第13話 相談
翌朝。
いつもの様に玄関を出ると門柱に寄りかかりながら僕を待つ春姫がいた。
「お おはよう大和」
「おはよう。今日はどうしたの?」
小学校、中学校と僕と春姫はいつも一緒に学校に通っていた。
でも高校が別々になり、あの日僕が春姫を拒絶してからは朝顔を合わせることも無くなっていた。
「あ あのさ私・・・大和にお弁当作ってきたんだ。良かったら食べてくれないかな?」
「え!僕に?」
「うん。って大和に作ってきたって言ってるでしょ」
「ああ、聞いてたけど春姫にお弁当を作ってもらうなんて初めてだからさ」
「ちょ ちょっと食材が余ったから作っただけよ。で でも大和が食べたいって言うなら明日からも作ってあげなくもないんだからね」
自分で言いながら照れてるし。変だろ食材が余ったからって僕にお弁当作るの。それに明日からもって・・・相変わらず素直じゃないな。
でも、以前と違ってそんなに悪い気はしないかな。
「作ってくれるっていうなら嬉しいかな。毎日学食だったし春姫の料理美味しいからね」
「本当!じゃ じゃあ明日から毎朝持ってくるからね!」
「ああ でも忙しい時とかは無理しなくてもいいんだからね」
「わ わかってるわよ」
「ありがとう春姫」
「うん。じゃ じゃあ先学校行くわね。一緒に行くのは嫌なんだよね?」
そっか前に一緒に学校行くのは僕が断ったんだったな・・・
「その・・・・駅前位までだけど一緒に行かないか?」
「え!いいの?」
「ああこの前は・・ちょっと言い過ぎたよ」
「うん!」
嬉しそうに笑顔で僕を見つめてくる春姫。
何だろう。凄く懐かしい気持ちになるな。
ちなみに春姫のお弁当はメチャクチャ美味しかった。
・・・クラスメイトには色々と冷やかされたけどね。
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そして、その日の放課後。
「藤崎先輩ちょっといいですか?」
「ん?何処かわからないところでもあるのか?」
今日はコンピュータ部の活動日。
この学園では選択科目の1つとしてプログラミングの授業が1年から受講出来る。
僕ももちろん受講しているけど、その授業を行うPCルームがコンピュータ部の部室となっている。
PCルームには、3Dの画像処理や仮想化サーバの提供を行う高性能なサーバ数台と生徒が授業で使うノートパソコンとモニタ数十台が用意されていて、部員はそれらを自由に使う事が出来るんだ。
家のパソコンもそれなりにいいものを買ったけど、学校の環境は色々な言語のツールも入ってるし難しいところを質問したり相談できる先輩もいるしで僕としては最高の環境だったりもする。
ちなみに僕はJAVAとCをメインに勉強していて、ちょっと便利そうなツールやまだまだ内容はしょぼいけどゲームのプログラムを書いたりしている。
ってコンピュータ部の事を話ししてしまったけど藤崎先輩に話したかったのはプログラミングの話しではなくてテニス部の事だ。
「テニスの方の話しなんですが、いいですか?」
「まぁ本当は駄目なんだけど、悩んでるからこのタイミングで相談してきたんだろ?構わないぞ」
「ありがとうございます。実は・・・・」
僕は有坂から聞いた豪徳寺の事を先輩に話し、どうすればいいのかを相談した。
練習して上手くなればいいのは当然の話しかもしれないけど、今時点で相手の方が力は上だし、有坂の話しじゃ豪徳寺も真面目に練習するようになったって話だ。となると同じ時間練習してたんじゃ追いつけないし当然勝てない。
正直自分が負けず嫌いだとはあんまり思ったこと無かったけど、豪徳寺には負けたくないという思いが強いんだよね。
「聞いてる限り、中学時代に鶴間より実力があった有坂って子が豪徳寺には歯が立たないんだろ?相性とかはあるかもしれんが、そんな豪徳寺に勝ちたいって言うんなら、月並みだが相手以上に練習するしかない。とは思うけど相手も真面目に練習してるとなると確かに厳しいな・・・」
「・・・やっぱりそうですよね」
そうだよな。マンガみたいに必ずポイントが取れる必殺技みたいなのあるわけないし地道にやるしかないよな。
「ただ、練習も色々あるからな同じ練習時間でも内容が濃ければそれだけレベルもあがると思うぞ」
「練習内容ですか?」
「あぁそうだ。次の親睦戦は来月の頭だよな。もう1か月も無いけど、上級者と実戦形式で練習すれば上達も早いと思うぞ」
「上級者ですか?」
「そうだ。阿部にも後で話ししておくけど俺や阿部はこれでもこの地区じゃそれなりに名前は売れてるんだぞ。お前がやる気なら練習付き合ってやるぜ」
「ほんとうですか!」
「ああ。だけど俺も阿部も手は抜かないからきついぞぉ~」
「ははは。。。お手柔らかに」
「ま、何にしてもテニスの件は明日あらためてだな。今日はコンピュータ部なんだから、ちゃんと課題のプログラム作れよ」
「はい。相談に乗ってくれてありがとうございます」
やっぱり藤崎先輩は頼りになるな。
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