第12話 私の母様

翌日兄に連れられ、母様の元へ行った。


「かあさま……」


この人が私の母様。

整った顔立ちに美しい出で立ち。

儚げな印象を感じさせる。

美しい……


「まあ!ヴィアなの?」


「はい、ゔぃあです」


兄様が手を繋いでくれています。


「ふふっ、2人とも仲がいいのね」


自分のことのように嬉しそうな表情をみせました。この人は、優しいいい人だと思います。きっと。


「アルも大きくなって……」


母様が手を伸ばします。

すると、兄が振り払いました。

驚いてしまいます。


「今日は僕じゃなく、ヴィアでしょ」


「……それもそうね」


渋々というように引下がりました。

兄様が理由なく敵意を向けるとは考えられないです。

母様に何か問題が?


「ヴィア、私のことを心配して来てくれたの?」


ふふふと鉄壁の微笑みを崩すことなく問います。


「そうです、だいじょうぶですか?かあさま」


「だいじょうぶ……?大丈夫なわけないでしょう?貴方を産んでこんな体になって、好きでもない人と政略結婚させられて、こんな所に閉じ込められて……」


凄いことを言われたような気がします。

それでも鉄壁の微笑みは崩れません。


「母様!ヴィアの前でやめてください!」


兄様が止めにはいります。


「あら?アル、私言ったわよね。私のことはティアと呼んでと」


甘く誘うような声。

これは恋情。

おえっ。

私の一番嫌いなやつです。

男女間の恋とか愛は気持ち悪いんですってば。


「貴方はまだそんなことを……!

実の娘であるヴィアと会えば何かが変わると思っていました。けれど、その考えはどうやら甘かったみたいですね」


兄様がドアノブに手をかける。


「あら、もう行ってしまうの?」


「ええ、失礼します」


母様に背を向けたまま去る。

横から見る兄様の顔は、悲しそうに苦しそうに歪んでいた。

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