第22話 逢瀬 -和泉たま②-
服を買った後は、レストランフロアに移動してランチを食べた。
昼の時間帯だったので結構混雑していたけど、僕のお気に入りのイタリアンに入ることが出来た。
まぁお気に入りと言って前に1回行ったことがあるだけなんだけどね。
「美味しいですね。ここのパスタ。来たことあるお店なんですか?」
「中学の頃だけど、春姫や有坂と練習試合の帰りにね。あいつら前は仲が悪かったから店内で喧嘩しだしちゃって止めるの大変だったよ」
そうなんだよな。僕が有坂とパスタを食べに行こうとしてたら"私も行く!"って春姫が割り込んできて。それでいて有坂が春姫の僕に対する振舞いを注意したら言い合いの喧嘩になって・・・パスタは美味しかったけど疲れたよほんと・・・
「へぇ~それは災難でしたね」
「まぁあいつらは今も仲が良いかは微妙なところだけど、今回は有坂のおかげで春姫を助けることも出来たし。何だかんだ有坂との付き合いも長いからね」
「・・・・いいですね。そういう友達って」
「はは。そうだね有坂は大切な友達だよ。でも和泉さんだって友達だろ?」
「え? はい・・・友達・・・ですよね」
食事の後、和泉さんが僕の服も選びたいと言ったので、もう一度衣料品のエリアに戻り和泉さんの見立てで僕も洋服を買った。
シンプルなジーンズとポロシャツだったけど人に選んでもらったと思うとちょっと嬉しい。
それにしても新しい服を買ったのはいつ振りだろう。
あんまり外出しないから私服ってそもそもあんまり持ってないんだよね。
そして、和泉さんのリクエストでデートの定番プリクラも撮った。
和泉さんも「宝物にします!」と凄く嬉しそうにしていた。
随分前に春姫とも撮ったけど、こういうところ自体あんまり来ないからちょっと緊張したな。
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夕方。
あまり遅い時間になるのもということで、僕たちは川野辺に戻るために駅に向かって歩いていた。
「ありがとう大和君。今日は凄く楽しかった」
「楽しんでくれたみたいで良かったよ」
と和泉さんは急に立ち止まり僕の方を向いて問いかけてきた。
「ねぇ大和君・・・大和君はやっぱり栗平さんの事が好きなの?」
「どうしたの急に? それに僕は春姫の事は・・・・」
「嘘!大和君は栗平さんの事が好き。見てればわかるよ!
それに・・・認めてくれないと私も諦められないよ・・・」
「和泉さん・・・」
「私じゃ・・・やっぱり駄目だったね」
「え?」
「私ね。中学で一緒に図書委員やった頃から大和君の事好きだったんだよ。
私口下手で友達とかも少なかったけど大和君はそんな私にも話しかけてくれて優しくしてくれた。それだけでって思うかもしれないけど私は嬉しかったの。
でもね告白とかは出来なかった。勇気がなかったのもあるけど、大和君の隣にはいつも栗平さんがいたし凄くお似合いだったから・・・」
「・・・・・」
「栗平さんも大和君も意識してなかったかもしれないけどさ、2人共お互いを見てる時の目が凄く優しそうで両想いなのが凄く伝わってきた。だから私じゃ駄目だって思って諦めたの。
でもね栗平さんの大和君に対する態度が段々変わってきて考えが変わったの。だってあの頃の大和君はいつも辛そうだった。私ならもっと優しくしてあげられるのにと思って・・・・・最も勇気が無くて中学生の時は結局告白できなかったけどね」
「和泉さん・・・」
「でね。違う高校になって、もう会えないのかなって思ってたらテニス部の試合で大和君を見かけて・・・思わず声を掛けちゃったの。
あの日って土曜日だったし普段は私も学校には行かないんだけど、たまたま図書委員の仕事があって登校してたの。もう運命なのかなって無我夢中で♪」
「そうだったんだ・・・・」
「だから連絡先の交換もして、もしかしたらって思ったんだけど・・・あの後で栗平さんに会っちゃったの」
「春姫に?」
「うん。それでね色々と話してて分かったの。やっぱり栗平さんは大和君の事が大好きなんだって。不器用なだけで自分が取っていた行動も凄く反省してたし素直になるって約束もしてくれた」
そうか・・・それで春姫は急に素直になったんだ。
「でね。その時は私も"負けないからね"って栗平さんにライバル宣言までしたんだけど・・・今日デートしてもらってわかったの。やっぱり大和君も栗平さんの事が好きなんだなって」
「え?なんで」
「私だってそこまで鈍感じゃないよ。買い物したりゲームしたり一緒に楽しんでくれてたけど、栗平さんの話しをしているときの大和君って凄く優しそうな顔してるんだよ。私にだって・・・・わかるよ」
「ごめん・・・・」
「謝らなくていいよ。その代わり・・・栗平さんを受け入れてあげて」
「春姫を?」
「栗平さん・・・昨日泣いてたよ。
夜に電話があったんです。大和君とデート出来て凄く楽しかったけど"フラれちゃった"って。やっぱり自分はもう大和君の恋人にはなれないんだって言ってたの。それで・・・私に大和君をお願いねって」
春姫・・・・全然大丈夫じゃなかったんじゃないか・・・
僕が・・・・春姫を泣かせたんだよな。
「栗平さんに同情しているわけじゃないですけど、今日大和君と一緒にいてやっぱり2人はお似合いだなって思えたんです。だから・・・」
「和泉さん・・・・ありがとう。わかったよ。僕も意地を張らずに正直になるよ」
そうだよな。やっぱり僕は・・・
「僕はやっぱり春姫の事が好きだ」
「うん。それでいいんだよ・・・・私達・・友達なんでしょ?」
ありがとう・・・和泉さん
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