第14話 メアリーの話

メアリーにとりあえず聞いてみます。

私の知らない母様について何か知ることが出来るかもしれないです。

勿論、兄様には内緒でですよ?

私が動いているって知ったら止めそうですし。


「めありー、かあさまについてききたいのだけれど、いいですか?」


「ええ、いいですとも」


心よく引き受けてくれました。

幸先よき良き。


「ティアーゼ様のことは、知っております。ティアーゼ様専属メイドに比べれば、表面的なことしか知らない程度ですがね」


母様に専属メイドがいるのですねえ。

前に来た時は、気づかなかったですけど。

物語を読み聞かせるようにゆっくりと言います。私が子供ということを配慮してのことでしょう。


「こほん。ティアラ様は16の時に嫁いできました。領主様……お名前は知っていますか?」


よく考えたら知らない。

父様と呼んでいたからね。

兄様の名前は知っていますけど。

てへっ。


「しりません」


「もう!領主様ったら!自分から名乗らなかったのかしら?変なところが抜けているんだから。こんなんだから、奥様にも愛想つかされるんですよ」


メアリーが憤っている。

旦那としてはちょっとアレな人なのかな。

仕事は出来るみたいで信頼されているようだけど。これも、メアリー情報。

噂話が好きな人だから、情報が入ってきやすい。


「あっ、続けますね。領主様の名前はイスカル・クロード」


私のお父様、イスカル・クロードっていうのですね。

覚えておきます。家族の名ですし。


「わかった」


「やはりお嬢様は頭が良いですねえ。私の言っていることしっかりと理解している。そんな顔してるんですもの」


おお、私って頭よく見える!?

前世の記憶のおかげですかね。

今世では、天童と言われてしまうかもしれません!

嘘ですけど。

前世では、ただの高校生だった私。

この異世界で前世の記憶が役に立つとは思えません。


「わたしはまだまだです。なので色々と教えてくださいね、めありー」


「勿論ですとも。私のことを頼ってくれるのは嬉しいです。話を戻しますね。イスカル様とティア様は政略結婚でした。そのとき、イスカル様はティア様より歳が二つ上でした。当時イスカル様にはお慕いしている方がおりました。もう亡くなっておいででしたが、奥様の形見である、アルスロート様を引き取られて育てていました。お慕いしている女性のことを引きずっているイスカル様にいずれか愛想をつかしていました。その代わりではないのですが、アルスロート様に、その……」


「にいさまにこいをしているのですよね」


とっても言い難そうにしていたので、私が言います。普通言えないですよね。実のお母様がお兄様に恋心を抱いているなんて。

父様はあの通りの仏頂面。到底上手くいくと思えません。歩み寄らない限りは。

兄様はお優しいですし、イケメンです。

それに加えて、賢い。

恋をしてしまう気持ちも分からなくはないです。


「そうなんです!って、ええ?何故お嬢様かそれを!?」


大変驚いた様な顔をしているメアリー。

それもそのはず。

幼女がそれに気づくなんて滅多にないことですからね。

私は恋心というものに機敏なのです。

嫌いなものだから!



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