閑話 友達

「おぉあのゲームすげぇ!動きがメチャ滑らかじゃん!」

「だな 画質も凄いよ。近く行って見てみようぜ!」


12月某日。

僕は都内海浜地区の大規模展示場に来ていた。

春姫と・・・ではなく小学校時代からの腐れ縁な友人である有坂と渋沢、それに太田の男友達4人でだ。

目的は展示場で開催されているゲームやコミック系のイベント。

ほぼ毎年このメンバーでイベントを見に来ている。


有坂はスポーツ万能で明るいクラスの人気者。

渋沢は成績は良い方だけど地味であまり目立たないタイプ。

太田は何でも卒なくこなすタイプだったけど人見知りで友達は少ないタイプだった。


僕らは性格も家庭環境もバラバラだったけど小学校の時にたまたま同じクラスで班が一緒になってからの付き合いだ。不思議と意気投合したんだよな。

確かその当時流行っていたゲームやマンガの話で盛り上がったんだと思うけど、太田や渋沢が2人で話していたところに有坂が入っていって、1人で居た僕も誘ってくれて。

それ以来お互いの家を行き来したり、こういったイベントに一緒に行くようになった。


そして、僕以外の3人は川野辺高校に進学し有坂と渋沢はクラスも一緒だそうだ。

学校ではグループが違うらしいけど太田含め相変わらずの付き合いらしい。

それに学校が別々になっても僕にちゃんと声を掛けてくれたし不思議な関係だよな。



「でもさ、有坂も大和もよかったのか?」

「ん?何が?」

「何がって・・・山下さんと栗平さんだよ。確かにこのイベントは毎年一緒に来てたけどさ、2人とも彼女持ちだろ?折角の連休なのに・・・」

「あ、僕は大丈夫だよ。春姫に話したら"楽しんでらっしゃい!"って送り出されたし。それに・・・何冊か買ってきてって買い物リストまで渡されたよ」

「何だか"嫁感が・・・"あ、でもそっか栗平さんも結構好きなんだったよな」


春姫も僕の部屋に良く来ていたこともありマンガやゲームは結構好きな方で渋沢や太田とも顔なじみだったりする。

まぁ春姫も有坂同様に普段は陽キャグループだから学校ではあんまり接点無いみたいだけどね。


「・・・」

「どうした有坂?」


僕と渋沢がおどけた感じで話をしていると有坂が真剣そうな顔をしていた。


「僕は・・・若菜にこの手の話はしたこと無いんだよ。今日も中学の時の友達と遊びに行くって話したし」

「え?そうなの?でも中学の同級生とかは有坂が隠れオタなの知ってるだろ?」

「確かに渋沢の言う通りなんだけど、若菜とは高校入ってから知り会ったし・・・イメージとかあるだろ?もしかしたら嫌われるんじゃないかとか思うと怖くて」

「まぁ確かに普段の有坂とはキャラが違うしな。僕は大丈夫だと思うけど・・・それに変に隠し事してるとかえって面倒なことになるかもしれないぞ」

「太田・・・」

「別に悪いことをしているわけじゃないし良いと思うけどな僕は」

「・・・そう・・・だな。考えとくよ」


話しても別にいいと思うんだけどな。

山下さんって優しそうな子だったし意外と興味持って話に乗ってくれるんじゃないかな。有坂も変なところでカッコつけるからな。


「わ 悪い!変な空気にしちゃったな。あ、ほら向こうでコスプレイベントやってるみたいだから僕たちも行ってみようぜ!」

「お!マジか行こう!」


この時は有坂と山下さんの関係は深く考えずイベントを4人で楽しんだけど・・・



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「いや~楽しかったな」

「そうだな。新作ゲームも中々期待が持てそうだしな」


イベント会場を出た僕たちは、会場近くのファミレスで展示内容や戦利品となる冊子について語り合った。これも毎年のルーチンだ。


「大和はあの新作ゲーム随分気に入ってたみたいだったけど。買うのか?」

「あぁ多分な。夏休み以降はバイトして資金もいくらか溜まったからね」


そう。旅行資金やデート代は最終的に春姫と折半になった。最初は僕が支払うつもりだったんだけど春姫が中々納得してくれなくて。

でも・・・"ずっと一緒に居るなら将来のためにちゃんと大和も貯金して"とか言われちゃったからな。

思い出しただけで照れる。。。


「どうした大和?何だか顔赤いぞ」

「い いや何でもない。

 そ それよりさ係りの人が説明してくれてたと思うけど、あのゲームって僕らが小学校の頃に出たRPGの続編なんだよ」

「そういえば言ってたね。あのゲームのシステムは当時斬新だったよな」

「だろ? 僕さ、あのゲームを初めてやった時に凄く衝撃受けて"将来こういうの作りたい!"って思ったんだよね。それに今回の新作もその気持ちを後押ししてくれるくらい斬新なシステムやストーリーみたいだし凄く楽しみなんだ」

「確かに中々面白そうだったよな。

 でも大和は凄いよ。小さい頃の"ゲーム作りたい"って想いからプログラムを勉強して学校もそれを考慮しての選択だろ?

 僕なんか日々流されまくってるからね。お世辞抜きに尊敬するよ」

「渋沢・・・そんな大してことじゃないよ。色々と不器用なだけだよ」

「・・・まぁそういうことにしておくか。あ、そういえば栗平さんに頼まれたのは買えたのか?」

「もちろん!」

「渋沢・・・大和が栗平の頼みとか忘れるわけないだろ♪」

「ま 確かにそうだな」


楽しい語らいの時間は経つのも早く、夕方店内が混み始めてたところで僕らはファミレスを出て帰路についた。


そして家に帰ると当たり前の様に春姫がソファに座りテレビを見て寛いでいた。

父さん達が居ないのに春姫が家のリビングでに居るってのも何だか変な感じだよな。


「あ、大和おかえりなさい!楽しかった?」

「お陰様で。有坂とは会う機会も多かったけど渋沢や太田とは随分久しぶりだったから話も盛り上がったよ」

「良かったね♪ あ、頼んでた本買ってきてくれた?」

「あぁ 結構人気みたいで売り切れ寸前だったよ」

「わぁありがとう!早速読まなくちゃ♪

 あ、ご飯どうする?一応肉じゃが作って冷蔵庫に入れてあるけど」

「有坂達と食べてきたから今日はいいや。明日朝食べるよ」

「うん。中々上手くできたと思うから味わって食べなさいよ!」

「了解。でも春姫の料理はどれも美味しいよ」

「あ あたりまえでしょ!ありがたく思いなさいよね」

「はいはい♪」


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閑話その1 某作品では悪キャラの太田君や主役キャラの渋沢君達との1コマです。

閑話はもう1話(できれば今週中くらいで)投稿予定です。

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