒したことで飛躍的にレベルが上がったようでステータスも大きく向上していた。そのため、復興作業では人の何倍も働くことが出来た。


 平田夏樹 16歳 男 レベル69

 称号:勇者、異世界人

 筋力:790

 耐久:790

 敏捷:790

 魔力:790

 耐性:790

 状態:盲目、???

 固有スキル:???


 状態が増えていたことに驚いたが、変わらずハテナのままで内容は不明のままだ。


 「お疲れ様でした。 手伝っていただきありがとうございます! 夏樹様の作業速度は凄まじいですね、本来かかる期間を大幅に短縮することが出来ました」


 レルさんが興奮した様子で話す。復興作業を始めて4日目の昼、ようやく依頼のあった作業は全て終えた。


 「いえ、お役に立てたようで何よりです。 こちらとしても急激に上がったステータスに身体を慣らせる必要があったので、ちょうど良かったです」


 「夏樹様にエイン様より明日の昼頃に顔を出して欲しいとのことです。 今後に関して大切な話があるそうです」

 作業依頼完了の報告をするため、レルさんと王宮へと向かっている途中にエイン王女からの言伝を受けた。


 翌日の昼頃に王宮へと向かった。

 「夏樹様! 復興作業の手伝いありがとうございました! 今日は今後の話をさせていただきたいのでがよろしいですか?」

 断る理由もないので頷く。


 「再度、お願いではなく正式な依頼として魔王討伐をお願いしたいのです」


 「その依頼によるメリットは何ですか? 命をかけるだけのものがあるんですよね」


 冷たい物言いだが重要だ、2つ返事で受けて良いほど軽い話ではないのだ。


 「大きく分けてメリットは2点。 1点目は魔王の魔石を使用することで元の世界なら戻れます。 2点目は勇者スペックを元の世界で使用出来ることです」


 1点目は出来なければ困る。2点目は……便利だろうけど微妙。その旨を伝えると。


 「……! ぐ、では! 3点目のメリットとして私が付いてきます! これでいかがでしょうか?」


 とんでもないことを言い出すエイン王女。


 「は……? いや、意味が分かりません。 早く釈明しないと、魔王を倒すために身売りしているように見えますよ」 

 「み……身売りなんて、そんなつもりは……!?」


 慌てて否定しているエイン王女。


 「何も今すぐ魔王を討伐してほしいというわけではないのです。 レベル上げをしなければ勝てません。 また、勇者だけでは多勢に無勢です。 そこで元々、魔王討伐に向けた旅には私が同行する予定でした」


 「エイン王女自らですか……? 失礼ですが戦えるのですか?」


 エイン王女の発言が信じられず、思わず問うと、エイン王女は魔晶板を使用して自らのステータスを読み上げた。


 エイン・アスタリア 16歳 女 レベル55

 称号:クラウド王国王女

 筋力:300

 耐久:300

 敏捷:300

 魔力:900

 耐性:300

 状態:――

 固有スキル:???


 驚きで固まった。全てのステータスが一般騎士よりも上、特に魔力に関しては勇者である夏樹よりも高い。


 「エイン様、あなたは一体……」


 「ふふふ……魔法の才に恵まれただけですよ。 他のステータスは幼い頃より、騎士団長のガリウスに護身の為に訓練を受けてましたから」


 卓越した魔法の才能に加え、騎士団長の英才教育の賜物ということか。しかし、これほどの実力なら同行も納得だ。


 「改めてお願いします。 共に戦っていただけますか?」


 夏樹は少し考えた後に……。


 「……分かりました、受けましょう。 どちらにせよ、元の世界に戻る方法は魔王討伐以外にないんですよね? だったら選択肢は1つしかないじゃないですか」


 苦笑いを浮かべながら夏樹は言う。


 「……ありがとうございます。 元の世界に戻る方法は色々な研究がされてきましたが、魔王討伐以外に見つかっていません。 これから共によろしくお願いします」


 エイン王女が夏樹の手を取り、涙声で礼を述べる。


 「では、まずは私と王都デートをしましょう!」


 ……は?

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