第37話 仕事
祭りも終わり夏休みも残すところあと少し。
夏休みの課題はほぼ終わったので後はバイトと部活。
そして・・・春姫との旅行を残すのみだ。
そんな今日は旅行のために始めたバイトの日だ。
蒸し暑い中電車で横川に向かい、駅から歩いて数分の場所にある雑居ビルへ。
このビルの1室が僕のバイト先だ。
「おはようございます」
「おぅ今日もよろしくな」
事務所のドアを開けて中に入ると眠たげな目で無精ひげを生やした吉村チーフがモニタを見たまま僕に挨拶を返してくれた。
あの感じ・・・多分家に帰らないで徹夜だな。
小さなソフトハウスで主にスマホ用のアプリ開発をしている会社なんだけど、一部大手メーカーの下請けとして市販アプリのモジュール開発なども行っている。
以前からバイトとして働いているという藤崎先輩の伝手で僕もアプリやゲームの動作テストと開発アシスタントとして働かせてもらっている。
好きなプログラムの勉強も出来て、最新のアプリやゲームを触れるうえにお給料も貰えると僕にとっては中々に魅力的な職場だ。
「そういえば鶴間って来週は休みだったよな?」
「はい。忙しいところ申し訳ないんですが夏休みも最後なので」
「まぁ、今のプログラムのテストも終盤だし鶴間が休んでも問題ないさ」
「ありがとうございます」
「それより・・・来週の休みって例の彼女さんと旅行に行くんだろ?」
「え!な なんで知ってるんですか?」
「ふふふ 俺の情報網を舐めるなよ?川野辺高校にも知り合い多いからな」
春姫が話してそうな人っていうと・・・結城先輩や渋川先輩か?
「まぁ彼女さんも意外と奥手らしいしみたいだし、ここは鶴間が男見せてリードしないとな!ま、休み明けは色々と報告な」
「は はぁ・・・・」
春姫・・・奥手とか言われてるし。
それに僕は先輩に報告しなくちゃならないのか?
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<栗平春姫視点>
「いらっしゃいませ!お二人様ですね。こちらにどうぞ」
川野辺駅前の喫茶店ラウム。
佐和の紹介で始めたアルバイトも始めてからもうじき1か月。
接客業は、最初の内は緊張したけど慣れてくると中々楽しく思えるようになってきた。
それに佐和だけじゃなく高校の先輩方も多くて職場の雰囲気も楽しいのよね。
「栗平さんも随分仕事慣れてきたね」
「あ、田辺先輩。お陰様で!」
「それに結構栗平さん目当てのお客さんも居るみたいだから売り上げにも貢献してるのかもな」
「そ そんなことないですよ!」
田辺先輩。
川野辺高校の2年生。つまり私の高校の先輩だ。
バスケ部のエースで学業もトップクラスという学内でも有名な人で女子のファンも多い。まさか一緒にバイトできるとは思わなかった。そういえば千歳からは羨ましがられたな。
「ねぇねぇそういえば、春姫ちゃんの彼氏さんって倉北学園に通ってるんでしょ?学校違うしバイトあんまり入れちゃうと会う時間とか大丈夫なの?今月結構バイトしてるみたいだしちょっと気になって」
「ありがとうございます小早川先輩。それは大丈夫です。・・・その・・・最近は毎日夕飯作りに通ってるので」
「ほぉ~春姫ちゃんって中々積極的なんだね♪」
そして小早川先輩。
女子バスケ部のエースで田辺先輩の恋人。
美人でちょっと知的な感じの素敵な先輩。
田辺先輩がシフトに入っていると結構は率でラウムに来て学校の勉強したり本を読んだりと田辺先輩と一緒の時間を過ごしている。
本当仲がいいんだよね。
「そ そんなこと・・・小早川先輩こそ田辺先輩といつも一緒で凄く仲いいじゃないですか!」
「そ!私ケンちゃんの事大好きだからね♪」
「お おい楓。後輩の前で恥ずかしいだろ」
噂には聞いてたけど小早川先輩って田辺先輩が絡むと何だかちょっと残念な感じになるのね。
「あ、でも夕飯を一緒に食べるのもいいけど折角の夏休みなんだから彼氏さんとの思い出作りもちゃんとしておいた方がいいよ」
「はい。実はその・・・夏休みの終わりに2人で泊りで旅行に行こうって話してて・・・バイトもその資金稼ぎなんです」
「ほぉ~やっぱり春姫ちゃん積極的じゃない!心配することなかったかな」
「ち 違います。旅行は大和が誘ってくれたわけで私からじゃ!」
「ふふ 大和君って言うんだ。仲いいんだね」
う~何だか余計な事言っちゃったかな。
今日はお店も暇だから小早川先輩も随分話しかけて来るし。
「はは 楓。そんなに栗平さんをからかうなよ。
でも その大和君?旅行に誘うとか中々頑張ったよね」
「え?」
「だってさ、普通のデートならともかく泊りの旅行だろ?泊りとなると彼女のご両親の了承も必要だろうし結構誘うの勇気いるぜ。俺だって楓を旅行に誘うときは結構緊張したもんな。断られたらどうしようとかね」
確かに私も誘われてびっくりはしたけど・・・そうだよね。
確かにお父さん達にも話さなくちゃならないし大和は勇気を出して誘ってくれたんだよね。
そう考えると今更ながらに嬉しいかな。
「え~そうだったの?私がケンちゃんの誘いを断るわけないでしょ♪」
「まぁあの頃はまだ再会して半年も経ってなかったしな」
「私はケンちゃんのお誘いならいつだって大歓迎だよ~」
「そうだな。またどこか一緒に行こうな」
「うん♪」
小早川先輩が田辺先輩とイチャイチャし始めたので、私はこっそりその場を抜け出した。
何だか私も早く大和に会いたくなってきちゃったな。
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