僕と彼女の関係性
第18話 真摯
期末テストも近い7月の午後。
いつもの様に部活を終え帰宅すると家には春姫と和泉さんが来ていた。
春姫は家の合鍵を持っているので僕の帰りが遅いときも普通に家に入れてしまう。防犯上どうなんだって話はあるかもしれないけど、まぁそこは親同士含め信頼関係って事なんだろね。
「おかえり大和」
「おかえりなさい大和君」
「ただいま」
「夕飯もうじきできるから、もう少し待ってね」
「ありがとう。着替えてきちゃうよ」
かわいい女の子が2人で僕のために夕飯を作ってくれている。
しかも家に親は居ない。
何処のラノベの話だよと思っちゃうけど現実の話だ。
春姫は週3回僕に勉強を教えてもらいに来てそのお礼として夕飯を作ってくれているんだけど、最近は和泉さんも勉強会に来ることが増えたんだよね。
色々とあった春姫はともかく、和泉さんは僕に教えても貰わなくても他に勉強ができる人はたくさんいると思うんだけど・・・
そんな和泉さんも最近は僕の事を名前で呼ぶようになった。
何だか春姫だけ僕を名前で呼ぶのはズルいって言われてしまい。
まぁ別に僕はなんて呼ばれても構わないんだけど春姫は小さい頃から名前呼びだったしあんまりそういうこと考えたことなかったんだよな。
和泉さんも僕に好意を持ってくれてるのは理解しているつもりだし、無下に扱いたくは無いんだけど、どうしていいのかがよくわからない。
そして春姫。
"以前の僕"は春姫の事が好きだった。
春姫の為なら何でも出来たと思う。
でも、僕は中学時代の春姫の横暴な態度に失望し距離を置くことにした。
嫌いになるつもりだったんだ・・・だけど完全には嫌いにはなれなかった。
だけど、この数か月で春姫は昔の様に素直になった。
ちゃんと今までの事も謝罪してくれたし僕に好意をもって接してくれている。
今は幼馴染の友人としては接しているけどそれ以上の関係になれるのか?
贅沢な悩みなのかもしれないけど僕は迷っている。
僕が好きだった春姫の好意を受けるべきか。
僕を好きになってくれた和泉さんの好意を受けるべきか。
そもそも僕みたいな男が春姫や和泉さんの好意を受けても良いのか・・・
どの選択をしても誰かが傷つく・・・
などと真面目に考えていると1階のキッチンから春姫の声が聞こえた。
「やまと~ まだ着替えてるの~ 準備できたよ~」
「わかった~今行くよ~」
あんまり考えても仕方ないのかもしれないけど・・・2人にも申し訳ないしちゃんと答えは出さなきゃいけないんだよな。
そんなことを考えながらダイニングに行くと[LOVE]とケチャップで書かれたオムライスが2つ。手伝ってたんじゃなくて別々に作ってたの?
「大和は私のオムライス食べてくれるよね!
いつも私のお料理美味しいって言ってくれるし」
と春姫。まぁ確かにな春姫の料理は凄く美味しい。
「そ そんなことないよね大和君は私のを食べてくれるよね?
もしかしたら味はちょっと劣るかもしれないけど愛情は負けてないから!」
と和泉さん。へ?あ 愛情?断りずらいだろそれ
い いま決めないと駄目なのか?
2人とも何だか顔が怖いんだけど・・・
こういうの苦手です僕・・・・
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[はは それで2人分のオムライスを食べたのかよ。食いすぎだろ]
[笑い事じゃないよ。2人とも真剣そうな顔してたし今の僕にはどちらかなんて選べないよ]
夜、春姫や和泉さんが帰った後、僕は有坂とラインで話をしていた。
春姫や和泉さんの事を知ってる友人となるとやっぱり有坂しかいないんだよな。
[まぁ気持ちもわからなくはないけど、大和は栗平の事が好きだったんだろ?]
[確かにそうだけど、春姫には一度愛想付かしてるし、今も一緒に居ると楽しいけど、今のままでずっといてくれるのかも不安で・・・]
[まぁ確かにそうだけど俺は大丈夫だと思うけどな。栗平も色々と拗らせてたけど最近素直になったぜ]
[だといいんだけど・・・]
[ちなみにな、性格が良くなったってこともあって栗平って最近男子にも人気あるんだぜ]
[春姫が?](何だろう。ちょっともやもやするな)
[ああ。断ってるみたいだけど告白とかも最近多いみたいでさ]
[そうか・・・でも春姫は普通にしてれば可愛いし、もしかしたら僕なんかよりお似合いの彼氏ができるんじゃ]
そうだよ。冷静になってみれば僕は幼馴染だけど春姫に釣り合ってるかって言われたら・・・
[お前それ本気で言ってるのか?少なくとも栗平はお前の事が好きなんだぜ?お似合いとかつり合いとか周りがどうこう言うことじゃないと思うぜ俺は。そのことはお前もよくわかってるはずだろ?]
[そうだな・・・悪い]
春姫の気持ちを考えるなら釣り合いとか気にすることはないんだよな。
[間違っても栗平の前ではそういうこと言うなよ。それに和泉にしても同じだ。あいつもお前の事好きだってちゃんと気持ちを伝えたんだから"自分なんか"じゃなくて"自分がどうしたい"のかちゃんと言えよ]
[ああ。そうだな 心配ありがとな]
こういう事ってやっぱり1人で悩んでても駄目だな。
ちゃんと答えは出さないと。
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