第25話 祝福

「鶴間!聞いたぞ。やっぱり前に校門のところ来てた美少女と付き合ってんだって?」


翌日、予想通りというか教室に入るとクラスメイト達から詰め寄られた。


「と とりあえず落ち着け藤沢! 校門のところ来てた美少女って・・・あ、もしかして春姫の事か?」

「うゎ春姫とか・・・名前呼びかよ!それに秦野の話しじゃ昨日は他にもお前んちにかわいい子がいっぱい来てたらしいじゃないか」


え~と、、、船橋さんと下北さんかな。確かにあの2人って目立つよな・・・


「あの2人は川野中の頃に勉強を見てあげてたんだよ。今回も試験前だから教えて欲しいって頼まれて。ただの友達だしそれ以上の関係じゃないよ。それに女子だけじゃなくて男も来てたぞ。ほら藤沢も知ってるだろ?川野辺テニス部の有坂とか」

 

別に女の子だけを家に呼んだわけじゃないぞ。秦野だって居たし。


「でも春姫ちゃんって子とは付き合ってるんだろ?」

「うん。それはまぁこの間・・・その告白して」

「「おお!!」」


何?そこ驚くところなのか?


「鶴間、あんな可愛い子にに告白したのか!おとなしそうな顔してやるなぁ!」

「あの子メチャ可愛かったもんな~ 羨ましいな~ っていうか勇気あるな!」

「え、あ、どうも・・・」


何だかわからないけど、とりあえず春姫が可愛いとか褒められたのは悪い気はしないな。


「とりあえずさ、俺にも可愛い子紹介してくれよ!」

「え?あ、ああ・・・」


でも・・・これが男子校か。確かに女の子との接点ないもんな・・・


-----------------------

そして放課後。

今日はテニス部の活動日だ。

着替えてコートに入り、軽い柔軟の後でいつもの様に先輩達のところに行くと


「鶴間。お前最近モテモテらしいじゃねえか。俺達に特訓頼んでおきながら随分といい身分だなぁ」

「へ?」


と藤崎先輩に詰め寄られた。どうやら先輩達にも色々と話が流れているらしい。

いやいや・・・何か色々と誤解されてるみたいだし勘弁してよ。。。


「何か誤解されるような伝わり方してるみたいですが、中学の時の同級生と試験が近いから勉強会していただけですよ。女の子だけじゃなくて男も居ましたし。

 なぁ秦野。お前も参加してたもんな」

「え?あぁ確かに川野辺高校の有坂も来てたな」


軽い気持ちでクラスで話したら予想以上に話が大きくなってしまったらしく秦野にはさっき謝罪された。自分のせいで迷惑かけたって本気で落ち込んでいて何だか僕の方が悪く感じてしまった。

秦野自身は、あの集まりでもちゃんと勉強していたし空いた時間も有坂とテニスについて語り合ってたりと根が真面目なんだよな。


「ふ~ん。勉強会か。そういうことなら構わないというか、むしろしっかり勉強していい点取れよって感じなんだけど、川野辺高校との練習試合も近いんだ。それ程余裕がないってことは意識しておくんだぞ」

「はい。今のままじゃ豪徳寺にはまだ追いついてないですよね。頑張りますので練習よろしくお願いします」

「おぅ!任された!ってことで今日の筋トレと素振りはいつもの倍な」

「は はい・・・」


構わないとかいいつつ、絶対気にしてるでしょ先輩・・・


「ん?なんか言ったか?」

「え、あ、何でもないです!」

「ちょっと他の奴らの練習見て来るからサボらずちゃんとやれよ」

「はい!」


藤崎先輩が他の部員たちのところに行ったのと入れ替わりで今度は阿部部長が僕のところにやってきた。


「中々大変そうだな」

「はぁ でも実力不足は確かですから。基礎から頑張らないと」

「相変わらず謙虚だな・・・鶴間はもう少し自分に自信を持ってもも良いと思うぞ。ただ、豪徳寺に関しては鶴間の言うとおり今の力は豪徳寺の方が上だろうな。まぁ時間もあまりないし後は実戦練習だな。今日も後で俺と藤崎で相手するからな」

