第36話 夏祭②
射的を楽しんだ僕達は、屋台で買ったタコ焼きを2人で食べながらお祭りのメイン会場になっている広場へと向かった。
「おぃひぃねタコ焼き」
「熱いから気を付けなよ」
去年の今頃はこうやって2人でお祭りに来るとか考えてもいなかったな。
タコ焼きを美味しそうに食べる春姫を見ていると、場内アナウンスで盆踊りの開始が告げられた。
盆踊りは、普段サッカー場として利用されている多目的広場で行われている。
「ねぇ大和 少し踊ってみない?小さい頃一緒に踊ったよね」
「え~!僕が踊りとか苦手なの知ってるだろ?」
「いいからいいから」
「ちょっと春姫~」
僕は春姫に引きずられる様に盆踊りの輪に連れていかれた。
・・・・リズム感が無いというと苦手なんだよな僕。
盆踊りの音楽が開始される中、僕と春姫は周りの見よう見まねで踊りを踊った。
浴衣を着て踊る春姫は凄く綺麗で・・・思わず見惚れてしまうほどだ。
それに比べて僕は・・・前に居るおじさんの真似をしようとしてるんだけど何だか不格好になっちゃうんだよね。
1曲目、2曲目と踊り、3曲目が始まるところで僕は春姫と目配せをして踊りの輪を抜け出した。
正直上手く踊れなかったけど、春姫と踊る盆踊りは結構楽しかった。
「ふぅ~疲れた」
「結構頑張ってたじゃん♪」
「あぁみんな見てるしな。結構真剣だったんだけど・・・あれが限界だ。。。」
「じゃ普段勉強見てもらってるし、今度は私がダンスレッスンでもしてあげようかしら?」
「ははは・・・お手柔らかに頼みます」
盆踊りの輪を抜けて夜店のある広場でそんな話をしていると
「大和、栗平!」
「有坂。それに山下さんも」
仲良さげに手を繋いだ有坂と山下さんに声を掛けられた。
有坂も山下さんも今日は浴衣姿だ。
「今年は2人でお祭り来たんだな。相変わらずお熱いことで♪」
「ちょ からかわないでよ有坂君。そういう有坂君だって山下さんと一緒じゃない!」
「僕たちは残念ながらこの後、栗田や鮎川たちと待ち合わせしてるんだよ。だからその前に2人でお参りに行ってきたところなんだ。
恋愛成就の神様だしお参りは若菜と2人で行きたかったからね。大和達もお参りに行くんだろ?それとももう行ったのかな?」
「え~と・・・私達は・・・」
「今から行くところだよ。な 春姫」
「・・・・だそうです。はい」
「忍君。お邪魔しちゃ悪いからそろそろ行こ」
「そうだな。じゃまたな!」
嘘は言ってない。
中々春姫に言い出せなかったけど今日はちゃんと天神様に春姫との事をお願いするつもりだったんだ。
そんな宣言をした後、有坂達を別れた僕たちは天神様に行くために参道を歩いていた。
参道はお祭り会場程ではないけど結構混雑していた。
そして・・・歩いてい人は大半がカップル。
どうもお参りに行く人は大半がカップルらしく、その幸せを祈っているとの事。
「何だかお参りに行くだけなのに照れるねこれ・・・あっ」
「ん?どうかした春姫」
「あそこ、天神様の方から歩いて来るカップルって渋川先輩と結城先輩じゃないかな?」
「あ、そうだな・・・毎回思うけどあの2人って美男美女っていうか本当お似合いだよな」
「うん。確か先輩達も幼馴染って言ってたよね・・・
・・・ねぇ大和 私達は周りから見るとどんな風に見えてるかな?」
「僕達?」
「うん・・・ちゃんとカップルに見えてるのかな?」
どんな風にか・・・あんまり考えたことなかったけど普通に恋人同士に見えてるんじゃないのかな?そういうことじゃないのかな?
「ほら、私達って小さい頃からいつも一緒だったじゃない。
だから・・・デートとかで一緒に居ても自然な感じだし時々周りにはどう見えてるのかなって。
有坂君や渋川先輩達って見るからに恋人同士って感じに見えたけど・・・」
なるほど、そういうことか。
確かに付き合う様にはなったけど、今までと大きく関係が変わったって感じでもないからな。僕としてももう少し関係を進めたいとは思ってるけど・・・
「・・・恋人同士には見えてるとは思うよ。有坂達も"お熱いね"って言ってたけど仲が良いカップルには見えてると思う」
「そ そうなのかな?」
「うん。ただ、僕としては春姫ともっと深い関係になりたいとは思ってる。だから旅行も誘ったんだ。あ、そ そのゴメン変な意味はないから」
なんだよ深い関係って・・・
それに変な意味は無いからって・・・
自分で言ってなんだけどストレートすぎだろ。
自爆したと思いつつ春姫の顔を覗き込むと顔を赤くしながらも僕の言葉に応えてくれた。
「そ そうだよね。一緒に泊りの旅行に行っちゃうんだよね私達・・・それにもっと深い関係って言うのは私も・・・その同じ気持ちだから・・・ゴメン変な事聞いちゃったね」
自爆にならなかった・・・最後の方は声も小さかったけど何だか嬉しいな。
春姫も2人の関係についてちゃんと考えてくれてたんだ。
「ありがとう春姫。天神様にもちゃんとお願いしような」
「うん」
その後天神様でお参りを済ませ参道を歩いていると祭りの最後を告げるアナウンスと祭りを締める最終プログラムの花火が始まった。
「綺麗だね大和」
「あぁ」
僕達は参道の途中で立ち止まり2人で夜空を見上げた。
夏の夜空に咲く大輪の花。
来年も再来年もその先もずっと・・・春姫と一緒にこの花火を楽しみたいな。
*************
補足
話としては"7年目の約束"の86話の辺りです。
大和達と別れた有坂と山下はその後クラスの仲間と合流し田辺達と会う感じです。
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