第17話 思案
高校生活も早いもので3か月が経過した。
念願のコンピュータ部に入りプログラムの勉強をする傍ら、何故かテニス部も兼部することになり毎日忙しいながらも充実した日々を送っている。
そして・・・
「やまとぉ~ ご飯できたよぉ~」
「ありがとう春姫」
「えへへ」
あれから春姫は僕に勉強を教えてもらうという名目で週の内3回は僕の家に来るようになった。そして、勉強を教える代わりに春姫が食事を作ってくれるので一緒に食べている。
春姫の作る食事はとても美味しく相変わらず両親の帰りが遅い僕にとってはうれしい提案だった。
中学卒業の時は春姫の横暴な態度に嫌気がさして絶縁宣言し"僕に関わりを持つな"って言い放ったはずなんだけど、ここ最近の春姫は時々ツンデレなところはあるものの昔の様に素直な女の子になっていた。
一度絶縁宣言をしてしまっただけに僕としてはどう接すればいいのか正直悩ましいところもあるんだけど春姫は以前は気にしていたものの最近はあんまり意識せずに接してくれている。
それに春姫は・・・僕に好意を持って接してくれているよな。
僕も恋愛関係は鈍感な方だとは思うけど流石にわかる。
春姫の事は嫌いになったはずだったんだけどな・・・・
夕飯を食べた後、お互いの学校の話をした。
昔は一緒に行動することが多かったけど高校に入ってからは逆にほとんどが別行動になった。そのせいもあってか自然とお互いの事を話す時間も増えていた。
「そういえば、その後学校の方は大丈夫?」
「うん。佐和にもちゃんと謝って仲直りしたよ。
それに今は千歳や佐和がいるグループで話したりしてるんだ。川野中や川南中の子なんかもいて楽しいよ。有坂と若菜ちゃんも気を使って色々と話しかけてくれるしね」
「そか。僕も心配だったからよかったよ」
「ありがとう。私も昔みたいに変に気負わないようになったから気持ちも楽になった気がするし学校に行くのも楽しくなってきた。
だけど・・・大和が同じ学校に居ないのはやっぱり寂しいかな」
と僕を見つめてくる春姫。
でも・・・・
「そ それは・・・・」
「ふふ 冗談だよ。大和は夢のために倉北に入ったんでしょ。前に言ってたじゃない。だったら私も邪魔は出来ないよ」
「ありがとう」
前は自分の事だけを考えて僕に考えを押し付けてきていたけど、春姫も僕の事をちゃんと考えてくれるようになったんだな。
「でも・・・・寂しいのは本当だけどね」
「え?」
寂しい?春姫が?聞き間違いじゃないよな?
春姫を見ると自分で言って恥ずかしくなったのか耳まで赤くして俯いてる。
・・・そういう姿を見せられると僕の方も恥ずかしくなるよ。
しばし、2人して俯いたまま沈黙が続いたけど春姫が再び話しかけてきた。
「そ そういえば、渋川先輩のテニスチームって凄いのよ!」
「あ、そうか春姫誘われて参加することになったんだよな」
そう。学校のテニス部の揉め事のケジメとして春姫はテニス部を辞めた。
その際にプライベートでテニスチームを作っていた渋川さんが春姫を誘ってくれたんだ。
何というか父親がテニスクラブのオーナーってのも凄いけど自分でチームを持ってるってのも中々だよな。
「うん。基本土日か平日の夜に練習があるんだけどレベルが凄く高いの!
先週初めて練習に参加させてもらったんだけど中学生から社会人までいろんな人が参加してて、渋川先輩や結城先輩以外の人も凄く上手なの。
それ見てたら私も頑張らなくっちゃって」
「そうか。新しい目標が出来たみたいだね」
よかった。春姫ってテニス頑張ってたからな。
大会とかにも出てるとか渋川さん言ってたしこれで春姫も・・・
「うん♪ そ それでね・・・大和に1つお願いがあるの」
「ん?なに」
春姫からのお願いっていうのも久しぶりだよな。
無茶な内容じゃなければいいけど・・・
「・・・大和もテニスチームに入ってくれないかな」
「え?僕が」
「この間、渋川先輩が大和も良かったらって声掛けてくれたの。
わ 私も大和が一緒だと・・・・嬉しいんだけど駄目かな」
「誘いは嬉しいけど僕は高校のテニス部があるし」
「あ、えっと その、土日とかの練習だけでも大丈夫だよ。そ それに結城先輩とかテニス上手いから練習してもらえると思うし」
春姫が何だか必至だな。
そんなに僕と一緒に居たいのかな。
でも予想外のお願いだったけど・・・・
「そうか。確かに結城さんの事は有坂からも聞いてるよ。
練習させてもらえるなら出来る範囲だけど参加させてもらおうかな」
「え!いいの!本当に!」
「あぁいいよ」
「やった!また一緒にテニスできるんだね!」
満面の笑顔で僕を見つめる春姫。
こんなに喜んでくれるんだな。
今の春姫は僕が好きだった頃の春姫なんだな。
僕は・・・無理に春姫の事を嫌いにならなくてもいいのかもしれないな。
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