第31話 休日

「あ、大和。そこダメ!」

「でも・・・ここが一番いいんだろ?」

「・・・ズルいよ。私初めてなのに・・・」

「僕だって・・・初めてだよ」

「あ!」




ゲームやってるだけですよ・・・


夏休みに入り僕もテニス部やコンピュータ部の活動で忙しい日々を送っているわけだけど今日は久々の完全オフ。

春姫もテニス倶楽部の他に下北さんの紹介で駅前の喫茶店でバイトを始めたらしいんだけど今日はどちらも休みということで、こうして僕の家でゲームを楽しんでるんだ。外は暑いしね。


いわゆる"おうちデート"ってやつなんだけど・・・僕と春姫の場合は小さい頃からお互いの部屋で過ごす時間も多かった(主に僕の部屋だけど)こともあり正直なところ甘い雰囲気というか緊張感の様なものはあんまり無かったりする。


今も春姫は僕のベッドに寝転がりながらゲームのコントローラーを握っている。

完全にリラックスモードだ。

"あ、ベッドの上でお菓子を食べるなって・・・"


「もぉ。私このゲーム初めてって言ったのに・・・大和ズルいよ」

「そんなこと言われても僕だってやるの初めてだよ。

 春姫こそ下北さんに借りてきたってことはやったことあるんじゃないのか?そもそも操作方法知ってたし」

「う・・・ま まぁ1回だけ佐和の家で・・・そのみんなで」


やっぱり・・・春姫って嘘つくの下手だからな。

でも、僕もこのゲームは初めてたけど似たような陣取りゲームはやったことあるから何となくコツはわかるんだよね。言わないけど♪


「と とにかくもう1回戦やるわよ!負けたままとか嫌だからね!」

「はは 相変わらず負けず嫌いだな。よ~し次も勝っちゃおうかなぁ~」

「くっ何だか悔しい・・・」


その後、3回戦ほどゲームを楽しみ春姫が1勝して気分が良くなったところで終了した。別に手を抜いてあげたわけじゃないけど春姫も何度かやって攻略方法というかパターンを読んできたんだよね。

流石というか・・・・次やっても勝てるかわからないな。


「暑いしお昼はそうめんでいい?」

「うん。いいよ。それにしても暑いねぇ~」


部屋の中はエアコンを付けているけど廊下に出ると熱気を感じる。

本当最近の夏はエアコン無いと辛いよな。。。


リビングのエアコンを付け、テレビをつける。

ちょうど地元テレビ局の番組で川野辺・横川地区の特集をやっていた。

アナウンサーが、夏休みにお勧めのレジャー施設ということでリバーランドや水族園、今度有坂達と行くプールなどを紹介している。


「あ、そこって今度行くプールだよね」

「うん。そうだね。僕も行ったことないけど結構大きいんだな」


アナウンサーの説明によるとウォータースライダーが付いた大型プールに子供に人気の流れるプール。それにカップルにもお勧めということで水着で入れる温浴施設などもあるそうだ。


「若菜ちゃんがウォータースライダーが凄いとか言ってたよね」

「あ、女子アナの人が中継してるのがそうじゃない?」

「そうだね・・・って結構な高さからなのね・・・」


そういえば春姫って高いところも苦手なんだっけ・・・

と、ちょうどテレビの中ではカップルが楽しそうに悲鳴というか歓声というか大声を上げながらにスライダーを降りていく様子が映し出された。


「大丈夫だよ。ほらカップルで一緒に滑れるみたいだし僕と一緒だから」

「え、あ、あの・・・うん。

 助かるけど・・・結構密着するん・・・だね」


確かにテレビのカップルは女性を後ろから抱きしめる様な感じで滑っていったな。お互い水着の状態で春姫を後ろから抱きしめる・・・

あんまり意識して見てなかったけど結構あの体勢は恥ずかしいかもな。


「で でもさ、僕たちも恋人同士なんだし・・・さっきのカップルみたいなこともいいんじゃないかな?それとも春姫は嫌?」

「い 嫌じゃないけど・・・そうだよね。私達もう恋人同士なんだもんね。それにきっと有坂や若菜ちゃんも2人で滑るんだよね」

「そうそう。僕たちも有坂達に負けてられないだろ」

「うん。そう思うと何だかちょっと楽しみね♪」

「だね」


プールは昨日有坂からメールがあって、次の土曜日に行くことになった。

水着も買いに行ったし後は当日を待つばかりな感じだ。


「そ それとさ春姫。今年はお祭り行くよな?」

「え?もしかして川野辺天神祭り?」

「うん。最近"2人"では行ってなかっただろ?」

「そうだね・・今年は2人で行こうか。うん。私浴衣着るね」


去年までは春姫を中心に中学のテニス部メンバやクラスの陽キャメンバでお祭りを楽しむために行くことが多かった。

でも、最近の川野辺天神は縁結び、恋愛成就の天神様なんて呼ばれている。

地元の僕らからすれば行きなれた神社でしかないんだけど、出来れば春姫と2人でお参りに行きたかったんだよね。


「春姫の浴衣か楽しみだな。あ、僕も浴衣着てこうかな」

「うん。そうしなよ。今度一緒に買いに行こ!」

「そうだね。お揃いの柄とかもいいよね」

「う うん。その・・・いいと思う」


僕と春姫の夏休み。

まだまだ始まったばかりだけど色々と楽しみだな。








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