第27話 再戦①

「鶴間 試験どうだった?」

「ん?まぁ結構できたと思うよ」

「そうだよな・・・お前って何気に成績は学年上位なんだよな・・・」

「だよな。テニスも上手くて成績もいいんだもんな。モテるのも頷けるよ」


いやいや藤沢、秦野よ全然そんなことないからな。

結構僕も勉強とか筋トレとか頑張ってるからな。それにモテはしないぞ。


「そんなことないよ。それにテニスは藤沢や秦野だって僕と大差ないだろ?」

「まぁ勝率は五分五分かもしれないけどさ。なんていう鶴間って勝負強いんだよな」

「そうかなぁ」

「絶対そうだ。とにかく追試は大丈夫だと思うけど俺達にも今度勉強教えてくれよな」

「ああ、それくらいならいつでもOKだよ」

「あ、出来れば可愛い女の子たちも♪」

「それは駄目・・・」(無茶言うなよ藤沢・・・)


川野辺高校の期末試験に数日遅れて倉北高校でも期末試験が行われた。

今日はその最終日だった。

僕は・・・まぁそこそこ出来た感じだ。


ちなみに約束していた通り春姫とも2人きりで勉強会なんてこともしてみた。

2人で勉強をしたことは過去に何度もあったけど"恋人"ってことを宣言してから2人きりで"僕の部屋"っていうこともあり正直緊張した。

僕も一応男だし春姫は初恋の女の子であり恋人だ。

正直な事を言えば色々と春姫で妄想もしたことはあるし・・・・僕から踏み出さないと駄目なんだよなとか変に意識もしたりしてしまったけど、同時に今日は勉強会なんだとか春姫を大切にしたいとかいう思いもあり結局最後まで理性を保ち乗り切った。

ただ、春姫も意識はしていたようで何だか終始挙動が怪しかった。


試験も終わったし、今年の夏は有坂が言ってたように僕も春姫と思い出を作らないとな。


「そういえば鶴間は今日部活行くのか?」

「ん?一応顔出すよ。先輩達にはお世話になってるし練習の手伝いだけでもしないとな」

「そっか。俺はちょっと今日用事があって・・悪いな」

「いや本当は今日まで部活は休みなんだから気にしなくていいんじゃないか?」


夏の大会。

僕達倉北学園も当然エントリーはしたけど、残念ながら団体戦は2回戦敗退。

阿部先輩と藤崎先輩のダブルスペアはストレート勝ちで、2年の小久保先輩もシングルスでストレート勝ちしたものの他が続けなかったんだよね。

ただ、先輩方は個人戦で勝ち進み、小久保先輩は決勝で敗退。阿部先輩と藤崎先輩はなんと地区予選で優勝して全国に駒を進めていた。

本当、凄い人達だったんだな。

でも、この大会が終われば3年の先輩達は引退。小久保先輩以外はまだ大会で1勝もできてないんだよね。僕ら1年も今以上に頑張らないと2回戦どころか初戦敗退になってしまう可能性もある・・・


ちなみに有坂達の川野辺高校も団体戦は地区予選の3回戦で敗退した。

そして・・・豪徳寺は1年生ながらシングルス個人戦に出場し準決勝までいった。

そんな男にライバル視されてしまった僕は結構辛い。

でも、やるからには勝ちたい・・・


なお、全国大会は来週末から千葉で開催ということで僕たちも学校から皆で応援に行く予定だ。


「お疲れ様です!」

「おぅ鶴間。今日まで部活動は休みだろ?」

「はい。でも先輩達はまだ大会がありますし、球拾いくらいなら手伝えるかなって」

「泣かせるねぇ、俺達のために協力してくれるとは・・・」

「阿部。お前いい奴スカウトしてきたな」

「全くだ。本当に逸材だったかもしれないな」


「ところで鶴間。この間の豪徳寺のシングルスの試合見たか?」

「は はい・・・」

「ヤバいぞあいつ。1年ってことで体が出来てなかったのかもしれないが、準決勝もスタミナ切れしなければ勝ててたはずだ。1年ってレベルじゃない」

「鶴間はあいつに勝ちたいんだよな」

「はい」


「そっか・・・ってことで鶴間。いつもの様にそっちのコートに入れ。俺達と2対1の試合すんぞ」

「え?先輩達の練習ですし僕は球拾いじゃ?」

「いやお前は練習相手だ。俺達はダブルスのコンビネーションの練習をするからトレーニングになる。それにお前は2対1で格上の俺達からのボールを受けるんだ。いつもやってる練習だがレベルアップにはつながるはずだ。一石二鳥だろ?」

「はい。 よろしくお願いします!」


先輩達は1つ1つのコンビネーションを確かめる様にアイコンタクトを取りながら僕の打つボールは打ち返してくる。

結構本気できわどいところを狙ってるつもりなんだけど、あれだけ余裕で返されると結構ショックだ。

でも・・・豪徳寺もきっと先輩達に近いレベルなんだろうな。

先輩達を打ち崩せるレベルにならないと豪徳寺には勝てない。


結局この後3セット行われたが僕は1セットも取ることが出来なかった。

そして、僕は疲れてボロボロなのに先輩達まだまだ余裕ありそうだし・・・

流石だよな。もっと頑張らないと。


「あれ?鶴間も来てたのか?」


と部室の方を見ると2年の小久保先輩と2年ダブルスの白石先輩、西野先輩が向かってくるところだった。

どうも先輩達も部長たちの練習に付き合うために来たようだ。


「おっ来たな。じゃあ白石と西野は柔軟したら俺達の練習に付き合ってくれ。小久保は悪いが鶴間の相手してやってもらえるか?」

「え!僕が小久保先輩と?」

「そうだ。小久保はこの部では一番のシングルスプレイヤーだ。俺達との特訓の成果を試すには最高の相手だろ」

「でも・・・」

「鶴間。お前と先輩達の練習は見てたしお前の実力が上がってるのもわかる、ただ俺はそんな簡単には負けないぜ。それとも俺じゃ役不足か」

「と とんでもないです。よろしくお願いします!」


最近、部活に来るといつも先輩達と練習してたから普通のシングルス久々だ。

でも・・・小久保先輩はシングルスで決勝まで行ったんだ。

豪徳寺とは別ブロックだったけど豪徳寺と同等かそれ以上の実力だ。

先輩に勝てなければ豪徳寺にも。


僕は疲れた体を気力で奮い立たせコートに入った。


「よろしくお願いします!」

「いくぞ!」


先輩との3セットマッチ。

何とか1セットは取れたけど2-1で負けた。

何度かラリーを続けられる場面もあったけど力で負けていた。

それに先輩はボールコントロールも見事だった。

部長たちもボールコントロールは見事だったけど遜色ないレベルだ。

今の僕はここまで正確なコントロールは出来て無い・・・


「ふぅ流石部長たちが目を掛けてるだけの事はあるな。1セット取られるとは思わなかったぜ。ただ・・・自分の欠点とかわかったか?」

「はい。ボールの重さとコントロールですね」

「そうだ。豪徳寺の奴は俺の後輩だったんだが、ボールコントロールが上手くてな。それだけで中学時代は大会とか優勝してたんだ。

 ただ、川野辺に入って筋力もついてボールのスピードや重さも上がった。正直俺も今試合したら勝てるかわからん」

「そう・・・ですか」

「そう暗くなるな。俺や部長たちに1勝出来る様になればあいつともいい勝負できると思うからさ」


先輩それって・・・結構難易度高いんですが・・・

結局この日は日が暮れるまで先輩達とボールを打ち合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る