第42話 晩夏

「夏休みも今日で終わりだね」

「そうだな」

「また明日から学校だね」

「そうだな」

「お腹空いたね」

「そうだな」

「・・・もう大和!ちゃんと話聞いてる?」


豪徳寺との練習試合で倒れた僕は医務室で少し休ませてもらった後、渋川さんが大事をとってタクシーを呼んでくれたので春姫と一緒に家まで送ってもらった。タクシーなんて随分乗るのは久しぶりだ。


帰宅した僕は少し疲れてはいたので部屋に入ってベッドに横になったわけなんだけど・・・"心配だから"と春姫も僕の部屋までついてきしまった。

そして今に至る。


「ちゃんと聞いてるよ。今年の夏は色々あったなぁ~ってちょっと考えてただけだよ」

「あ、、、そ そうね・・・色々あったよね。色々・・・・」


そう言いながら"色々"思い出したのか頬を赤くし目を背ける春姫。

うん。そういうこともあったしね。


「部活にバイト。豪徳寺との試合もだけどバイトもいい勉強になったし楽しかったな」

「バイトは私も初めてだったけど先輩達も優しかったし友達も増えたし楽しかったな。小春ちゃんもシフトが一緒になること多かったから学校以外で話しするようにもなれたし」


「大室さんか。確かに中学時代はクラス同じだったけど学校以外で会う程の付き合いってなかったもんな」

「うん。佐和や千歳とはよく遊んでたけど、高校に入ってからは小春ちゃんや若菜ちゃん、それにたまちゃんもカラオケとか買い物とかも何度か行ったんだよ」

「へぇ~ 良かったな沢山友達出来て」

「うん♪」


高校入りたての頃は春姫も強気に上から目線でクラスメイトに接して孤立してたって聞いてたしな。上辺だけじゃない本当の友達が出来たみたいで本当に良かった。


「それから春姫と行ったプールと夏祭り。2人きりで行くのは本当久しぶりだったよな。僕も何だか緊張しちゃったよ」

「大和緊張してたんだ♪ 私は凄く楽しかった。有坂君や若菜ちゃんとは何度も遊びに行ったよね。あの2人には本当ずいぶん助けられちゃったな」

「そうだな」


確かにな。有坂が居なかったら僕と春姫は今みたいな関係に戻れてなかったと思う。あいつには随分大きな借りが出来ちゃったのかもな。

この先、もしあいつらが困ることがあれば助けてあげたいな。

・・・でもまぁあいつら僕達より仲いいし喧嘩とかもしないか。


「そして2人で初めての旅行。・・・色々忘れられない思い出も沢山出来たよな」

「・・・・うん。また・・・一緒に旅行行こうね」

「そうだな。今度は冬に温泉とかスキーとか行こうか」

「うん♪」


あと少しで長かった夏休みも終わる。


「僕の中では今までの中で一番充実してた夏休みだった気がする」

「私も・・・大和と一緒で素敵な夏休みだったよ」




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一度僕は春姫に愛想をつかして絶縁した。


僕は彼女の事が嫌いなはず・・・・だった。


でも・・・・結局嫌いにはなれなかったみたいだ。

彼女が困っていることを有坂から聞いたとき僕は彼女の事が気になり自然と動いてしまった。

自分から"関わるな"とか言ったのに彼女を放っておくことが出来なかった。


そして春姫も変わった。

有坂や山下さんのおかげでもあると思うけど素直に僕に好意をもって接してくれるようになった。素直な春姫に戻ってくれた。


僕の事を好きだと言ってくれた人も居た。

僕にはもったいない様な優しくて素敵な女性だった。

彼女は僕が何処かで否定していた春姫への気持ちを教えてくれた。

そして僕は春姫を選んだ。


今僕はこうして春姫と一緒に居る。

幼馴染として、恋人として、その先はまだわからないけど出来ればその先もずっと一緒に居たいと考えている。



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「春姫・・・この先も僕とずっと一緒に居てくれるか?」

「ふぇ!?そ それってもしかしてプ プロポーズ!!」


あ・・・・確かにそう取れるセリフだなこれ。

でも・・・・僕の気持ちとしては間違えじゃない。


「・・・今すぐじゃないけど・・・そう思ってくれて構わないよ。

 いつか・・・ちゃんと自立して一人前の男になれたら・・・あらためてプロポーズはするつもりだけど・・・僕は春姫の事が好きなんだ。誰にも渡したくないしもう離れたくない」

「・・・ありがとう大和・・・うんずっと一緒だよ。私も大和とずっと一緒に居たい。私からもお願い。ずっと一緒に居てください」


少し目に涙を浮かべながら僕に抱きついてくる春姫。

春姫と見つめ合う。

そして自然と唇が重なる。


「春姫・・・・」

「大和・・・・」



僕は春姫の事が・・・・




*********************

本編はこれで最終話となります。

この後、閑話とエピローグ的な話を少し書いて完結となる予定です。

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