第34話 関係

プールに行った後も僕と春姫は部活にバイトに勉強にと夏休みを楽しんでいた。


春姫は喫茶店のバイトをきっかけに同じ高校の先輩や他校の生徒など友達も増えたみたいで毎日忙しくも楽しそうにしている。

そのせいか最近の春姫は以前よりも明るくなったようにも見える。

今日もバイト先で知り合った森下学園の友達と買い物に行くとか言ってたな。


僕も藤崎先輩の伝手で横川にあるソフトハウスで勉強も兼ねてプログラミングアシスタントのバイトを始めていた。

春姫と旅行に行くにしても先立つものが無いとね。

でもお金以上にここでのバイトは凄く勉強になっていて毎日が本当楽しい。

藤崎先輩も同じくバイトをしているので色々と教えてもらえるし、これでお給料も貰えるんだからね。


ちなみに藤崎先輩と阿部部長はテニスのダブルスで全国大会に駒を進めたんだけど2回戦で敗退となってしまった。

善戦はしたんだけどね・・・当然のことながら悔しそうではあったけど全国大会だし僕からしたら2回戦でも十分に凄いと思う。本当尊敬する先輩達だ。


先輩達が出場する大会はこれが最後だったのでテニス部の部長は小久保先輩に引き継がれたんだけど練習には当面参加してくれるらしい。

先輩達曰く大会を気にしなくていい分、皆の練習に集中できるとの事・・・・

ありがたい話だけど今も練習厳しいので正直ちょっと怖いところだ。


そんなことを思いながらベッドに寝ころんで本を読んでいると


「ただいまぁ~」


と玄関から春姫の声が聞こえた。

僕は部屋を出て玄関に向かいながら声の主に話しかけた。


「お帰り・・・って春姫。ここ僕の家だよ」

「細かいことは気にしないの。それよりこれお土産。ケーキ買ってきたから一緒に食べよ♪」

「ありがとう。じゃ紅茶でも淹れるね」


細かくない気もするけど・・・だって僕の家を自分の家の様に・・・

そういえば最近春姫って母さんと仲いいよな。

この間も電話とかしてたし僕よりも会話多いかも。

まぁ悪いことじゃないけど。


「どうしたの?早く食べよ」

「そうだな。そういえば、今日は友達と買い物だったんだろ?」


と僕は紅茶を淹れたティーカップを春姫に出しながらたずねた。


「うん。前に話したバイト先の同僚でね夏川さんって言うの。

 その子が横川に素敵なカフェが出来たからって一緒に行ってきたんだ。

 森下学園のテニス部の子なんだけど凄く可愛いのよ。大和にも今度紹介してあげるけど・・・浮気しちゃだめだからね!」

「はは 大丈夫だよ。僕が好きなのは春姫だけだよ」

「・・・ま 真顔で軽く言わないでよ!恥ずかしいじゃない」

「でも 本当の気持ちだから」

「も もう!わかったから」


素直な気持ち言っただけなんだけどな。

そんなに照れなくても。


「でも、森下学園に通ってるなら川北中卒業かな?だったら藤沢とかは知ってる子かも」

「うん。川北中だって言ってたよ。藤沢君って大和のチームメイトだよね。確かに中学同じなら知ってるかもね」


今度聞いてみるかな。

可愛い子だって言うし・・・あいつの事だから知ってるだろな。


僕は春姫が買ってきてくれたケーキを食べつつ部屋から持ってきたノートパソコンを開き春姫に見せた。


「この間話した旅行の件だけど春姫行きたいところとかある?あんまり遠くは金銭的に難しいと思うんだけど」

「と 泊りのだよね・・・」

「そ。伊豆方面は海と温泉があるから候補地をいくつか選んだんだけど、山梨方面で果物狩りも捨てがたいんだよね」

「・・・・・海」

「え?」

「海が見えるホテルとか・・・泊まってみたいな・・・2人で泊るの初めてだし」


海が見えるか・・・

そうだよな。僕と春姫の2人で外泊するのって初めてだもんな。

行先ばっかり考えてたけど、泊まるなら雰囲気のいい部屋とかじゃないとな。


「じゃ じゃあさ このホテルなんてどうかな?」


僕はオーシャンビュー他いくつかのキーワードを入れてホテルを検索。

結果、伊豆のリゾートホテルが数件ヒットした。

当初予定していたよりは少し宿泊費用も上がってしまうけど設備や景色は格段に上だ。で


「わぁ素敵!!」

「じゃあ この中から良さそうなところ選ぼうか」

「うん!何だか楽しみだね。

 あ、この間買った水着。ワンピースの方はまだ着てないし持ってくね」


その後、僕と春姫はホテルだけでなく観光施設含め色々と検索を行った。

折角行くんだし観光も楽しみたいからね。


「あ、このホテルは温泉あるよ。それに近くに灯台とか観光船もあるよ」

「こっちは温泉だけじゃなくプールもあるな」


こうやって旅行先や観光地を調べるのって楽しいよな。

僕と春姫は時間を忘れ検索を楽しんだ。


「あ、もうこんな時間なんだ。夕飯作るね♪」

「あれ?今日は春姫が作ってくれるの?」


いつの間にか遅い時間になっていたけど、春姫が夕飯作ってくれるのか?


「うん。昨日おばさんから電話があって"よろしく"って」

「そうなんだ。ありがとな」

「気にしないで。私も・・・大和に食事作れるの嬉しいから」

「お おぅ」


エプロンを着けてキッチンで夕飯を作ってくれている春姫。

そんな後姿を見ていると何だか愛おしく感じる。


僕は・・・やっぱり春姫の事が好きなんだな。


******************

この話で2章が終わりとなります。

やや短めの3章(最終章)にて本作も完結予定です。

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