第23話 告白
和泉さんと別れた僕は、春姫に思いを告げるべく春姫の家に向かっていた。
僕の家から春姫の家は歩いて5分程度。それ程遠くはない。
中学の頃は毎朝春姫を迎えに行ってから学校に行くのが日課になっていたので通い慣れた道ではあったけど今日は緊張のせいか凄く遠く感じた。
そして、栗平家に到着。
僕は逸る気持ちを抑えながらインターホンを押した。
[ピンポーン]
・・・返事がないな・・・まだ早いけど寝ちゃったのかな?
[ピンポーン]
『はい』
「春姫?僕だ大和だけどちょっと会えるかな」
『ふぇ?大和?こんな時間に何で?それに今日って・・・ちょっと待ってね』
[ガチャ]
少し待つと玄関の扉が開きパジャマに薄手のカーディガンを羽織った春姫が出てきた。
「大和・・・とりあえず上がる?」
「ああ」
僕は春姫の後をついてリビングに通された。
最近は勉強会とかで僕の家に春姫が来ることは多かったけど、僕が春姫の家に入るのは何だか久しぶりな気がする。小さい頃はよく遊びに来てたのにな。
「そ それで・・・こんな時間になんの用事なの?」
「春姫」
「な なによ・・・・真剣な顔して・・・」
「僕も・・・自分に正直になることに決めたんだ」
「え?」
「春姫。僕は君の事が好きだ。僕と付き合って欲しい」
「え?な 何?急に何の冗談よ?それに昨日はそれ以上の関係にはなれないって・・・」
確かに昨日は・・・でも
「今日さ和泉さんとデートしてきた。
春姫が僕を誘う様に和泉さんに言ったんだろ?」
「・・・・うん」
春姫は俯きながらも小さく返事をした。
「デートは・・・楽しかったんだけどさ。帰り際に和泉さんに言われたんだ。
"私じゃ駄目だった。やっぱり大和君は栗平さんの事が好きなんだ"って。
それから"栗平さんを受け入れてあげて"って」
「・・・・・!」
「僕も意識したことなかったんだけどさ、僕って春姫の話題が出ると凄く優しそうな顔してるらしいんだよ。
他の人に、それも自分の事を好きだって言ってくれた人に気付かされるって何だか凄くカッコ悪いけど・・・僕は・・・色々あったけどやっぱり春姫の事は嫌いになれなかったみたいだ。
いや。言い方が悪いね。僕はやっぱり春姫の事が好きなんだ」
春姫は相変わらず俯いたままだけど、少し肩を震わせている。
「・・・馬鹿だよ和泉さん。折角大和といい雰囲気になれるようにお膳立てしてあげたのに。
それに大和だって・・・あんないい子そんな居ないと思うよ」
「そうかも・・・な」
「・・・何でなのよ! 私、大和の事はあきらめて・・・これからは普通の友達として接しようと思ったのに・・・"好きだ"とか言われたら勘違いしちゃうじゃない・・・」
春姫の声は涙声だった。また春姫の事泣かせちゃったな・・・
「僕と付き合うのが嫌ならそれでもいい。たださ、最初に言った通り自分に正直になるって決めたんだ。和泉さんにも約束したしね」
「・・・い 嫌なわけないじゃない!私だって・・・大和の事・・・
でも・・・本当に私でいいの?色々酷いことしたのに・・・」
「春姫が良いんだ」
とカーディガンの裾で涙を拭いながら春姫は僕に告げた。
「し 仕方ないわね・・・・そこまで言うなら・・彼女になってあげるわよ!
あ ありがたく思いなさいよね!」
やっぱり春姫はこうでなくっちゃな。
「ありがとう春姫」
「な なによ!そんな嬉しそうな顔して・・・私まで恥ずかしくなるじゃない!」
さっきまで泣いてたのにな。
でも照れてる春姫もかわいいや。
僕は急に春姫が愛おしくなり、そっと抱き寄せそのままキスをした。
「ふぇ?や やまと?きゅうににゃに?」
「好きだよ春姫」
こうして僕と春姫ははれて恋人同士となった。
ちなみにこの日はそのまま帰宅したんだけど・・・
帰宅後に自分のした行動を思い出し・・・恥ずかしさで悶絶した・・・
何しちゃってるんよ僕は・・・勢いって怖い。
春姫も目が冴えてしまって眠れなかったらしく翌朝いろいろ怒られた・・・
やっぱり眠れなかったのは僕のせいなんだろうね・・・
でも、僕の事を怒りながらも春姫はちょっと幸せそうな顔をしているようにも見えた。気のせいかもしれないけど、やっぱり好きな子が笑顔で居てくれると僕も嬉しいな。
「何ニヤニヤしてるのよ。昨日は急にキ キスするとか・・・ああいうのはねムードとかそういうのも大切なんだからね!ちょ ちょっと聞いてるの?」
そして、照れながらも僕にお弁当を渡してくれる春姫が今日から恋人だと思うと僕も幸せな気分になれた。
「春姫」
「ん?何 大和」
「好きだよ」
「な なによ朝っぱらから!そ そういうのは2人っきりの時に言いなさいよ」
「はいはい」
2人きりの時ならいいんだ・・・とは流石に突っ込まなかったけどね。
「これからもよろしくな春姫」
「え?う うん。こちらこそ」
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