第28話 再戦②

「でさぁ、先輩達の練習きついんだ・・・よっ」

「ふ~ん。練習頑張ってるんだね。お疲れ様・・・はっ」

「でもさ、力はついてる気はするんだよ・・・ねっ」

「わっ」


僕のスマッシュが春姫のコートに決まった。

今日は日曜日。僕と春姫は渋川さんのテニスクラブで一緒に汗を流していた。

恋人同士でテニス・・・っていうとデート感あるけど結構ガチに打ち合ってる。

何だか色気のない話だけど川野辺との練習試合も近い中、春姫が練習相手に手を上げてくれたんだ。

何だか春姫が僕のためにって思うと嬉しい。


「確かに全体的に打球の威力は上がってる。今のも間に合ったとしても私じゃ打ち返せなかったかも・・・」

「そっか。豪徳寺と比べてだと・・・・まだ足りないかな?」

「う~ん。言いにくいけど多分豪徳寺君の方が威力あると思う」

「やっぱり・・・」

「この間さ、若菜ちゃんとテニス部の練習を見に行ったんだけどやっぱり豪徳寺君は別格だったんだよね。有坂もストレート負けしてたし何回か打ち返してはいたけど結構大変そうだったもん。練習不足だったとはいえよくこの間の試合で勝てたよね」

「・・・だよね。そういう話聞くと自分でも信じられないよ。

 でもまぁやっぱりそう簡単には勝てないよな」

「うん。マンガみたいに必殺技とかあればいいのにね♪」

「まったくだよ。。。」


有坂も全然なのか・・・。

さて、どうしたもんか。


「今のままで大丈夫じゃないか?」

「あ、結城さん」

「まぁ自分の後輩との勝負についてだから話ずらいところではあるけど、豪徳寺だって完璧じゃないだろ?

 同じ1年の中ではダントツかもしれないけど鶴間君にしても有坂にしても付け入る隙はあると思うんだよね」

「付け入る隙ですか・・・」

「そ。と言ってもあいつパワーあるから打球を打ち返せるのは最低条件だけどね」

「確かに打ち返せなきゃどうにもならないですね」

「そのあたりは藤崎さん達が考えてると思うぜ。筋トレや藤崎さん達との練習でだいぶ力はついてるはずだからな。

 まぁあの人たちは鶴間君が思ってるよりもずっと凄い人だ。信じてれば大丈夫さ」

「はい。ありがとうございます!」


藤崎先輩や阿部部長の事を信用してないわけじゃないんだけど、やっぱり不安なんだよな・・・付け入る隙と言われても思い付かないし。

小久保先輩に言われた課題もまだまだだしな。もっとも親睦試合も来週だし練習するしかないわけだけど。。。


「私も休みの日の練習は付き合ってあげるからさ。

 今はとりあえずお昼行こ。お腹すいちゃった」

「え、もうそんな時間か。

 結城さんはお昼どうします?」

「ん?俺は麻友と行くから気にしなくていいぞ。

 っていうか折角2人きりなのに栗平に悪いしな♪」

「そ そんな事 もう結城先輩!」


春姫も結城さんや渋川さんには随分可愛がられてるんだな。

友達も増えてきたって言ってたけどちょっと安心だ。


「はは じゃ2人きりで行ってきます。

 春姫、バスターミナルのところにある中華料理屋行かないか?友達がオススメって言ってたんだけどさ」

「え?中華。うん行く行く♪」

「おっ それって龍園じゃないか?結構この辺りじゃ美味しいって有名だぞ」

「そうなんですか!それは期待大ですね!」


ということで僕と春姫は川北バスターミナルまで歩き藤沢お勧めのお店"龍園"にやってきた。いわゆる町の中華屋さん的なお店だ。

案内された席に座り店内を見ると日曜日の昼時ということもあり店内は結構な賑わいだ。


「結構混んでるね」

「本当だね。春姫は何食べる?小籠包とか点心系は絶対食べとけって言われたんだけど」

「美味しそうで目移りしちゃうけど・・・エビチリかなぁ。あ、でも回鍋肉も美味しそう・・・」

「春姫ってエビ好きだもんね。じゃさ、僕が回鍋肉頼むからシェアして食べない?」

「うん!それいいね」


注文も決まり春姫と雑談をしていると目の前をデカ盛?の炒飯が運ばれていった。

炒飯の横には厚切りの角煮と野菜たっぷりの餡も掛かって普通に美味しそうだけど量は多分3,4人前くらいありそうだ。


「凄いなこの店。ああいうデカ盛メニューもあるんだな」

「美味しそうだけどあんな大盛どんな人が食べるのかな?」


と運ばれた先のテーブルを見ると・・・・


「って豪徳寺?」


思わず声を上げてしまった。

料理の運ばれた先には良く知った男が座っていた。


「ん?誰って・・・お前 鶴間!それに栗平?何でこんなところに!」

「いや、僕たちは普通に昼飯食べに来ただけなんだけど・・・」

「え?あ、まぁそうか。そうだよな。食堂だもんな。うん。美味いぞこの店」


「あ、あぁ。ところで、それ・・・もしかして一人で食べるの?」

「ふん。これ位余裕だぜ」


凄いな胃袋も規格外なのか。

ん?どうしたんだ急に真面目な顔して。


「その・・・この間は悪かったな」

「え?どうしたんだよ急に。」

「いやな、この間の親睦試合の時、鶴間には随分偉そうな態度とってからよ。

 挙句試合には負けたし、次会ったら謝ろうと思ってたんだ。そにれ藤沢達にも酷いこと言ったからな。今度謝るつもりだ」

「そ そうか・・・」


有坂から真面目に練習するようになったとは聞いてたけど性格まで変わったのか?普通にいい奴になってるじゃないか。


「来週・・・再戦できるよな?今度は負けないからな」

「あぁ 僕だって」


豪徳寺も再戦を楽しみにしてくれてるんだな。

それなら、尚の事失礼なプレイは出来ない。練習頑張らないと。


その後、僕と春姫は頼んでいたエビチリと回鍋肉、それに小籠包と餃子を美味しくいただいたんだけど・・・僕たちが食べ終わる頃には豪徳寺もあのデカ盛をほぼ完食していた。

食事の量とスピードに関しては完敗だな。。。。

ちなみに家がこの近所で良く食べに来るらしい。

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