第15話 事情

「まあ、その通りなんですよねえ」


驚きはしたものの、メアリーはいつも通りのんびりしたような口調で言います。

その通りとは、母様が兄様に恋心を抱いているということですね。やっぱり周知の事実でしたか。

だって、あんなに分かりやすいんですよ?

一度見ただけの私にさえ分かりました。

ずっと使えている乳母やメイドなどの使用人は……分からないはずないですよね。


「私に分かることはこのくらいです」


「じゅうぶんです。ありがとう、メアリー」


「ところで……何故ですか?お嬢様がティアラ様のことを尋ねるなんて」


ティアラ様、母様のことですね。

母様のことが知りたいのは、兄様のためです。全部。

だって、母様の事私なんとも思っていませんし。産んでくれたことには感謝はしていますけどね。


「にいさまのためです」


そう断言する私。


「まあっ、本当にアルスロート様のことが大好きなんですね!」


「はいっ!」


私が元気よく返事するとメアリーが暖かい目で見守っていた。

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