「はい。よろしくお願いします!」


その後、他の部員の指導を終えて戻ってきた藤崎先輩と阿部部長に試合形式で練習をつけてもらい今日の練習は終了となった。

かなり疲れたけど、他の部員も色々と課題を出されているようで皆疲れた顔をして部室へと戻っていった。


今回の練習試合は、前回と違って1年主体というわけではないけど、僕は川野辺高校側の希望(多分豪徳寺だろうけど)で豪徳寺と再戦。

秦野も有坂と再戦することになっていた。後は藤沢が町田とペアでダブルスに出るらしい。後は2年生と3年生が試合に出る感じだ。

2年生、3年生は人数も少ないし次の大会は1年からのレギュラーもあり得るから皆頑張ってる。もちろん僕も。


「お疲れ!」

「おぅまた明日な」


例の如く途中まで秦野や藤沢と雑談しながら帰宅すると、家の電気が珍しくついているのに気が付いた。

『今日は父さん達早いのか?それとも春姫?』


鍵を開けて家に入ると玄関には春姫と思われる靴と父さん達の靴。それに見慣れない靴が2足あった。

『誰か来てるのか?』

と思いつつリビングに入るとうちの両親と春姫の両親、そして少し照れたような感じで顔を赤くした春姫がテーブルに座っていた。

親父たちは少し酒も入ってる様だしテーブルには沢山の寿司が並べられている。

『今日は何かの記念日だったっけ?』


「お!主役のお帰りだ。遅かったな大和!」

「え、あ、ただいま。うん。部活が忙しくて。でも主役?」

「あぁ部活の事は春姫ちゃんに聞いたよ。川野辺高校に強敵が居るんだろ?頑張って春姫ちゃんにいいとこ見せないとな!」

「え、うん。頑張るよ。

 で・・・今日は何かのお祝い?それに主役って?

 父さん達の帰りも珍しく早いし、春姫のご両親も来てるし」


父さん達はともかく春姫の両親もかなり忙しいって聞いてるんだけど。


「ん?あぁ話を聞いてからだいぶ間が空いてしまったんだが、お前と春姫ちゃんが付き合うようになったって聞いてな。そのお祝いだ」

「え?僕と春姫の?」

「ああ。中々全員の都合があうところが無くて遅くなっちまったんだがな」

「そんな。父さん達が忙しいのは知ってるし僕たちに気を使わなくても・・・」


そうだよ。今更そんな急に・・・


「2人には寂しい思いもさせてきたし、あんまり親らしい事してやれてなかったからな。でも少しくらいはと思ったんだ。まぁたまには親っぽい事もさせてくれや」


と少し照れた風に笑う父さん。

そして優しいまなざしで僕と春姫を見ている母さん。


「ありがとう・・・」

「ほら、お祝いなんだから辛気臭くするなよ」


父さんも普段こんな事言わない人だし照れてるなこれは。

と今度は春姫のお父さんが僕に話しかけてきた。


「私からもいいかな?」

「はい」

「大和君。君の事は小さい頃から知ってるし立派で頼りになる男だとは思っている。ただ、春姫は僕達にとって大切な1人娘だ。泣かせるようなことだけはしないでくれよ」

「は はい」

「うん。いい返事だ。春姫の事を頼む」


・・・え~と交際宣言しただけで結婚宣言ではないよね。

僕は春姫をお嫁さんにもらうのか?

春姫はおじさんに何て説明したんだ?って春姫何故に目を逸らす・・・


でもまぁこういうことでお祝いをしてもらった事って初めてだし、春姫のところのおじさん達含めみんなで集まるのも随分久々な気がする。


次の日も学校があるということで、お祝いの宴はそれ程遅くならないうちに解散となったけど、みんなでお寿司や久々に食べる母さんの手料理を堪能した。

春姫も凄く楽しそうにしてたけど何だか僕も嬉しかったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る