第26話 恋人

思わぬ形で両親たちから春姫との付き合いを祝福された翌日。

学校での騒動も試験が近かったこともあってか1日で収束し今日は平穏な1日を過ごすことが出来た。


そして放課後。本来であればコンピューター部の日なんだけど、来週から期末試験ということで部活も今日からはしばらく休み。

帰宅して本来は勉強しなくてはいけないはずなのに僕は今春姫や有坂と川野辺駅前の喫茶店に来ていた。


「悪いな大和 呼び出しちゃって」

「いや全然構わないよ。どうせ帰り道だしね」


僕の横には春姫が座り、その向かいの席には有坂と彼女の山下さんが並んで座っている。僕と有坂はコーヒー、春姫と山下さんは紅茶を頼んで飲んでるんだけど春姫と山下さんは何やらケーキも一緒に頼んで美味しそうに食べている。ちょっと美味しそうだな。


「でだ、来てもらったのは夏休みの計画について話がしたかったからなんだ」

「夏休み?」

「そうだ!夏休みは恋人同士の楽しいイベントがいっぱいだ!近場で言えば川野辺天神の夏祭りや花火大会もあるしリバーランドでも夏イベントを毎年開催している。それに・・・プールや海水浴って一大イベントもある!

大和と栗平も恋人同士になったわけだしそういうのにも行くべきだと思うんだ」

「あ、ああ 確かにそうかもしれないな」

「わかってくれて嬉しいよ大和。で、前置きが長くなったけどここに去年リバーランドの近くにオープンした市民プールの入場券が4枚ある。若菜と行く予定なんだけど大和と栗平もよかったら一緒に行かないか?」

「え?僕たちも」

「ああ。勉強会とか色々と世話になったしお礼も兼ねてと思ってな」

「何だか悪いなぁ」

「遠慮するなって」

「そうか?じゃありがたくいただくよ。春姫も良いだろ?」


と春姫を見ると気持ち顔が引きつっていた・・・あっそういえば春姫って


「だ 大丈夫だよ。泳げなくたってプールは楽しいから」

「な何言ってるのよ大和。わ わたしが泳げないわけないじゃない。ちょ ちょっとだけ泳ぐのが苦手なだけで・・・」

「あ、そうか栗平って・・・」

「大丈夫ですよ栗平さん。私も泳ぐの苦手ですから。それにウォータースライダーとかもあって凄く楽しそうですよ♪」

「も もちろん行くわよ。大和とプールとか行ったことないしむしろ楽しみなくらいよ!」

「よかった~ 今から楽しみです!」


山下さんナイスフォローだ!

春姫ってスポーツ万能だったけど水泳だけは何故か上達しなかったんだよな。


「あ、でも・・・」

「ん?どうした春姫?」

「私・・・プールとか行かないから水着が・・・」

「あ、じゃあ私も忍君と今度買いに行く約束してるので、みんなで買いに行きましょうよ。それなら鶴間さんが春姫さんの水着選んであげられますし」

「え!僕が春姫の水着を!」

「彼氏として栗平に似合うの選んでやらないとな」


僕が春姫の水着を?

僕そういうのセンス無いからな・・・春姫も嫌がるんじゃ


「そ その・・・大和。可愛いの選んでよね」

「え?僕が選ぶのでいいの?」

「わ 私も大和が可愛いって言ってくれる様な水着を着たいし・・・」

「う うん頑張るよ!」


なんだか水着を選んであげるとか彼氏っぽいよな。

何だか夏休みが楽しみになってきたぞ。


「いいねぇラブラブだねぇ」

「私達だって負けてないでしょ忍君」

「だよねぇ若菜」


・・・有坂も何だか山下さんと付き合う様になって以前より態度が柔らかくなったというか随分変わったよな。


でも、今回は本当有坂に感謝だな。

春姫は水泳苦手だから僕だけだったらプールとか絶対に誘わなかったもんな。

でも・・・・


「夏休み楽しみになってきたけど、その前に期末試験をクリアしないとな」

「うっ急に現実に戻すなよ」

「だけど、点数悪いと補習とかあるだろ?」

「そうだな。川野辺はそのあたり結構厳しいから成績が悪いと部活も制限されちまうんだよな」

「まぁ春姫はもちろんだけど、有坂も山下さんもこの間勉強会した感じだと、それなりに問題も解けてたし大丈夫だとは思うんだけど」

「そう言ってもらえると嬉しいけど、油断しないでちゃんと復習はやっとくよ」

「そうだな。楽しい夏休みが待ってるんだから頑張らないとな」


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喫茶店入り口で有坂達と別れた僕と春姫は、僕の家に向かった歩いていた。

昨日はお互いの両親に交際を祝福してもらったけど、相変わらず仕事が忙しいことには変わりなく・・・今日もまた2人で夕飯だ。


でも、僕も春姫も両親が自分たちに無関心では無かったことが何だか嬉しかった。正直仕事ばかりで自分達にはあんまり興味が無いと思っていたから。


「今日は何食べたい?」

「春姫が作ってくれる料理なら何でも美味しいからなぁ~」

「もうそういうのが一番困るのよ。何作ればいいかわからないじゃない」

「そうだなぁ。じゃ確か豚肉があったから生姜焼きとか出来る」

「うん。大丈夫だよ。作るから待っててね♪」


エプロンを着けて僕が頼んだ料理を作る春姫。

今思うと最近は勉強会の日以外もうちにきて料理作ってくれてるよな。

もちろん春姫と一緒に居るのは嬉しいし2人で食べる食事の方が美味しくも感じる。もしかしたら春姫も1人の夕飯は寂しかったのかもな。


僕が着替えてリビングに戻ってくるとテーブルに春姫が料理を並べているところだった。


「出来たよ~」

「あぁありがとう。凄く美味しそうだ」

「「いただきま~す」」

「美味しい!!」

「ほんと!よかった」


満面の笑みを返してくれる春姫。

やっぱり春姫が作る料理はおいしいなぁ。

と楽しく食事をしていると


「「ただいまぁ~」」


と親父達が帰ってきた。


「おっ春姫ちゃん来てるのかな?」

「おかえり。あれ、父さん達帰りが遅いんじゃなかったの?」

「その予定だったんだけどな。必要な実験材料の納品が明日になっちまったから帰ってきたんだよ」


春姫の両親たちは、まだ残ってるらしいけど親父達は居てもやることが無いと帰ってきたらしい。


「あ、あのおじさん達の分も作っておいたんですが食べますか?」

「え?私達のぶんもあるの?助かるわぁ~。

 それにしてもあなた達そうやって食事してると新婚さんみたいよね。

 本当、春姫ちゃんなら今すぐにでもうちの嫁に来て欲しい位なんだけど。大和も春姫ちゃんをしっかり捕まえておきなさいよ!」

「う うん」


母さん頼むよ・・・春姫がメッチャ照れてるんだけど・・・

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