1里とは? 千里とは? 万二千余里とは?
当「謎解き」において、幸田は諸説を踏まえ、「1里=76~77m」説を採りたいと思います。これは、
「魏朝や西晋朝は、漢代の長里(1里=400~500m)ではなく、周代の短里(1里=76~77m)を採用していた」
という古田武彦氏らの説によるものです。
まあ、しかしそこまで厳密なものではないと思います。70mくらい……という認識で充分です。なにしろ魏志倭人伝の記述自体が概数ですから。
「ん!? 陸上の距離はそれで良いとして、海上の距離はどうやって計測したの?」
と疑問に思う方が、おられるでしょう。
確かに陸上であれば、歩数を数えるだとか、ロープや棒で計測するだとか、色々と現実的な計測方法があります。しかし海上ならば、そうはいきません。
ですがそれについて、面白い見解を見つけました。
「当時は朝出発して、日没前までに航海した距離を、一律『千里』と数える」
というものです。古代の大陸の人々がそう認識していた、形跡があるらしいのです。
後述しますが、魏朝の使者御一行様は大所帯だったと考えられます。
大所帯が、夜明けとともにバタバタと食事の準備を行い、朝食をとる。それから後始末と野営の片付けを行い、大量の荷物を船に積み込む。ですから出港時刻は、陽も随分と昇った頃だったかもしれません。
そしていよいよ船を漕ぎ出すわけですが、実際に航海可能なのは日が沈むまでの数時間だと考えられます。
で、目的地に辿り着くと、大急ぎで船から荷物を降ろし、食事の準備と並行して野営の準備。……
それを、一律「千里」と数えた……というのです。
なるほど。――
現実的な話ではないでしょうか。
何時に出港しようが、また日没が何時頃であろうが……つまり1日何時間航海出来たのかを問わず、それから追い風向かい風を問わず、とにかく1日スケジュールの海上移動を千里とカウントする。
かなりアバウトですが、目視での航行がメインだったと思われる3世紀頃の事情を考えれば、非常に合理的だと言えます。
というわけで幸田は「水行千里」を、
「1日スケジュール……即ち約半日の海上移動を、千里と呼び
という説を採ります。実測距離を意識せず、一律千里扱いというわけです。
それから、
「(帯方)郡より女王国に至る、万二千余里」
という記述があります。
これについても様々な議論が発生するところではありますが、一説によると、
「古代の大陸人は、この世界は東西28,000里、南北26,000里と考えていた。つまり帯方郡から12,000里というのは、世界のほぼ辺境である事のたとえ」
だそうです。
ですので、幸田は「万二千余里」という記述に関して、単に12,000里強(920km強)という具体的距離に拘らず、とにかく遠いというアバウトなイメージに過ぎない……という可能性を
以上の3点につきましては、実はPCトラブルの際にメモを消失してしまい、ソース等がわからなくなってしまいました。
今後判明次第、順次加筆訂正致します。申し訳ございません。
さて、以上を踏まえ、魏志倭人伝記述を辿ります。
出発点たる帯方郡は、前節でも述べたように現在の北朝鮮平壌付近です。使者一行のボスは、建中校尉の「
当時の半島は治安の悪い野蛮国だったため、海路を進みました。岩礁だらけで航行の難しい半島西岸沿いに、南へ行ったり東へ行ったりしながら七千余里……即ち7日スケジュール。半島南岸へと迂回します。
魏書30巻「烏桓鮮卑東夷伝」の「韓伝」によれば、当時半島南岸は倭人の支配下にありました。
到達地点たる倭人領「狗邪韓国」は、半島南岸であると同時に倭国北岸でもあるわけです。ですから魏志倭人伝にも正に、
「その
と記述されています。
それから改めて海を渡ります。
「始めて一海を
とあります。
おそらく「対馬」で間違いないでしょう。何故なら他に候補がありません(笑)
半島南岸と対馬の間には、対馬海峡西水道(朝鮮海峡)が横たわります。
直線距離にして60km強ですが、潮の流れが早く、古代の手漕ぎ船で渡るのはなかなか困難だったと思われます。豊田有恒氏の著書に、手漕ぎ船による渡航実験の様子が書かれていますが、ちょっと出発地点を誤るだけで対馬まで辿り着けなくなるのだとか。
それが即ち「水行千里」の実情なのだろう、と感じさせられます。
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