第40話 旅路③

「おはよう春姫」

「ん?・・・やまと?・・・・・なんで大和が私の隣に?」


寝ぼけてるのかな。

寝ぼけ眼の春姫と見つめ合っていると僕の腕枕で寝ていたことに気が付いたのかまたは昨日の夜の事を思い出したのか段々と顔に赤みを帯びてきて視線を泳がせ始めた。


「お おはようございましゅ」

「おはよ」

「あっ・・・・」


そう言いながら僕は春姫を布団の中で抱きしめた。

何だか今は春姫が愛おしくてこうしていたい気分だ。


「やまと・・・・」

「春姫。ずっと一緒だよ」

「・・・はい」


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布団から出てシャワーを浴びた後、僕らは1階にあるカフェレストランで朝食ビッフェを楽しんだ。

昨日散歩した庭園を見渡せるステキなお店だ。


「昨日は暗くてわからなかったけどこんなにお花が沢山あったんだね」

「そうだな。よく手入れもされてるし夜とは全然違うね」


綺麗な景色を見ながらの朝食。

それにビッフェ形式ながら一品一品の味も美味しかった。

本当 朝から中々贅沢だよな。


食後、大浴場で再度温泉を楽しみ、ホテルをチェックアウトした僕らは、ホテルの送迎バスで駅前に戻った。

今日はこの後もう少し観光をして帰宅する予定だ。


「今日はシャボテン公園と大室山に行くんだよね?」

「そうだね。え~とバス停は・・・あ、あのバスだ。発車時刻近いみたいだから乗っちゃおうよ」

「うん♪」


タイミングよく行く予定だったシャボテン公園方面のバスが停留所に停まっていたので僕らは慌ててバスに乗り込んだ。

そして乗り込んだと同時にバスも出発。バスは1本逃すと結構待つからいいタイミングだったよな。

バス後部の座席に座った僕らが外の景色を見ると一際目を引く大きな山が見えてきた。


「大室山か」

「うん。何だか不思議な山だよね」

「だな。・・・大室・・・そういえば大室さんや栗田達も元気にしてるのか?」

「・・・そこで思い出すのね。うん。元気にしてるよ大室さんも栗田君も瑞樹もバスケ部で活躍してるみたいだしね。清水先輩や村田先輩だっけ?川野中時代の先輩が色々と指導してくれてるみたい」

「そっか。皆頑張ってるんだな」

「栗田君と瑞樹は・・・まだ相変わらずだけどね。大室さん呆れてたよ」

「はは まぁあいつらはあいつらのタイミングとかあるんだろ」


そんな会話をしながらバスを降りた僕たちはまずは大室山へ。

山頂まではリフトで行けるので頂上までもあっという間だ。


「わぁ眺めいいねぇ~」

「今日は天気もいいし富士山も見えるかもな」

「ねぇ早く行こうよ」

「あぁ」


僕らは手を繋ぎ山頂の遊歩道を歩いた。

綺麗に整備されているので歩くのも楽だし何より景色が素晴らしい。


「本当気持ちいいね」

「何だか観光してるって気分だよな」

「あっ富士山!」

「おぉ~ 天気悪いと見えないらしいから僕達運がいいのかもな」

「いい思い出になるね」

「そうだね」


春姫と2人山頂からの景色を楽しんだ僕らは再びリフトでふもとまで降り目の前のシャボテン公園へ。ここもこの地区では有名な観光スポットだ。


「わ!見て大和!クジャクが歩いてるよ。こんな近くで見るの初めて!」

「放し飼いなんだな」


"シャボテン"という名前から、もっと植物メインなのかと思ってたけどいきなりクジャクに迎えられたし人気のカピバラや園内を飛び回る沢山の鳥。どっちかって言うと動物公園の方がメインみたいだな。


昼食を取ったあと、カピバラやサルなど可愛い動物たちと戯れ癒された後、施設名にもなっているサボテンの温室も見学した。

観光気分を十分に満たした僕らは両親へのお土産を買って帰路についた。



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帰りの電車。

春姫は疲れたのか僕にもたれ掛かって眠っている。


僕も何となくうつらうつらしているとスマホにメールが着信した。

親父からだ。

[帰りの電車か?今日は夕飯は食べて来るのか?それから春姫ちゃんのご両親も家に来てるから春姫ちゃんも一緒に連れて帰ってきなさい]

[食べてないよ。どこかで食べようかと思ってたけど用意してくれるの?]

[了解。食べてないなら用意しておくからまっすぐに帰ってきなさい]

[わかった。準備よろしくね]


親父がメール送ってくるなんて珍しいな。

それに春姫のご両親も家に来てるって書いてたよな。

また飲み会でもしてるのか?

そんなことを思いながら僕もいつの間にか眠ってしまっていた。


危うく乗り過ごしそうになりながらも横浜で電車を乗り換え春姫と2人川野辺へ。


「「着いちゃったね」」


思わず声が揃ってしまい。顔を見合わせて笑ってしまった。


「ふふ。楽しかったね」

「あぁ。また・・・・2人で旅行とか行きたいよな」

「行こうよ!また一緒に♪これからずっと一緒に居てくれるんでしょ?」


ちょっと照れた感じで聞いてくる春姫。


「そうだ。ずっと一緒だよ」

「ふふ よろしい!一緒に居させてあげる!

 さ お母さん達も待ってるんでしょ?早く帰ろうよ。私お腹空いた!」


笑顔で僕の手を取り走り出す春姫。

何だか春姫も変わったよな。



夏休みもあと少しで終わる。

今年の夏は春姫と2人の忘れられない思い出が沢山出来たな。

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