第21話 逢瀬 -和泉たま①-
カフェを出た後、僕は春姫を家まで送った。
その別れ際、春姫は僕に"ありがとう"と言った。
ただ、その顔は少し寂しそうだった・・・・
僕は春姫の想いに応えられなかった。
"嫌われてるわけじゃないなら私は大丈夫"とは言ってたけど・・・
春姫・・・・・僕は君の事・・・・・
[ピン]
ん?和泉さんからメール?
[今って大丈夫ですか?]
[大丈夫だよ]
[大和君 聞きましたよ!今日栗平さんとカフェでデートしたそうですね]
[え?なんでカフェに行ったの知ってるの? でもデートってわけじゃ]
[栗平さんが教えてくれたんです。"私ばかり悪いから"って。そういうわけで、大和君!私ともデートして下さい]
[ええ!!なんでそうなるの]
[だって栗平さんだけズルいじゃないですか!それとも私とは嫌なんですか]
[そういうわけじゃ・・・]
[明日・・・大和君時間あります?]
[特にこれといった予定はないけど・・・]
[じゃあ決まりですね。待ち合わせは川野辺駅前に10:00で!楽しみにしてますね♪]
[ってちょっと]
なんなんだ?
何故か春姫とだけデートするのはズルいらしく和泉さんともデートすることになってしまった。それに春姫に僕との事を聞いたって・・・どういう事なのこれ。
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そして翌日の日曜日
僕は和泉さんと約束した川野辺駅前に居た。
指定の合った時間の5分前。
待ち合わせの時間が近づけば近づくほど段々緊張してきた。
だって、和泉さんは今日の事を"デート"って言っていた。
考えてみると春姫以外の女の子と2人きりで出かけたことなんかない。
考えれば考えるほど緊張してしまう。
そして約束の10:00。和泉さんは時間ピッタリにやってきた。
清楚な感じのワンピースに身を包んだ和泉さんは、少し緊張した面持ちながらもとても可愛らしく見えた。
「ごめんなさい 待たせちゃいましたか?」
「あ、大丈夫だよ。僕もさっき来たばかりだから」
「よかったです。それでは今日はお願いします」
「何処か行くところとか決まってるの?」
「はい!隣町のショッピングモールに行こうかと思うので電車乗っちゃましょ」
「わかった」
ショッピングモールに行くのか・・・ってまさかまたパフェを食べにとか・・・
美味しかったけどもう当分パフェは遠慮したいところなんだけど。
「あ、大丈夫ですよ。今日はパフェとか食べないので」
「え?そうなの?」
「ふふ 心配しちゃいまいた?栗平さんからも昨日はパフェを食べ過ぎたから他のにしてあげてねって言われてますので」
「そ そうなんだ」
「はい。今日は一緒にお買い物にしたいなぁと思ってます」
「買い物?」
「はい。お洋服買いたいので大和君に選んでもらえたらなと・・・」
「いいけど。女性の服とかあんまりよくわからないよ?」
「いいんです。大和君が選んでくれた服なら何でも私は・・・」
「それでいいなら・・・」(でも本当にそういうのわからないんだけど・・・)
ショッピングモールに着いた僕たちは、女子高生に人気のブランド店が並ぶ売り場に移動した。と言っても高級ブランドじゃなくてファストファッション系のお店だけどね。
まだ早い時間だけど、休日のショッピングモールは何処も人で賑わっていた。
そして、今いるエリアは正直なところ僕が居ていいのか悩むくらい女性の比率が圧倒的に多い。
昨日のカフェとは別の意味で居ずらいぞここは・・・
などと思い辺りを若干挙動不審な動きをしていると、和泉さんが良さそうな服を見つけたのか某大手ファストファッションのお店に入っていった。
「大和君。この服ってどうかな?」
「そうだな~ うん。似合うと思うよ。
ただ、和泉さんならこっちの色の方が似合うんじゃないかな?」
「大和君ってこういう色が好きなんですね。後で試着してみます♪
あっ こっちの服もいいですね」
・・・・
『疲れた・・・』
色々と購入する服の候補を選び、和泉さんは今試着室だ。
確か前に春姫の買い物に付き合わされた時も買う服が中々決まらず、散々選んで結局買わないとかあったよな・・・
やっぱり女性の買い物は春姫に限らず時間かかるんだ・・・・
デートと言うことで気を張ってることもあるんだろうけど結構疲れたよ。
「あ あの大和君。着てみたんだけど似合う・・・かな?」
そこには最初に僕が選んだギンガムチェックの夏っぽいワンピースを着た和泉さんが居た。
元々来ていたワンピースが似合っていたから同じようなタイプを選んだだけだったけど僕が思った以上に似合っている。
「うん。凄く似合ってるし可愛いよ。思った以上かも」
僕は素直に感想を伝えた。
「ほ ほんとに!うん。それじゃこれにする!」
「え?他にも選んだんじゃ」
「うん。他にも良さそうな服は選んだんだけど・・・今日は大和君に選んでもらいたかったから」
と僕に微笑む和泉さん。
やっぱり可愛いよな和泉さんって。
「じゃあ会計してきちゃいますね!」
小走りにレジに向かう背中を見つつ僕はあらためて思った。
和泉さんは何で僕なんかに好意を・・・
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